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    Norskskogkatta

    @Norskskogkatta

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    Norskskogkatta

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    主くり
    鍛刀下手な審神者が戦力増強のために二振り目の大倶利伽羅を顕現してからはじまる主をめぐる極と特の大倶利伽羅サンド

    #主刀
    mainBlade
    #主くり
    principalOffender

    大倶利伽羅さんどいっち?!


     どうもこんにちは!しがないいっぱしの審神者です!といっても霊力はよく言って中の下くらいで諸先輩方に追いつけるようにひたすら地道に頑張る毎日だ。こんな頼りがいのない自分だが自慢できることがひとつだけある。
     それは大倶利伽羅が恋びとだと言うこと!めっちゃ可愛い!
     最初はなれ合うつもりはないとか命令には及ばないとか言ってて何だこいつとっつきにくい!と思っていったのにいつしか目で追うようになっていた。
     観察していれば目つきは鋭い割に本丸内では穏やかな顔つきだし、内番とかは文句を言いながらもしっかり終わらせる。なにより伊達組と呼ばれる顔見知りの刀たちに構われまくっていることから根がとてもいい奴だってことはすぐわかった。第一印象が悪いだけで大分損しているんじゃないかな。
     好きだなって自覚してからはひたすら押した。押しまくって避けられるなんて失敗をしながらなんとか晴れて恋仲になれた。
    それからずいぶんたつけど日に日に可愛いという感情があふれてとまらない。
     そんな日々のなかで大倶利伽羅は修行に出てさらに強く格好良くなって帰ってきた。何より審神者であるオレに信頼を寄せるような、そんな言動が増えたし、声がひたすら優しく柔らかく聞こえるようになった。余裕が出てきたって感じなんだろうか。そのくせ万屋の付き添いを頼むと割と嫌がるようなことを言うけどちゃんと最後まで付き合ってくれる。本当に自分にはもったいないくらいのできた可愛い恋びとである。
     ただひとつだけ、ちょっとした不満がある。
     大倶利伽羅が嫉妬してくれないのだ。修行前は他の刀たちに構い過ぎると無言で睨んできたり何も言わずに姿を見せなくなったりして探し出すのに苦労した。見つけて話し合って、ごめんねと謝ると口をへの字に曲げて抱きついてくる大倶利伽羅が可愛くてしかたなかった。
     でも今ではうちの子達はもちろん、他本丸の大倶利伽羅と話しても嫉妬しないし、あんたの俺はここにいるって自信満々なのも可愛いんだけど、たまには拗ねたりするところが見たい!
    「というわけで、二振り目の大倶利伽羅を顕現しようと思うんだけど」
    「……本丸のことはあんたに任せている」
     ちょっと間が気になったけど、唐突な申し出に許しが出たので大倶利伽羅を連れて保管部屋へ向かう。
     うちの本丸ではオレの霊力がよくないばっかりに希少な刀たちと出会う機会がほとんど無い。だから頭数を増やすためにもすでに何振りかは二振り顕現している。だからまあ、今回もそんな感じでやっていこうと思う。もちろん手を出したりなんかはしない。
    「よーし、顕現するぞ!」
    「…………ああ」
     とっておいた”大倶利伽羅”に霊力を込める。どこからか桜の花びらが現れた。桜吹雪の中から刀剣男士が姿を現すこの瞬間はとてもわくわくする。
    「……大倶利伽羅だ。別に語ることはない。慣れ合う気はないからな」
    これこれ!このかんじ懐かしい!こちらの様子をうかがう野良猫みたい!
    「よろしく大倶利伽羅!」
     口上に若干かぶり気味で挨拶をしたから綺麗な金色がまん丸くなっててちょっと幼く見える。手を差し出しても払われるのがわかってたので無理矢理革手袋の手を握ってぶんぶんと上下に振る。これで契約はばっちりだ。霊力が低いから顕現したすぐに触れあわないと安定しないというへっぽこな訳だけど、こうして初めて顔を合わせて手を握ってお互いを確かめ合うのは結構好きだったりする。
     ぎゅーっと握ってると今の状況がわかってきたのか顔が赤くなって手が振り払われてしまった。
    「……っ、慣れ合うつもりはない!」
    「うんわかってるよー、後のことはそっちの奴に聞いてね」
     後ろに控えていた大倶利伽羅を紹介するとまた目を見開いた。そりゃあ顕現したらすでに修行済みの自分がいたら驚くよなと思いながら見守っていると普通に極から案内すると言いだして鍛刀部屋を二人して出て行った。
     とりあえず衝突は起こらなさそうで一安心だ。


    「くりからー!」
    「……チッ、離せ抱きつくな!」
     見慣れた焦げ茶色の頭を廊下の先に見つけて思いきり飛びついた。彼、二振り目の大倶利伽羅こと倶利伽羅を顕現してから一週間たった。まだ戦場に出せていないので練度は1のままだ。ツンツン加減が懐かしくて楽しくて見かけたらついこうして構ってしまう。そのたびに舌打ちだったり鬱陶しげな視線だったりを向けられるけどとっくにそれを経験している自分にとってはほとんどダメージはない。なにより本当にいやだったらあっという間に振りほどかれてとっととこの場を去っている。
    「あはは、今日もつんつんしてるなー!」
    「くそ……おい、離せ」
    「主、出陣部隊が帰ってきたぞ」
     ぐしゃぐしゃと猫っ毛を掻き回してじゃれていると後から穏やかに聞こえるようになった低い声がかかった。振り返れば俺の大倶利伽羅が片手に端末を持って立っていた。
    「はーい、今戻るよ。じゃあね倶利伽羅」
    「…………チッ」
     もうそんな時間かと倶利伽羅からぱっと手を離す。構われることを黙って受け入れているとしても引き際は肝心だよね。
     ひらひらと手を振って大倶利伽羅の元へ歩く。その後で倶利伽羅が極をにらみつけているなんて気づきもしなかった。
    「はー、今日も舌打ちされたな!」
     言葉にするとかなり変態くさいことで喜んでる自覚はしつつも軽い足取りで大倶利伽羅と並んで歩いて角をまがった時だった。
    「うお!?」
     腕が引っ張られてけたたましい音と鈍い痛みが背中に走る。両腕が壁に押さえつけられて身動きが取れない。股の間に長い脚が挟み込まれている。もちろんこんなことをしたのは大倶利伽羅だ。
    「いってぇ……なにすんだよ」
    「……そんなにあっちの俺がいいのか」
     俯いているせいで長めの茶褐色の髪がかかって表情が読めない。それでも絞り出すように吐き出された言葉にもしや、と胸が躍ってしまった。
    「……やきもち焼いてくれるの?」
    「だったら、なんだ」
     否定しない、拗ねるような大倶利伽羅に目を見開く。どんな顔をしているのだろうとちょっとわくわくしているとゆっくり頭が持ち上がった。
    「あんたの大倶利伽羅は俺だけで十分だろう……!」
     苦しげに涙をためた金色がぎゅーっと胸を締め付けてくる。たまらず抱きしめると背中の服が掴まれた。いつになく縋るみたいな仕草にちょっとだけ反省をした。嫉妬してもらいたいと思っていたのに二振り目を構うのが楽しすぎて恋びとを省みるのを忘れてしまっていた。
    「ごめん、オレの大倶利伽羅はきみだけだよ」
    「……嘘じゃないだろうな」
    「もちろん。ほったらかした罪滅ぼしじゃないけど今夜二人っきりで過ごそ?」
     手に馴染むようになった腰を引き寄せ柔らかい髪を撫でる。こっくりと肩口に埋まった頭が頷いた。
     その晩、訪ねてきた大倶利伽羅の腕をひっぱってに部屋になだれ込んでお互いを貪り合う。可愛く嫉妬してくれたオレは当然盛り上がったし、いつになく声を上げる大倶利伽羅にさらに興奮して楽しんでしまった。
    「あんた、もうあっちの俺に構うのは止めろ」
    「あっちは俺のこと眼中にないとおもうけど」
    「……どうだろうな」
     腕枕をしながら腕の中に収まったままの大倶利伽羅の髪に指を通して遊ぶ。気にすることはないとおもうけどなぁと思いながらいつになくひっついてくれる大倶利伽羅にきゅんと胸を矢で打ち抜かれつつ一緒に眠った。

     大倶利伽羅と恋びとらしい時間をしっかりと過ごしてから、それまで以上に近くにいることが増えた。二振り目と会わせないようにしてるらしい。なにか伝えなきゃいけないことがあると行ってくると言って部屋を出て行ってすぐ帰ってくるという徹底ぶりだった。あからさまなやきもちがこんなに可愛いとは思わなかった。
     それでも顕現したばかりでまだ練度上げをさせてないのでつながりが薄く、毎日会って話をしないといけない。それだけは大倶利伽羅の方を説得して顕現当初から続けていた。
     今日も倶利伽羅を呼び止めると首だけで振り向く。こっちにおいでと手招きをすると標準装備のため息をつきながらよってくる。
    「飽きもせず来るな」
    「飽きるとかそういうのじゃないからなあ」
    「その割にはここ二、三日無視されたが」
    「む、無視とかじゃないから!」
     極の方と仲良くしてました、なんて言えない。ごまかし気味に体調は?とか本丸での生活はどうだとか当たり障りのないことを聞いていく。
    「あんた、物好きだな」
     ぽつりぽつりと続いていく会話のなかでふいに倶利伽羅が遮ってきた。ほんのわずかに口角を上げる大倶利伽羅にデジャヴだ。なんだか頭の奥の方でけたたましい音が鳴り響いたような気がした。それからは適当に会話を切り上げて帰ってきてしまった。

     なんとなく倶利伽羅とふたりきりになるのが気まずい感じがして誰かのいるところで話しかけるようになったと同時に出陣させる準備ができた。
     こつこつと出陣し、二振り目がようやく特になった。避け続けるのも悪いし、これまで他のみんなにもしてきたようにお祝いするため執務室に呼んだ。
    「やー、おめでとう!これからもじゃんじゃん働いてもらうわけだけど、とりあえずお祝いってことで何か欲しいものある?」
     できるだけ明るく聞いてみるとちょっと考え込むそぶりを見せた。そこで珍しさを感じる。特に物欲とかなさそうなのに。暫くして倶利伽羅が顔を上げた。
    「……あんたがいい」
    「ほへ?」
     霊力が足りないからよこせと言うことだろうか。それだったらわざわざお祝いとしてでなくても言ってくれたら手入れの時にでも刀身に霊力込めるんだけどなと首をかしげていると倶利伽羅がもう一度口を開いた。
    「身体だけでもいい。……あんたにめちゃくちゃにされたい」
    「…………え? そういう? え、まじで……?」
     それは流石にちょっと、と視線が泳ぐ。まさか倶利伽羅にそんなふうに思われているなんて微塵もわからなかったし、オレの恋びとは極の大倶利伽羅だし、同じ姿だとしてもあいつと目の前の彼は別の存在だ。それでも動揺が半端なくていやな汗をかいてきた。
     何も言えずにいるとチッと舌打ちが聞こえて背中が畳に叩きつけられる。頭をぶつけることはしなかったのが胸に痛い。こういうときでさえ相手を優先するんだから、困ってしまう。
    「何が不満だ。あっちの俺に飽きたから俺を顕現したんじゃないのか」
    「そんなんじゃ」
    「……あんたは遊びのつもりかもしれないが、俺はあんたが」
     綺麗な形の眉をゆがめて見下ろす大倶利伽羅に記憶がダブる。
    「お、おくりから、」
     思わず手が伸びた。視界にある大好きなひととおんなじ顔が驚いたように見開いて、ゆっくりと睫を伏せる。もう少しで滑らかな頬に指が触れそうになって。
    「主、明日の出陣だが」
    「うわっはいすいません!」
     障子の向こうから近づいてきた耳になじんだ低音にびっくんと肩が跳ねてしまう。
    「……チッ、間の悪い」
    「…………これはなんの真似だ」
    「ひえぇっ」
     あわあわして倶利伽羅をどかそうとしているうちにあいつがきてしまった。倶利伽羅に押し倒されているという言い逃れのできない状況に金色の目の瞳孔がきゅうと鋭くなって、背後に戦場ですらみせないくらいの殺気が見えるようだった。
     二振りの視線が交わる。その瞬間にゴングが高らかに鳴り響いた気がした。
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    Norskskogkatta

    Valentine主くり♂くり♀のほのぼのバレンタイン
    料理下手なくり♀が頑張ったけど…な話
    バレンタインに主にチョコ作ろうとしたけどお料理できないひろちゃんなので失敗続きでちょっと涙目で悔しそうにしてるのを見てどうしたものかと思案し主に相談して食後のデザートにチョコフォンデュする主くり♂くり♀
    チョコレートフォンデュ一人と二振りしかいない小さな本丸の、一般家庭ほどの広さの厨にちょっとした焦げ臭さが漂っている。
    執務室にいた一振り目の大倶利伽羅が小火になってやいないかと確認しにくると、とりあえず火はついていない。それから台所のそばで項垂れている後ろ姿に近寄る。二振り目である妹分の手元を覗き込めば、そこには焼き色を通り越して真っ黒な炭と化した何かが握られていた。
    「……またか」
    「…………」
    同年代くらいの少女の姿をした同位体は黙り込んだままだ。二振り目である廣光の手の中には審神者に作ろうとしていたチョコレートカップケーキになるはずのものがあった。
    この本丸の二振り目の大倶利伽羅である廣光は料理が壊滅的なのである。女体化で顕現したことが起因しているかもしれないと大倶利伽羅たちは考えているが、お互いに言及したことはない。
    2051

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    Norskskogkatta

    PAST主こりゅ(男審神者×小竜)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    小竜視点で自分の代わりだと言われてずっと考えてくれるのは嬉しいけどやっぱり自分がいい小竜
    「ね、みてこれ! 小竜のが出たんだよー」
    「へーえ……」
    我ながら冷めきった声だった。
    遠征帰りの俺に主が見せてきたのは俺の髪の色と同じ毛皮のうさぎのぬいぐるみだった。マントを羽織って足裏には刀紋まで入ってるから見れば小竜景光をイメージしてるってのはよくわかる。
    「小竜の代わりにしてたんだ」
    「そんなのより俺を呼びなよ」
    「んー、でも出かけてていない時とかこれ見て小竜のこと考えてるんだ」
    不覚にも悪い気はしないけどやっぱり自分がそばにいたい。そのくらいにはこの主のことをいいなと感じているというのに本人はまだにこにことうさぎを構ってる。
    今は遠征から帰ってきて実物が目の前にいるってのに。ましてやうさぎに頬ずりを始めた。面白くない。
    「ねぇそれ浮気だよ」
    「へ、んっ、ンンッ?!」
    顎を掴んで口を塞いだ。主の手からうさぎが落ちたのを横目で見ながらちゅっと音をさせてはなれるとキスに固まってた主がハッとしてキラキラした目で見上げてくる。……ちょっとうさぎが気に入らないからって焦りすぎた。厄介な雰囲気かも。
    「は……初めて小竜からしてくれた!」
    「そうだっけ?」
    「そうだよ! うわーびっくりした! 619

    Mochakored

    DONEらびこれ主刀(源氏兄弟)「──ねえ。主は、あれは買わないの?」
    髭切の伸ばした指の先を見れば、カラフルなうさぎたちが万屋のショーウィンドウに綺麗に並べられている所だった。
    「あぁ、あれかあ。俺は買う予定はないよ」
    「そうなのか?君は我らを模したものへは財布の紐が緩くなって、すぐに購入するではないか」
    隣を歩いていた膝丸はそう言ってくるが、財布やパスケースなんて実用品ならともかく、可愛いうさぎを飾っても置きっぱなしになるのが目に見えている。
    彼らも自分たちを模したぬいぐるみが埃をかぶっているのは嫌だろう。まあ俺の部屋は、定期的に掃除をしてくれる優しい刀がたくさん居ているのでその心配はないだろうけど。
    そう思ったら、飾るのもちょっといいかもしれないと思ったので二人に尋ねてみる。すると、二人は同じタイミングで目を瞬かせるとゆっくりと口を開いた。
    「いらないよ」
    普段よりもずいぶんと低い声で髭切が言う。
    「あぁ、そうだな兄者。いらんな」
    対照的にいつもよりも柔らかな声で膝丸が同意した。
    にこりと同じ角度で首をかしげて微笑む兄弟は美しい、しかし背後に何かを感じ取れてしまう。
    「あ、はい……」
    大人しく頷いた俺の腕を髭切 626

    Mochakored

    DONEらびこれ主刀(山鳥毛)「小鳥、これを」
    恋刀である山鳥毛が、艶のある声と共に差し出してきたのはうさぎのぬいぐるみだった。つぶらな赤い目が可愛らしい。
    ふわふわ具合のフォルムは手触りの良さが触らずとも分かるようだ。
    淡い光を閉じ込めた銀色のような毛と赤い目は、うさぎらしさにこれでもかと溢れている。
    けれど、そのふわもこボディにはかっちりとした渋い色合いのアイテムを身に付けていて、審神者はそこが気にかかった。見覚えのあるそれらは、どう見ても目の前の刀のものとそっくりにしか見えない。
    「山鳥毛、これって……」
    「ああ、私を模した兎、とのことだ。なかなかの出来だと思う」
    「あ、うん。それは俺もそう思う。かわいかっこいいって感じで」
    「……そうか。小鳥が気に入ってくれて安心した。ありがとう」
    「え、あ、どういたしまして……?」
    はにかむ美貌を間近に浴びてくらりとする。
    審神者は目の端に星が散っている気持ちになりながら、気になったことを聞いてみる。
    「というか、なんで俺にこれを……?」
    審神者は数年前に大学を卒業した成人した青年だ。
    刀である山鳥毛よりも若いとはいえ、このように可愛らしいものは年齢一桁代以降は持ったこと 896

    Mochakored

    DONE主刀(さに←ちょも)
    南泉をそえて
    「すまない、少しいいか?」
    「にゃっ!?」
    久しぶりの非番はごろごろするに限る。そんな信念を持って自室でのんびり過ごしていると、甘さを含んだ低い声に部屋の外から呼び掛けられた。声に覚えがありすぎる南泉は悲鳴をあげて飛び上がる。
    一家のお頭である山鳥毛にだらしない姿を見せるわけにもいかない。畳へ出していたものを押し入れに放り込むと、平静さを装って部屋へ招き入れる。
    「非番の日にすまんな。少し相談があるのだが……」
    「お頭が、相談……?」
    「ああ、小鳥と先日話をした時なんだが……。彼が、私と一緒に酒を呑みたいなどと可愛らしい事を言ってくれてな」
    「はあ……」
    「その為の酒器を探しているのだが、品揃えの良さに見れば見るほど悩んでしまっているんだ。少々困ってしまってな」
    そう言って広げられた万屋のカタログを見た南泉は全身の毛が逆立つような気持ちにさせられた。
    カタログの装丁からして違うとは思っていたが、どう見ても日用品とは思えない。人間国宝やら有名な工房の受注品ばかりだ。その品々の金額は、南泉が万屋などで買い物をする時に見たことのない価格帯のものばかりだ。国宝や重文の刀も数多くある一文字一家で 825

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    Lupinus

    DONE男審神者×五月雨江(主さみ)の12/24
    つきあってる設定の主さみ クリスマスに現世出張が入った話 なんということもない全年齢
    「冬の季語ですね」
    「あっ、知ってるんだね」
    「はい、歳時記に記載がありましたので。もっとも、実際にこの目で見たことはありませんが」
    「そうだよね、日本で広まったのは二十世紀になったころだし」
     さすがに刀剣男士にとってはなじみのない行事らしい。本丸でも特にその日を祝う習慣はないから、何をするかもよくは知らないだろう。
     これならば、あいにくの日取りを気にすることなくイレギュラーな仕事を頼めそうだ。
    「えぇとね、五月雨くん。実はその24日と25日なんだけど、ちょっと泊まりがけで政府に顔を出さないといけなくなってしまったんだ。近侍のあなたにも、いっしょに来てもらうことになるのだけど」
     なぜこんな日に本丸を離れる用事が入るのかとこんのすけに文句を言ってみたものの、12月も下旬となれば年越しも間近、月末と年末が重なって忙しくなるのはしょうがないと押し切られてしまった。
     この日程で出張が入って、しかも現地に同行してくれだなんて、人間の恋びとが相手なら申し訳なくてとても切り出せないところなのだが。
    「わかりました。お上の御用となると、宿もあちらで手配されているのでしょうね」
     現代のイベント 1136

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    リクエスト企画で書いたもの
    ちいさい主に気に入られてなんだかんだいいながら面倒を見てたら、成長後押せ押せでくる主にたじたじになる大倶利伽羅
    とたとたとた、と軽い足音に微睡んでいた意識が浮上する。これから来るであろう小さな嵐を思って知らずため息が出た。
    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    共寝した次の日の寒い朝のおじさま審神者と大倶利伽羅
    寒椿と紅の花
     
     ひゅるり、首元に吹き込んだ冷気にぶるりと肩が震えた。腕を伸ばすと隣にあるはずの高すぎない体温が近くにない。一気に覚醒し布団を跳ね上げると、主がすでに起き上がって障子を開けていた。
    「あぁ、起こしてしまったかな」
    「……寒い」
    「冬の景趣にしてみたのですよ」
     寝間着代わりの袖に手を隠しながら、庭を眺め始めた主の背に羽織をかける。ありがとうと言うその隣に並ぶといつの間にやら椿が庭を賑わせ、それに雪が積もっていた。
     ひやりとする空気になんとなしに息を吐くと白くなって消えていく。寒さが目に見えるようで、背中が丸くなる。
    「なぜ冬の景趣にしたんだ」
    「せっかく皆が頑張ってくれた成果ですし、やはり季節は大事にしないとと思いまして」
     でもやっぱりさむいですね、と笑いながらも腕を組んだままなのが気にくわない。遠征や内番の成果を尊重するのもいいが、それよりも気にかけるべきところはあるだろうに。
    「寒いなら変えればいいだろう」
    「寒椿、お気に召しませんでしたか?」
     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    ちょもさんが女体化したけど動じない主と前例があると知ってちょっと勘ぐるちょもさん
    滅茶苦茶短い
    「おお、美人じゃん」
    「呑気だな、君は……」

     ある日、目覚めたら女の形になっていた。

    「まぁ、初めてじゃないしな。これまでも何振りか女になってるし、毎回ちゃんと戻ってるし」
    「ほう」

     気にすんな、といつものように書類に視線を落とした主に、地面を震わせるような声が出た。身体が変化して、それが戻ったことを実際に確認したのだろうかと考えが巡ってしまったのだ。

    「変な勘ぐりすんなよ」
    「変とは?」
    「いくら男所帯だからって女になった奴に手出したりなんかしてねーよ。だから殺気出して睨んでくんな」

     そこまで言われてしまえば渋々でも引き下がるしかない。以前初期刀からも山鳥毛が来るまでどの刀とも懇ろな関係になってはいないと聞いている。
     それにしても、やけにあっさりしていて面白くない。主が言ったように、人の美醜には詳しくはないがそこそこな見目だと思ったのだ。

    「あぁでも今回は別な」
    「何が別なんだ」
    「今晩はお前に手を出すってこと。隅々まで可愛がらせてくれよ」

     折角だからなと頬杖をつきながらにやりとこちらを見る主に、できたばかりの腹の奥が疼いた。たった一言で舞い上がってしまったこ 530

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    小腹が空いて厨に行ったらひとり夏蜜柑を剥いていた大倶利伽羅に出くわす話
    夏蜜柑を齧る

     まだ日が傾いて西日にもならない頃、午後の休憩にと厨に行ったら大倶利伽羅がいた。
     手のひらに美味しそうな黄色を乗せて包丁を握っている。
    「お、美味そうだな」
    「買った」
     そういえば先程唐突に万屋へ行ってくると言い出して出かけて行ったのだったか。
     スラックスにシャツ、腰布だけの格好で手袋を外している。学ランによく似た上着は作業台の側の椅子に引っ掛けられていた。
     内番着の時はそもそもしていないから物珍しいというわけでもないのだが、褐色の肌に溌剌とした柑橘の黄色が、なんだか夏の到来を知らせているような気がした。
     大倶利伽羅は皮に切り込みを入れて厚みのある外皮をばりばりとはいでいく。真っ白なワタのような塊になったそれを一房むしって薄皮を剥き始めた。
     黙々と作業するのを横目で見ながら麦茶を注いだグラスからひと口飲む。冷たい液体が喉から腹へ落ちていく感覚に、小腹が空いたなと考える。
     その間も手に汁が滴っているのに嫌な顔ひとつせずばりばりと剥いていく。何かつまめるものでも探せばいいのになんとなく眺めてしまう。
     涼やかな硝子の器につやりとした剥き身がひとつふたつと増えて 1669

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    伊達組にほのぼのと見守られながらのおやつタイム
    伊達組とおやつ


     ずんだにおはぎに色とりどりのフルーツがのったタルト、そして一等涼しげな夏蜜柑の寒天がちゃぶ台を賑わせる。
     今日は伊達の四振りにおよばれしてのおやつタイムとなった。
     燭台切特製のずんだに意外とグルメな鶴丸の選んできた人気店のおはぎ、太鼓鐘の飾りのようにきらきらと光を反射するフルーツののったタルトはどれも疲れた身体に染みるほどおいしいものだった。
     もっと言えば刀剣男士達とこうしてゆっくり話ができるのが何よりの休息に思う。
     本丸内での面白エピソードや新しく育て始めた野菜のこと、馬で遠乗りに出かけたこと、新入りが誰それと仲良くなったことなど部屋にこもることが多い分、彼らが話してくれる話題はどれも新鮮で興味が尽きない。
     うん、うんと相槌を打ちながら、時折質問をして会話を楽しんでいると、燭台切がそういえばと脈絡無くきりだした。
    「主くんって伽羅ちゃんに甘いよね」
     それぞれもってきてくれたものに舌鼓をうって、寒天に手を着ける前にお茶を口に含んだ瞬間、唐突に投げられた豪速球にあやうく吹きかけた。さっきまで次の出陣先ではなんて少し真面目な話になりかけていただけに衝撃がす 2548

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    花火景趣出たときにハイになってかいた。
    花火見ながら軽装姿の嫁といちゃつくだけ
    いつもの執務室とは違う、高い場所から夜空を見上げる。
    遠くでひゅるる、と音がしたあと心臓を叩かれたような衝撃とともに豪快な花が咲く。
    真っ暗だった部屋が花の明かりで色とりどりに輝く。それはとても一瞬でまた暗闇に戻るがまたひゅるる、と花の芽が音をなし、どんと花開く。
    「おお、綺麗だな」
    「悪くない」
    隣で一緒に胡座をかく大倶利伽羅は軽装だ。特に指定はしていなかったのだが、今夜一緒にどうだと言ったら渡したとき以来見ていなかったそれを着て来てくれた。
    普段の穏やかな表情がことさら緩んでいるようにも見える。
    横顔を眺めているとまたひゅる、どんと花の咲く音ときらきらと色があたりを染めては消える。
    大倶利伽羅の金色がそれを反射して瞳の中にも咲いたように見える。ああ。
    「綺麗だな」
    「そうだな、見事だ」
    夜空に視線を向けたままの大倶利伽羅がゆるりと口角を上げた。それもあるんだが、俺の心の中を占めたのは花火ではないんだけどな。
    「大倶利伽羅」
    「なんだ」
    呼び掛ければすっとこちらを見てくれる。
    ぶっきらぼうに聞こえる言葉よりも瞳のほうが雄弁だと気づいたのは付き合い始めてからだったかなと懐かしみながら、 843

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    菊酒をのんで酔い潰れた後日、大倶利伽羅が好きだなぁと自覚しなおした審神者と日を改めて飲み直し、仲良し()するまで。
    月色、金色、蜂蜜色


    急に熱さが和らいで、秋らしい涼やかな風が吹く。
    空には満月が浮かんで明るい夜だ。
    今は大倶利伽羅とふたり、自室の縁側で並んで酒をちびちびとなめている。徳利は一本しか用意しなかった。
    「あまり飲みすぎるなよ」
    「わかってるよ、昨日は運ばせて悪かったって」
    「あんたひとりを運ぶのは何でもないし、謝られるいわれもない」
    「じゃあなんだよ……」
    「昨日は生殺しだったんでね」
    言葉終わりに煽った酒を吹き出すかと思った。大倶利伽羅は気を付けろなんて言いながら徳利の酒を注いでくる。それを奪い取って大倶利伽羅の空いた杯にも酒を満たす。
    「……だから今日誘ったんだ」
    「しってる」
    静かな返答に頭をかいた。顔が熱い。
    以前に忙しいからと大倶利伽羅が望むのを遮って喧嘩紛いのことをした。それから時間が取れるようになったらと約束もしたがなかなか忙しが緩まずに秋になってしまった。
    だいぶ待たせてしまったとは思う。俺だってその間なにも感じなかったわけじゃないが、無理くり休暇を捻じ込むのも身体目的みたいで躊躇われた。
    そして昨日の、重陽の節句にと大倶利伽羅が作ってくれた酒が嬉しくて酔い潰れてし 1657