【保鳴】シアター8にて「はるのあらし」無期限上映中保科の隣で歯を食いしばりながら歩いていた鳴海が、冬へ逆戻りした街に唾を吐くように悪態をついた。
「こんなクソ寒い日に、どうしてこのボク様がノコノコと外を歩かんとならんのだ」
鳴海は舌打ちをつけ加えながら、不満げな表情をさらに深めた。
久々の外デートだというのに、恋人の機嫌は気圧に振り回されている空模様と同じらしい。
まったく、マイペースで世話が焼ける人だ。
「駐車場からそない距離ないやろ。鳴海さんの用事なんやし、少しの間くらい辛抱しぃ」
「うるさい。オカッパの分際でボクに指図するな」
「おやおや〜? ええんかなぁ、貴重な戦力にそない強気な態度とったりして」
上から目線のセリフに煽り口調で応答すれば、正面を見ていた鳴海の頬がヒクついた。
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