空閑汐♂デイリー【Memories】25「お疲れさん」
「ざっす、ようやっと乗れてこっちも役得すわ」
国際航空宇宙学院日本校の第一格納庫に併設された教官室で、吉嗣から投げられる言葉に紺色のフライトスーツのジッパーを下ろしながら汐見は小さく笑う。その表情はどこか晴れ晴れとしていた。
「タロンをダシにでもしないと来ないだろ、お前」
「バレバレすか」
肩を竦めて笑った汐見に、吉嗣は大きなため息を一つ零していた。ため息ついでにポケットから煙草を取り出したのを目敏く見つけた汐見は言葉を重ねる。
「俺にも一本下さいよ」
「汐見お前も遂にヤニ中毒者の仲間入りか」
「あからさまに嬉しそうにしますね、二十八にもなればそりゃ色々ありますよ。酒も飲めるし煙草も覚えちまう」
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