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    udukihp

    進捗とか 進捗とか 進捗とかです
    時折完結したお話も載せます
    HL、もしくは夢の進捗を晒すことが多いです

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    udukihp

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    魈ほた2

    ##gnsn進捗

    魈ほた「ということで、お邪魔します!」
    「邪魔と思うなら帰ってくれ」
    「なんだよー。魈とオイラたちの仲だろ!」

     有無を言わさず室内に入ってきた蛍とパイモンに、魈は軽く眉をひそめた。一瞬扉に施錠をすることを考えたが、そうしたら一日中扉をノックされ続ける可能性がある。そうなったら眠るどころの話ではないし、少しでも仮眠が取れなければ、夜の時間帯の業魔退治も難しくなるだろう。眠れる時に眠る、その行為を積み重ねてきたからこそ、魈は今も業魔退治を行うことが出来ているのだ。

    「なんていうか、こう、内装が本当に簡素だね。ベッドしかない」
    「オイラたちが望舒旅館に泊まった時は、もっとたくさん家具があったような」

     蛍とパイモンが室内を軽く見回しながら首を傾げて見せる。魈の借りている一室には、家具らしいものはほとんど無い。あるのはベッドくらいだ。完全に寝る部屋としてしか利用していないため、それ以外の家具はオーナーに言って下げさせたのである。必要ないものを身近に置いておく必要性はない。

    「寝るための部屋に家具は必要無いだろう」
    「寝るための部屋だからこそ、だよ」

     蛍は小さく息を吐く。それから、そっと魈へ視線を寄せた。

    「辛いこととか嫌なことがあった時に、部屋に戻って、お気に入りの花とか、お気に入りの本とかがあったら、少しだけ楽にならない?」
    「……そんなことを思ったことがない」

     魈はゆっくりと首を振った。寝るための部屋は、寝るためにしか使わない。その部屋に何があろうと、何を置こうと、魈の無聊を慰めはしない。部屋に入ってすぐにベッドに横になれる、それだけが求めるものであって、室内をごちゃごちゃと荒らすような家具類は一切必要無かった。
     魈の言葉に、蛍はかすかに口を開いて、それからゆっくりと閉じた。そっか、と、かすかな声が耳朶を打つ。それは否定が滲むわけでもなく、肯定が滲むわけでもない、そんな声音だった。

    「私は結構置いちゃうんだ。魈が私の部屋を見たら驚くかもしれない」

     それはまるで、蛍には辛い時や苦しい時が多いというように聞こえた。
     魈はちらりと蛍を見る。考えた言葉を口には出さないように押し込めて、その代わりの言葉を吐き出した。

    「――我は寝る。お前たちは勝手にしろ」
    「うん、勝手にするね」

     窓の向こうが、じんわりと夕暮れを滲ませている。地平線に太陽が落ちていくのを眺めてから、魈はベッドに横になった。この時間帯なら、一時間ほどは眠れるだろう。添い寝をする、と言われたが、魈の居るベッドは一人用のベッドだし、蛍が入るような隙間なんてほとんどない。さっさと寝てしまったら諦めて帰るはずだ。

    「それじゃあ添い寝を失礼するね――はい、魈」

     魈の考えをよそに、蛍が小さく笑いながら、魈が横になっているベッドの側に座り込んだ。そうして、そっと手を差し出してくる。指先が、ベッドのシーツをたぐるように優しく動いて、そのまま魈の手に触れた。
     蛍の体温が、魈の手のひらに滲む。他人の熱だった。

    「……何をしている?」
    「添い寝。さすがにこう、一日目からベッドで一緒に寝るのもなんだなあって。一人用のベッドみたいだし」
    「待て。一日目?」

     なんだそれは。一回きりじゃなかったのか。一日目ということは、二日目も――明日もするつもりなのか。
     思わず愕然とする。蛍が魈の表情に気づいてか、いたずらが成功した子供のように笑った。

    「それはもう。だって、回数については明言してなかったからね!」
    「そうそう。魈が最初に確認するかどうか、オイラちょっとだけドキドキしたんだぜ」

     蛍の言葉に何度も頷いて、パイモンが誇らしげに胸を張って見せる。ふよふよと宙を漂いながら、パイモンも蛍と同じように魈の手に触れた。自分よりも小さな手のひらが、重なるように魈の手を握っている。
     あまりにもあくどい行動ではないか。魈は眉根を寄せる。普通、回数なんて確認しないだろう――と考えて、すぐに心中で首を振った。そもそも、蛍とパイモンが変なことを言い出してきた時点で、すべてを疑ってかかるべきだった。これは魈の落ち度だ。

    「……寝る」
    「うん。おやすみ、魈。大丈夫、起きるまでずっと手を握っておくからね。安心してよ」
    「何に安心しろと……」

     そもそも、それは添い寝ではない――気がする。そう思うが、そうやって口にして、蛍が乗り気になったらたまったものではない。魈が言うなら! なんて、ベッドに乗り上げられてしまったら、一人用の簡素なベッドはぎゅうぎゅうになってしまうだろう。そのような事態に陥りたくはない。
     手を繋いで寝るだけで、蛍は満足するのだ。ならば、それに従っておいた方が良い。魈は小さく息を吐いて、蛍を見る。ベッドの縁に軽く肩を預けるようにした蛍は、視線が合うとほころぶように笑った。榛色の瞳がかすかに和らいで、おやすみ、と穏やかに囁く声が耳朶を打つ。

    「魈が沢山、良い夢を見れますように」
    「……なんだ、それは」
    「おまじないみたいな感じかな。なんなら杏仁豆腐たくっさん食べる夢とかね」

     それは良い夢なのか。蛍の言葉をゆっくりと嚥下し、魈は小さく笑う。それは普通の夢だろう、と小さく返してから、魈はそっと目を閉じた。
     自分の近くに他人がいることが、むずむずして、どうしようもない。周囲を意識しないようにしても、蛍の吐息と、パイモンのかすかな呼吸の音が耳朶を打つのが聞こえてきた。
     こんな状況で、なかなか眠れるわけがない。そう思う。そう思うのに、柔らかな温度が、じんわりと自分の体温を侵食していくことが、なぜだか心地が良かった。誰かの温度を、こんなにも近くで感じ続けることなんて、ここずっと無かったからかもしれない。
     ふ、と意識が途切れ途切れになる感覚を覚える。眠りに落ちる兆候めいたそれに、魈はかすかに息をのんだ。
     ――疲れているからだ。蛍が居るからではない。そもそも、寝るところを誰かに見せたことはないし、これから先も誰かに見せたいと思うことはないだろう。二回目をどのようにしてやりすごすかを滲む意識の中で考えている内に、魈は眠りについた。
     夢は、見なかった。
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    Replies from the creator

    udukihp

    DONEリクエストありがとうございました~!もの凄く楽しく書けました!少しでも楽しんでいただけたならこれ以上に嬉しいことはありません。ネイチャやおじたんのお話もいつか機会があれば是非書かせてください……!!!!重ね重ね、ありがとうございました!
    ラギ監 今日は朝からついていなかった。
     どうしてか携帯のアラームが鳴らなくて、折角の休日なのに寝坊をしてしまった。今日は賢者の島に広がる市街地へ遊びに行くつもりで、前々から色々と予定を立てていたのに、である。
     朝から時間をロスしてしまったので、いくつかの予定は諦めて、それでも折角だし買い物くらいは、と少しだけおしゃれをして外へ出たのが運の尽きだろう。
     本屋へ行って、好きな作者の新刊を買おうとするものの、売り切れていたり。美味しそうなケーキ屋さんがあったので入ってみたら、目の前で目当てにしていたガトーが売り切れてしまったり。靴擦れが起きて慌てて絆創膏を購入する羽目になったり、散々だった。
     それだけでは飽き足らず、帰り道、前日の雨もあり、ぬかるんだ地面は、簡単に足を取った。あっと思った時には水たまりへ自らダイブしてしまい、衣類が汚れた。バイトして手に入れた一張羅が見るも無惨な姿になってしまって、それだけでもう心がハンマーで殴られたかのようにベコベコになってしまった。
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