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    udukihp

    進捗とか 進捗とか 進捗とかです
    時折完結したお話も載せます
    HL、もしくは夢の進捗を晒すことが多いです

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    udukihp

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    友人に渡すリド監の途中

    ##twst進捗

    03//

     目の前の食事が、少しずつ消えていく。いや、消えていく、というのは語弊があるだろうか。だが、そう形容するほかない状況だった。
    「……美味しいかい?」
     リドルは少しずつきれいになっていく皿を眺め、それからつと視線を上げた。目の前は空席であり、誰かが座っている姿を見ることは出来ない。けれど――。
    「美味しいです!」
     朗らかな声が、やはり弾むように返ってくる。空席の隣に腰掛けていたエースが、「今日は監督生の好きなメニューだったし、良かったじゃん」と少しのからかいを乗せて笑顔を見せる。デュースが「何か飲み物取ってくる」と席を立つのを眺めながら、リドルは食後の紅茶へ手を伸ばした。角砂糖二つ入ったレモンティーだ。飲み終えたら早々に席を立つ。それがハートの女王の法律で、リドルが守るべき規範だ。そっと舌先が紅茶に触れる。かすかな熱を伴ったそれは、けれど舌を痛めることもなく、華やかな味を口内に広げる。
     ――監督生の姿が見えなくなってから、今日で三日目だ。
     普通ならば、もう見えるようになっているはずである。透明化の魔法薬の持続時間は長くて一日と言われているのだから、たとえ魔力がひとかけらもない人間にかかったものだとしても、そろそろ見えるようになってもおかしくはないだろう。
     けれど、そうはならない。監督生は依然として見えるようにはならないし、見えるようになる兆しすら、見当たらない。
    「次の授業って、なんだっけ。魔法薬学?」
    「そうだよ。植物園に集合だって」
    「新しい魔法植物を採取するんだったっけ。あー、やべ、予習すんの忘れてた。確かなんか、あったよね」
    「採取する植物について調べておくこと、っていう宿題は出てたよ」
    「うわー。やば。ねえねえ監督生、あのさあ」
    「エース」
     リドルはエースへ視線を向ける。じとりとしたものから何かを感じ取ったのか、エースが慌てて手を振った。
    「――ええっと、どのページ見とけばいいのか! は、教えてくれても良くない!? ッスかねぇ?!」
     ちらちらと、リドルの方を気にしながら発せられる言葉だった。リドルは小さく息を吐いて、それから紅茶を飲みきった。手元の懐中時計へ視線を向けて、時刻を確認する。そろそろ食後から十五分経ちそうだ。
    「よろしい。すべて、何もかも、相手に頼り切るというのは良くないことを肝に銘じておくように」
    「ういーっす」
    「返事は、大きく口を開けて――」
    「はい! 寮長!」
     捨て鉢のような言葉だったが、リドルは小さく頷く。リドルが立ち上がると同時に、席を探していたらしい二人組の生徒が近づいてきた。
    「ここ席二つ空いてます?」
     リドルが座っていた席、そして、リドルの目の前の席――傍目には空席に見える場所を指さして、生徒は首をかしげた。エースが先んじて何かを答える前に、リドルは首を振って返す。
    「いいや。一つは空いているよ、ボクがどくからね」
    「え? いや、でも――」
    「そこにはオンボロ寮の監督生が座っているんだ」
     生徒たちはなんとも言えない顔をした。オンボロ寮の監督生が、透明化の魔法薬をかぶって透明化している――という噂は校内を回ったが、それも数日前のことである。普通ならば、もうすでに解けていると、それが当たり前であると、思われているだろう。
     リドルは胸元のペンへ視線を向ける。見覚えのない顔をしているが、魔法石の色を見れば、どの寮に所属しているかは、判別が付いた。
    「食事をする他者を邪魔したいわけではないなら、別の席を探した方が良いかもしれないね」
    「そうそう。悪いんだけど、ここにはまだ監督生がいるんだわ」
    「すみません、もうすぐ食べ終わるので」
     不意に聞こえてきた監督生の声音に、疑心暗鬼をにじませていた表情が一瞬で驚きに変わる。冗談か何かを言っているのではないか、という感情が瞬きのうちに消えていく。彼らの驚きはもっともなものだろう。
    「それじゃあ、監督生、エース、また。デュースにもよろしく伝えておいてくれないかい」
    「わかりました。リドル先輩、また明日」
     頷いて返し、リドルはその場から離れる。同じように、空いた席に座ろうとしていた生徒たちも、違う席を探しはじめたようで、離れていく姿が見えた。デュースはまだ戻ってこない。食堂は常に混雑しているから当然とも言えるだろう。
     次の授業は動物言語学だ。頭の中で向かう先へのルートを組み立てながら、リドルは混雑した食堂を出た。

     放課後を知らせる鐘の音が耳朶を打つ。緊張しきった呼吸が喉の奥からゆっくりとこぼれ落ちていくのを感じながら、リドルはノートを閉じた。マジカルペンを胸元にしまい、教科書の類いを鞄へ詰め込む。
     普段ならば馬術部の部活動があるが、そろそろ試験期間が近いため、部活動時間の短縮を求められており、馬術部もそれに倣った。とはいえ、部活がないと言っても馬は存在する。生き物は誰かが世話をしなければ生きていけない。テスト期間中の馬の世話はリドル、シルバー、そのほか上級生数人で回すことになっており、今日はリドルの番だった。
     厩舎は学園のグラウンド上に存在し、教室を出て少しも歩けばすぐに着く。馬の世話自体はゴーストも手伝ってくれているので、リドルのすることは飼い葉を変えたり、馬の様子がおかしくないかを確認するくらいである。
     外廊下を出て、そのまま歩いて行く。放課後になったばかりだからか、辺りは足早に図書館へ向かう生徒や、テスト期間なんて関係ないとばかりに賢者の島にある学生街へ出かけようとする生徒が多く見られる。その中にハーツラビュルの生徒がいないかを横目で確認していたら、ふと、どん、と何かにぶつかる音がした。
    「いたぁ!」
     それはリドルの少し先から聞こえてきた音のようで、それに乗じたように何か物が――本か、何かの落ちる音がした。何もない空間から急に本が床を滑るように出てくる。
     革張りのものだった。『魔法薬学 実践概論 三』というタイトルが表面に踊っている。――あれは、学園の先生が所蔵する本であり、基本的に貸し出しはあまり出来ないはずだが。
     じっと本を眺めていると、それが不意に消える。
    「何やってんだよ」
    「いや、なんか……なんかぶつかったっぽいんだけど」
    「――す、すみません」
     監督生の声が聞こえた。だが、男子生徒は気づいていないようである。辺りを見渡して、それからぶつかった箇所を軽くはたくと、そのまま歩き出した。
     リドルは小さく息を吐く。行き交う人の数は多く、おそらく多少時間が経たないと居なくならないだろう。
     たくさんの雑踏に混じって、かすかな足音がする。まるで存在をひた隠すような、そんな足音をたどって、リドルは廊下の隅に向かう。小さな吐息の音が聞こえた。それはきっと、監督生の発したものだった。
    「監督生」
    「えっ。え?! り、リドル先輩」
     人の居ない場所から声がする。数日経って、その違和感にも少しだけなれた。
    「大丈夫かい?」
    「――み、見てたんですか」
     肯定をしても、否定をしても、なんとなく、監督生は傷つくだろうと感じた。だから、リドルはかすかに顎を引く。そうして、「――見てはいないよ」とだけ続けた。
    「けれど、声が聞こえた。見過ごすわけにはいかない」
    「……あは、……ほんと、なんていうか、あの、変なところを見せて……」
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    Replies from the creator

    udukihp

    DONEリクエストありがとうございました~!もの凄く楽しく書けました!少しでも楽しんでいただけたならこれ以上に嬉しいことはありません。ネイチャやおじたんのお話もいつか機会があれば是非書かせてください……!!!!重ね重ね、ありがとうございました!
    ラギ監 今日は朝からついていなかった。
     どうしてか携帯のアラームが鳴らなくて、折角の休日なのに寝坊をしてしまった。今日は賢者の島に広がる市街地へ遊びに行くつもりで、前々から色々と予定を立てていたのに、である。
     朝から時間をロスしてしまったので、いくつかの予定は諦めて、それでも折角だし買い物くらいは、と少しだけおしゃれをして外へ出たのが運の尽きだろう。
     本屋へ行って、好きな作者の新刊を買おうとするものの、売り切れていたり。美味しそうなケーキ屋さんがあったので入ってみたら、目の前で目当てにしていたガトーが売り切れてしまったり。靴擦れが起きて慌てて絆創膏を購入する羽目になったり、散々だった。
     それだけでは飽き足らず、帰り道、前日の雨もあり、ぬかるんだ地面は、簡単に足を取った。あっと思った時には水たまりへ自らダイブしてしまい、衣類が汚れた。バイトして手に入れた一張羅が見るも無惨な姿になってしまって、それだけでもう心がハンマーで殴られたかのようにベコベコになってしまった。
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    recommended works

    cat_step0416

    DONEisrn
    にょたゆりで夏の海と花火と話です。
    サブタイトルは「心中って自殺死体と他殺死体の組み合わせだけどこの二人ってどっちがどっちだろ!」です。
    夏の儚さの隙間に、いつだってあなたを想うよ ふくらはぎの中ほどまで水につけた女は、つめて、と小さく呟いた。夏の海と言えど、水という液体は総じて冷たいものである。
     砂浜に脱がれたスニーカーの中に丸まったハイソックスがいかにも、という感じがする。ローファーの中で几帳面に畳まれた自分の靴下と並んでいたのが、遠い過去のようだった。
     潔は、伸びた髪を潮風で揺らしながら小さく鼻歌をこぼしていた。随分と調子外れで、原曲に辿り着いた時にはサビまで来ていた。数年前に流行した曲だった。
     この女は、とんと現世に興味が無い。サッカーという競技、そしてそれに付随するものにしか興味が無いのである。それを羨ましいと思うのは、自分がサッカーをしている側の人間で、彼女の目に映り込める人間だからこそ思える贅沢なことである。そういうものらしい。最近のことわかんないから曖昧に笑って流しちゃうんだよな、なんて困ったように頬をかいていた女は、今楽しそうにパシャリと水を跳ねさせてはしゃいでいる。その姿を知るのは俺だけ。そういうことに優越感を抱いた自分がいる。それを認めたくなくて、小さく漏れた溜息に、潔はどしたん、なんて気が抜ける声を出しながらこちらを向いた。
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