龍馬さんが以蔵さんと付き合ってると思ってる話2 以蔵と付き合い始めて、そろそろ半年が過ぎた。
今日は仕事が早くに終わって久々の定時退勤、マンションにも早くに戻れた。
一人で晩酌しながら、
「…部屋ってこんなに広かったっけ?」
今日は一人でのんびりとしようかなとコンビニで買った冷めた弁当を温め冷蔵庫には常備してある冷えたビール、それかキッチンの横にある日本酒を出すのだが、確かに一人で住むにしても3LDKは広い。
以蔵を再会するまで広いとは思っていなかった部屋が、なんだかとてつもなく広く感じた。
冷めた弁当も温めたはずなのに冷たく感じ味気なく感じるし冷えたビールも美味く感じない。
「以蔵さんに会いたいな」
決めた日は明後日なのだが、無性に寂しくなった、どうして自分はこんな広い部屋に一人でいられたのかわからないほどだ。
時間も早いし、せめて声くらい…っと静かなスマホをついついと触れコールする。
一回目のコール、それは虚しく音が響くだけ無機質な音声が耳に届く伝言も残さずきって、二回目を鳴らすが同じ…、それでも懲りずに三度目を鳴らせば、
『どういた?』
三度目で聞きたかった声が耳に入ってくる。
「あ、ごめんね、忙しかった?」
しつこくかけたのでしどろもどろに言えば、
『忙しいっちゃ、忙しい、どういた?』
三度もかけられれば心配されようことはわかっている。
だけども声を聞いて安心した、とたんに広くて寂しかった部屋が温かくなった気がする。
「あの…ね、今から会えない、かな…、今日、仕事が早く終わったんだ」
老若男女問わずてきめんに効くという、とびきりの甘えたな声で頼めば、
『明日なら、えい』
以蔵にはどうやら効果がないようだ。
「あ、そ、うだよね、いきなりだもんね、以蔵さんにも用事があるよね」
『おん、すまんの、明日ならえいよ』
「わかった、あ、でも、少しだけでいいから話してくれないかな?」
せめてこのビール一本飲み終わるまでと思う。
『ふは!!おまん、甘えたは、まだ治らんのか』
「あ、や……はい…」
取り繕おうとしたが、どうせバレているのだ、もういいと素直に返事した。
『わしより二つ年が上の龍馬兄やんのくせに、一人で晩酌もできん甘えたじゃの、弟の声を聞かんと晩酌一つ終わらせられんかえ』
「以蔵さんと僕は確かに二つの年の差があるけど、兄弟でセックスはしないよ」
唇を尖らせ拗ねた口調で言い返す、
『ほうなが?けんど、すまんな、こっちは今取り込み中やき切るぞ』
「え?そうなの、ごめんね、じゃあ、明日」
『おん、明日』
耳からスマホを離しことりとテーブルに置く。
以蔵の声を聞いて温かくなったと思った部屋が、また寒くなった…寂しくなった、ビールも全然美味しくないとおいてしまった。
『…ぁ…ん、おまんも甘えたじゃの』
声が…した。
誰かと話をしている声だ、今、きったスマホにゆっくりと視線を向けて生唾を飲み込む。
よく知っている艶めかしい声、寂しいと思ってきったと思ったはずなのに、どうやらきれていなかったようで電話先の以蔵もきったと思っているのか丸聞こえだ。
恐る恐るスマホのボイスをスピーカーにするとリアルに聞こえてくる。
以蔵ともう一人、見知らぬ…男の声がする、自分といるのに龍馬と楽しそうに話をしてと、だからきっただろうと笑いながら艶やかな声を混じらせながら会話をしている。
「な、に、これ…」
『ぁ、…ん、今日は、おまんとが約束やし、気分的もおまん、じゃ…は…ぁあ!!』
良いところを突かれたのか一際甲高い声が響く、いったい何を言っているのか…いったいなにをしているのか…いったい…いったい…このスマホの向こう側の以蔵は誰と何を言って何をしているのか…考えたくない知りたくない、これは悪い夢だと思いたい、そうだきっと疲れているのだ、今日は熱い湯をはり浴槽に入ろう、明日は休日だ、二連休だ、だから好きなだけ寝過ごしてもいいのだ。
そう思いながらもスマホをスピーカーにしたまま録音する、最初から最後まで…終わるまで、それを動かず静かに声を殺し聞いていた。
最後のピロートークまで、悪い奴だなと以蔵は言われたが、別に『一人と決めて付き合うとるわけやながきにな』その言葉は最大の爆弾だった。
龍馬は以蔵に告白した、以蔵も簡潔だが好きだと返してくれたのに?決めてない?付き合ってない?なに?この悪夢の結末の言葉がこれ?
浮気以前の話だ、浮かれていた自分がバカみたい…だけども、これは悪い夢だ、悪夢だ、そうだ、きっと自分はベットに言ってシーツに包まって眠っているんだ、そうだそうに違いない。
何も考えたくないと思いながらふらふらとしながらシャワールームにしって冷水を頭からかける。
悪夢だ、だから、早く覚めてほしい、そう思いながら長い時間、冷たい冷水を浴びて濡れた服をそのままに出てくると、もうスマホの向こうは寝息しか聞こえなかった。