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    udukihp

    進捗とか 進捗とか 進捗とかです
    時折完結したお話も載せます
    HL、もしくは夢の進捗を晒すことが多いです

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    udukihp

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    どっ先輩は笑顔が下手

    ##hpmi進捗

    「乾杯!」
     不意に差し出されたグラスに、慌てて私も持っていたグラスを掲げる。音頭を取ったのは、見覚えのある男性である。新人研修で横にいた人だと思う。あまり人の顔の覚えは良くないから、多分、としか言えないのだが。
     にわかにざわめき出す室内を視界に捉えながら、私はグラスに入ったお酒を口に含む。腹に何も入れていない内からお酒を飲むと、回りやすいのであんまり好きでは無いのだが、飲み会ともなれば致し方ないものである。飲み始めると直ぐに食事が運ばれてきて、それをテーブルを囲んだ同期でつまみ始める。
     今日は、同期で集まる飲み会だった。就職して少しも経たないうちに、こんな集まりが開催されるとは思ってもみなかったが、まあせっかくだし、ということで私も参加する運びとなった。人付き合いはほどほどに、が信条である。
     大企業――ではあるので、同期の数も大変に多い。最初の内は指定されたいくつかのテーブルに分かれ、後から移動をしたりして、なんやかんやと交流を深めていく形になるようだ。同じテーブルに、研修から色々と話していた相手が居たので、少しだけほっとする。
     ぼんやりと思いながら少しずつ酒を飲み含んでいると、「で、どうなの?」と、不意に声をかけられた。気づけば同期の視線が一斉に私に向いている。若干の居心地の悪さを覚えつつ、私は首を傾げた。どうなの、とは、一体何のことだろうか。
    「何が?」
    「だから、その、先輩と上手くいってるのかって話!」
    「先輩――観音坂先輩?」
     名前を出す声が、少しだけ密やかになる。この場には居ない相手のことを話すのは、なんだか批評を下すみたいで、少しだけ口が重くなる。
    「優しい先輩だよ。丁寧に教えてくれるから」
    「あの人色々噂あるじゃん」
    「噂?」
    「そうそう。友人を名乗るホストが職場にやってきたことあるとか、そういうの」
     そうなのか。私は小さく顎を引く。聞いたことも無かったし、知らなかった。観音坂先輩からもそんな話はされたことがない。というか、先輩、ホストの人が友達に居るのか。なんだか自分とは世界の違う話過ぎて、少しだけ返答にまごつく。
    「なんかこの前擦れ違った時に挨拶したら、変な顔されたんだけど」
    「変な顔?」
    「なんか、ムッとしたようなそんな顔っていうか。だから怖い先輩なのかなあって思ってた」
     女性の同期が少しだけ声を潜める。変な顔、と心の中で再度繰り返して、私はゆっくりと呼吸する。先輩が変な表情を浮かべるのは、短い付き合いの中でも何度も見たことがあるくらいに、しょっちゅうである。表情が下手というか、なんというか。なんと言えば良いのだろうか。上手い言葉が見つからない。
    「変な顔……、いやでも確かによくする。私も教えてもらってる最中に変な顔されたことある」
    「やっぱり? なんかこう、すごいよね。変なことしたかなーって思っちゃう」
     女性は小さく笑うと、それから慌てたように首を振った。
    「あ、ごめん、悪口じゃないよ。けど、なんていうか独特の雰囲気があるよね、あの先輩って」
    「わかる」
     男性の同期が相づちを打つように言葉を連ねる。それから直ぐ、興味が萎んでしまったのか、話題は違う方向へ飛んだ。それに乗っかったり、乗っからずに聞き続けたりしながら、私はそっと観音坂先輩のことを思い出す。
     今日も、外回りの最中、少しだけ変な顔をしていた覚えがある。先輩、変な顔してるなあ、くらいに思っていたが、あれはもしかして、怒っていたのだろうか。でもその割に言葉尻は優しかったが。
     ……どうしよう。今更になって不安になってきた。次に変な顔を先輩がしたら、即座に謝るべきだろうか。でも、先輩の変な顔は本当に唐突に現れるのだ。多分、私がミスをしていない時も。わからない。
     ――わからない、が、そのままにしておくわけにもいかないだろう。ぼんやりと明日のことを想像しながら、私は運ばれてきた食事を口に運んだ。
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    udukihp

    DONEリクエストありがとうございました~!もの凄く楽しく書けました!少しでも楽しんでいただけたならこれ以上に嬉しいことはありません。ネイチャやおじたんのお話もいつか機会があれば是非書かせてください……!!!!重ね重ね、ありがとうございました!
    ラギ監 今日は朝からついていなかった。
     どうしてか携帯のアラームが鳴らなくて、折角の休日なのに寝坊をしてしまった。今日は賢者の島に広がる市街地へ遊びに行くつもりで、前々から色々と予定を立てていたのに、である。
     朝から時間をロスしてしまったので、いくつかの予定は諦めて、それでも折角だし買い物くらいは、と少しだけおしゃれをして外へ出たのが運の尽きだろう。
     本屋へ行って、好きな作者の新刊を買おうとするものの、売り切れていたり。美味しそうなケーキ屋さんがあったので入ってみたら、目の前で目当てにしていたガトーが売り切れてしまったり。靴擦れが起きて慌てて絆創膏を購入する羽目になったり、散々だった。
     それだけでは飽き足らず、帰り道、前日の雨もあり、ぬかるんだ地面は、簡単に足を取った。あっと思った時には水たまりへ自らダイブしてしまい、衣類が汚れた。バイトして手に入れた一張羅が見るも無惨な姿になってしまって、それだけでもう心がハンマーで殴られたかのようにベコベコになってしまった。
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