決戦前 漂淵「北落野原に?将軍へ会いに行くのか」
「うん」
淵武道場の隣、六羨茶屋で漂泊者と淵武は茶を嗜みながら雑談をしていた。
漂泊者の顔はいつもの柔和な表情をしていたが、淵武と目が合うとすぐに視線をそらす。
(言いたいことがあるなら言えばいいんだが、若いからな)
「この前の三清茶、美味しかったよ。外でも飲みたいんだけど、茶葉まだある?」
「ああ・・・それなら持ち歩き用の袋に入れたものががあるから、持っていきなさい」
「ありがとう、淵武」
茶をすすりながら、淵武はぽつりと呟いた。
「いいか、命あってこその戦いだ。・・・無事に帰ってくるんだぞ」
ぽん、と手を頭に載せられた漂泊者は顔を少し赤くして「子供扱いしなくても、わかってる」とつぶやく。
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