龍馬さんが以蔵さんと付き合ってると思ってる話5 相変わらず以蔵は浮気を続けている、いや、以蔵本人は浮気と思っていないのだ、突っ込みたい時は女、突っ込まれたい時は男と決めているだけで。
付き合い始めて最初に聞いたことがあった、男とそういう仲になっても大丈夫か気持ち悪くないかと、そう聞けば、なんちゃあないとさらっと返された。
そこでも深く聞かずに男女の役割を決めてしまったのが敗因でもある、どう考えても浮かれすぎていた…だけども半年も気付かなった自分が恨めしいやら情けないなら。
色々とあるけども、次の予定は決めている、ならその間を調べる。
以蔵のスマホに追跡アプリと盗聴アプリを仕込んだから全てが龍馬に筒抜けになる。もちろん浮気の証拠以外は聞く気もないしプライベートにまで踏み込もうとは思わない。
………勝手に仕込んだ時点で犯罪になると思うが、それは気にしないことにする。
まあ、ちょっと、一人でいる時、誰とも会ってない時、どうするか知りたい気持ちと欲求は確かに強いし…負けない…と思うが、
『ん…ぁ…ぁあ…』
なんでこのタイミングで一人遊びに耽ってるのか…これは聞いてはいけない、プライベートだから聞いたらいけないと思いつつ、
「ちょっとだけ…そうちょっとだけだから」
以蔵に久しぶりに会うまで龍馬だってそれなりに女性と付き合っていたしそれなりのことはしていた、だけども歴代彼女が一人の時になにをしようとも気にならなかったし、ここまでしようとも思わなかった。
派手に振られたこともあるし浮気だって何度もされた、それでも『わかったよ、君がそれで幸せになれるなら』とあっさりと別れた。
それでか、その後、散々とした噂を流されたが、すぐにその噂は消えていくの繰り返しだ。
彼女達のことを思えばこそ別れたのだが、何が気に入らなかったのかさっぱりわからずだった…まさか、初めて彼女達の気持ちが少しわかる気がした。
今までできた彼女達が繰り返し龍馬に言った言葉がある『別れても気にしないんだね』『もっと固執してほしかった』『優しさだけじゃ物足りない時もあるんだよ』何度も言われた。
意味が全くわからなかったが…初めてわかった気がした彼女達の気持ち、龍馬は以蔵に自分に固執してほしいし執着してほしい、きっと今の以蔵は龍馬から別れを切り出したらあっさりと別れるだろうし、他のセフレがいるからとあっさりとそっちに行ってしまうだろう。
以蔵の湿った艶のある声を聞きながら、それは絶対に許せないと思う。
「以蔵さんは、わしだけのもんじゃ、他の誰にも渡しゃあせんぜよ」
ならばどうすればいいと考えたのが、今、以蔵が付き合ってる相手の主に男のやり方を覚えることだ。
どんな気分の時の以蔵を抱くのかそれを知り覚える激しい嫉妬心をぐっと押さえ最初から最後まで全てを記憶する。
そして自分に溺れさせるしかない、だけども女をと言われれば、そっちはさすがに無理だ、自分と以蔵は同じ男だし、どうやってって鍛えた体は固いだけだし柔らかいところなんてない。
それこそ性別を変える手術でも行わない限り…一瞬考えなかったわけでもないが、身体を以蔵好みの女に変え性器だけ男を残して…っとも、頭を何度も振り正気に戻れと自分に言い聞かせて思い立って自分の中で折り合いがついたのがアプリを仕込むこと好みの抱き方を覚えることだった。
『…あんま気持ちようならんな、連絡とって相手さすかの』
どうやらもう一人でイクまでは至らなかったらしくスマホを掴んで相手を探すようだ。
ついついとスマホを触る音がして音が鳴る、
『お~う、今暇かえ?』
「そこは、僕だろ!!」
スマホの向こうの相手は龍馬の全く知らない相手だ、しかも男。こちらからの音声はミュートにしているので聞こえていないことが救いだが、つい吠えてしまった。
「恋人だろ、僕ら!!なんで知らない相手を呼ぶんだ!!」
思わずスマホを叩き割りそうになってしまう。
「僕っていったい何番目に好きなの…いや、聞いたら本当に我慢聞かなくなるから今はやめとこう」
落ち着け自分と深呼吸をする。とりあえず今晩の相手が以蔵をどんな風に抱くか、これでわかる。
朝、仕事にいつも通りに出勤して、
「あの…坂本さん…?」
朝の挨拶をしてくれた部下の一人が恐る恐ると言った顔で声をかけてくる。
「うん」
「体調悪いんですか?今日は休んだ方がいいと思います」
そう言って気遣ってくれた。
一晩中、以蔵と見も知らぬ相手のセックスを聞き続けたのだ怒りと悲しみで血の涙すら心で流しながら一睡もできていない血の気の失せた顔で儚く微笑み、
「仕事、してる方が、気が紛れるんだ、ありがとう」
その儚い微笑みを見た部下だけでなく、近くにいた誰もを魅了してしまった。
ちなみに、龍馬は普段の倍のスピードで仕事を片付けたのは言うまでもない。