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    Lupinus

    @lupi_eggplant

    テキストを投げ込むスペース/主刀/ファンチェズ

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    Lupinus

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    若き日のチェズレイにチョコレートをあげるファントムの話 2月上旬あたりの出来事なのでまだそこまで親密ではない うっすらとファ←若チェ ファントムが出てくるのでネタバレです

    ##バディミ
    #ファンチェズ
    funchess.

    チョコレートを贈るファンチェズ(未満)「ところで、ボスはチョコレートの贈り物は受け付けているのかな」
    「特にお断りはしていませんよ。口にするとも言っていませんが」
     そうか、とファントムはそれ以上突っ込むでもなくうなずく。
    「このあいだ評判のショコラトリーの前を通ったんだが、君の好きそうな新作が出ていてね。もらってくれるかい?」
     差し出されたのは、愛らしい猫の顔があしらわれた小箱入りのチョコレートだ。他の部下たちの目がない私室にしても、なかなか大胆な行動に出てくれる。
    「食べるとは限らない、と申し上げたばかりですが」
    「そりゃそうだ。君の立場じゃ、毒味もなしにそのまま口に入れるなんてできるわけがないからな。だがせっかく買ってきたんだし、もらうだけはもらってほしいって話だよ」
    「はあ。ご承知の上であれば、お断りするのも申し訳ないですね」
     重さに不審な点はない。時限装置が入っているわけではなさそうだが、開けた途端に手を傷つける罠や菓子に仕込まれた毒物の可能性は残っている。
    「それにしても、ずいぶんと愛らしいパッケージですねェ」
    「ん?」
     言われてみれば、とファントムは苦笑する。
    「中身しか見てなかったんでな、箱までは気が回らなかったよ。
     ナッツやプラリネの入っていないシンプルで純粋なチョコレートが、君の好みじゃないかと思ったんだ」
    「おや」
     濁りを嫌うボスの性質を、彼なりに考えた上で選んだ品であるらしい。それなりの手間をかけたのであれば、すげなくあしらうのも申し訳ない……ということにしておこう。
    「せっかくですから、今ここでいただきましょうか。あなたと一緒に」
     チョコレートを長椅子の脇のテーブルに置き、備えつけの小さなキッチンへ向かう。
    「コーヒーは私が入れます。贈り主にお願いするのは恐縮ですが、箱を開けておいていただけますか」
     これで箱そのものに仕掛けられたトラップは回避できる。あとはこちらが無作為に選んだチョコレートを、その場でファントムに食べさせればいい。
     理由をつけて口にしたがらないか、あるいは嚥下せずに吐き出してごまかすか……そのような動きを見せれば、二人きりの茶会は即座に終了だ。

      +++

    「こちらをどうぞ、ファントム」
    「これは……?」
    「先日いただいたチョコレートのお返しです」
     毎年のように行列ができることで知られる高級ショコラトリーが、この季節限定で販売しているウィスキーボンボンの詰め合わせだ。チョコレート製の小さな五本のボトルに、ヴィンウェイの各地を代表する醸造所の銘酒が入っている。
    「これを俺にかい、ボス」
     紫色のリボンをかけた小箱を受け取るファントムの声はめずらしくうわずっている。
    「ええ。あなたの選んで下さった品も大変美味でしたし、コーヒーにもお付き合いいただきましたので、特にお礼をと選びました」 
     適切な返礼品選びもマナーとしては心得ているが、無難なものを用意してもつまらない。新しいボスの審美眼がどれほどのものか、見せつけてやるにはちょうどよい機会だ。
     アルコールを摂取しない自分には無縁の菓子だったが、取り寄せたカタログを並べて見比べる時間はなかなかに新鮮だった。
    「私の目的はあなたにこちらを差しあげることですので、今ここで開封して召し上がっていただく必要はありませんよ」
     毒入りと疑っていない証拠に、この場で口にしろなどと要求するつもりはない。この男の忠誠心は、先日のチョコレートである程度まで確認できた。
    「……ありがとう、ボス。酒が入ってるんじゃこの場で食べるわけにはいかないが、自室に戻ってから大事にいただくよ」
     実はアソートチョコが好物でね、と笑うファントムの顔はマフィアのドンの側近とはほど遠い。ありふれた中流家庭の父親が、家族からの思いがけない贈り物にでも見せそうな表情だ。
     浮かれてゆるんだ頬をふいに引き締め、ファントムは年若いボスを前に声をひそめる。
    「しかし、こんな個人的なお返しをもらってしまっていいのかな。全員に何か配っている、というわけでもないのに」
    「構いません。あなたならば口外しないくらいの常識はお持ちでしょうし、意味を勘違いなさることもないでしょう」
     ひそかに託した意味などこの男にわかるはずがない。仮に理解されたとしたら、その方がよほど困った事態に繋がりかねない。
    「ああ、もちろん。誰にも内緒だよ、外に漏れたらただじゃすまない」
     秘密めかしたチェズレイの答えに、ファントムは楽しげに目を細めて笑う。
    「チョコレートも嬉しいが、君がそうして信頼を寄せてくれることが何より嬉しいな」
    今はまだ、ファントムにこの顔をさせた人間が自分である、その事実だけで満足できた。

    <了>

    #ファが買ってきたチョコは「デメル 猫」で検索すると出てくるやつをイメージして下さい
    若チェは猫にチョコレートは禁忌ですよとかクソ真面目に突っ込みそうな気もする かわいい
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     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

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    ちょもさんが女体化したけど動じない主と前例があると知ってちょっと勘ぐるちょもさん
    滅茶苦茶短い
    「おお、美人じゃん」
    「呑気だな、君は……」

     ある日、目覚めたら女の形になっていた。

    「まぁ、初めてじゃないしな。これまでも何振りか女になってるし、毎回ちゃんと戻ってるし」
    「ほう」

     気にすんな、といつものように書類に視線を落とした主に、地面を震わせるような声が出た。身体が変化して、それが戻ったことを実際に確認したのだろうかと考えが巡ってしまったのだ。

    「変な勘ぐりすんなよ」
    「変とは?」
    「いくら男所帯だからって女になった奴に手出したりなんかしてねーよ。だから殺気出して睨んでくんな」

     そこまで言われてしまえば渋々でも引き下がるしかない。以前初期刀からも山鳥毛が来るまでどの刀とも懇ろな関係になってはいないと聞いている。
     それにしても、やけにあっさりしていて面白くない。主が言ったように、人の美醜には詳しくはないがそこそこな見目だと思ったのだ。

    「あぁでも今回は別な」
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    「今晩はお前に手を出すってこと。隅々まで可愛がらせてくれよ」

     折角だからなと頬杖をつきながらにやりとこちらを見る主に、できたばかりの腹の奥が疼いた。たった一言で舞い上がってしまったこ 530

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    桃を剥いてたべるだけのさにちょも
    厨に行くと珍しい姿があった。
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    「美味いか」
    溺れそうなほどの果汁を飲み込んでからうなづいて残りの果肉を味わう。甘く香りの濃いそれはとても美味だった。
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    「ん、」
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    「これが最後だな」
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    「一個しか買わなかったからな」
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    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
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    「雛鳥に餌やってるみたいで楽しかったぜ」
    「…………わすれてくれ」
    差し 588