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    Lupinus

    @lupi_eggplant

    テキストを投げ込むスペース/主刀/ファンチェズ

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    Lupinus

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    DISCARD幻覚モブアンソロ(https://lit.link/mybossmyprecious240211)に寄稿したモブ(DISCARDの武器調達担当/表の顔はブロッサムの高級スポーツ用品店経営者)がルーク&アーロンのバディにクリティカルトークされる幻覚エピソードです。時間軸はM14以前のどこかです。

    モブアンソロおまけ 光バと遭遇するモブ「こ、これは……」
     セレブのためのスポーツショップと聞いて、扱う品物も乗馬とかヨットとか、自家用ヘリからのスカイダイビングとか……って、完全に僕が持ってるお金持ちのイメージなんだけど、そういうものが置いてあるのかと思ってた。
     実際に覗いてみたら、なじみ深いスポーツ関連のアイテムもたくさん並んでいた。ただし、お値段は僕がよく行くお店の百倍くらいだ。
    「すごいな、世の中にこんな商品が存在するなんて想像したこともなかった……見てくれアーロン、純金製のフライングディスクだって! 高級スポーツ用品店ってそういう意味だったのか」
    「は?」
     店に入ってからひとことも口を利かないアーロンは、それでも僕の指さした方向に視線を向けてはくれた。
     クッソ下らねえ、こんなとこにまともな情報なんざあるわけねえだろうが、さっさと出るぞ……そう顔に書いてあるけど、声に出さないでいてくれるのはありがたい。

     島の外から密輸された武器や物資がDISCARDに渡るルートを探り出すのが、今回の捜査の目的だ。
     ナデシコさんにもらった資料によれば、ここのショップは海外からの輸入品も多く扱っているらしい。店そのものに怪しいところがなくても、常連客や従業員から思わぬ手がかりが見つかるかもしれない。
    「んなもん純金にしてどうすんだか。
     だいたい金なんてのは、金属の中じゃ柔らかい上に重たい部類だろうが。飛ばして遊ぶ円盤なんかにゃ一番向いてねえよ」
     アーロンなりに真面目に考えてくれてたのか、意外とまともな突っ込みが飛び出した。
    「うーん、確かにそれはちょっと思ったな」
     資産運用のために純金そのものを手元に置きたいなら、わざわざフライングディスクの形にする必要はない。スポーツグッズとして使いたいなら、もっと適した素材がいくらでもある。
     まあ、明らかにスポーツ向けじゃない素材のグッズを扱ってても、この店が犯罪組織と繋がってる根拠にはならないけど……

    「そうなのです、やはり皆様そこが気になるとおっしゃるのですよ」
    「で、ですよね!」
     いきなり後ろから声をかけられたから、つられて勢いよく同意してしまった。
     振り向くと、すごく高そうなスーツがよく似合う中年男性が立っている。口ぶりからするとお店の関係者さんかな、どこかで見たような気がするぞ。
    「実はこちらは、当店が特別に発注した独占販売品でして。
     最新の特殊加工技術を応用し、純度百パーセントの金でありながら、きわめて高い硬度と軽量化を同時に実現しているのです」
    「そ、そうなんですか!?」
     しゃべっているうちに、どこで見た顔かを思い出す。捜査資料に写真のあったこの店のオーナーさんじゃないか。
     とはいうものの、いきなり突っ込んだ話なんてさすがにできない。
     この人が実際にDISCARDと関わっていれば警戒を深めてしまうし、無関係ならこっちが不審者だ。今の僕は国家警察官じゃないから、聞き方を間違えたら怪しまれてしまうかもしれない。
    「先日も、愛犬と遊ぶためにと親子連れのお客様がお買い求めになったばかりです。
     この島にいらっしゃる皆様は、本物だけが放つ輝きを理解できる目を持っておいでですからな」
    「は、はあ……」
     僕もスポーツは好きだけど、正直ちょっと手が届かないお値段だな。
     相づちを打ちながらそんなことを考えていたら、僕よりもっと高級スポーツ用品に縁がなさそうな相棒が割り込んできた。
    「ああ、聞いたことがあるぜ。しばらく前にどっかの国で実用化されて、去年一般企業向けに公開された技術だろ」
    「お、おお!? さ、さようでございます、さすが当店に足をお運び下さるだけあって実にお詳しい!
     まさにお客様のおっしゃるとおり、西の軍事大国で開発されたばかりの先端技術を採用しておりまして」
     ビリビリシャツの不良青年が最新テクノロジーに通じてるなんて思いもしなかったのか、オーナーさんは大げさに驚いてアーロンを絶賛する。そんな話、元国家警察官の僕だって知らなかったぞ。
    「戦争という愚行を繰り返す人類が、兵器開発の中で生み出した悲しき技術を、私どもは平和で健康的なスポーツのために活用しているのです。
     争いのない世界を叶えるための、ささやかながら大きな一歩ではありませんか」
     両手を広げたオーナーさんは、ブロッサムで有名なスシレストランの広告にそっくりだ。
    「たとえばミサイルの軌道解析システムを応用して開発された弾道計測器、スカットマンもその一例ですな」
     スカットマンと言えば世界中のプロゴルファーに愛用されている、ゴルフボールの軌道や回転を正確に分析できる計測装置だ。
    「なるほど! GPSなんかも、最初は軍事技術として開発されたんですよね」

     …………

     その後も最新技術の話をオーナーさんに聞かせてもらったり、目玉商品を見て回ったり……最終的には、MJモデルのゴールデンバスケットシューズを36回分割払いで購入しそうになった僕をアーロンがむりやり引きずり出して、この店での捜査は終了した。
     シューズは惜しかったけど、それよりも結局手がかりになる情報が掴めなかったことが反省点だよな、なんて思っていたら。
    「とんだ食わせ物だわ、あのオーナー。まあ、それがわかったのが収穫と言えるんじゃねえの」
     なんだか満足げな顔をしているアーロンに、気になってたことを聞いてみる。
    「……なあ。さっき君がした軍事技術の話って、もしかして全部口からでまかせだったのか?」
     途中からなんとなく、ありもしない機密情報ネタで鎌をかけたんじゃないかって気がしてたんだ。
     嘘だと見抜けないで乗ってくるようなら、彼が本当にスポーツショップのオーナーかどうかも疑わしくなってくる。警察官としては感心できない手法だけど、裏の世界での情報収集には役立ちそうだ。
     アーロンはちょっと考えてから首を横に振る。
    「いや、金を軍事利用する加工技術は数年前にジイス帝国が完成させてる。
     ただ一般公開はされちゃいねえし、スポーツ用品に活用できるような代物でもねえ。今のところは自国の兵器にしか使われてない最高機密事項だ」
    「え……?」
     ジイス帝国って言ったら、まさにさっきあの人が口走った西の軍事大国じゃないか。
     そんな世界トップクラスの機密が、いくら人気のハイブランドだとしても、ただのショップオーナーに入ってくるとは思えない。
    「それをあの人が知ってるってことは……」
    「もちろん、事情通ぶってとっさに口裏を合わせた可能性はある。
     だとしたらあの店自体がまるごとハリボテだな、純金のフライングディスクとやらも眉唾だろうよ」
    「確かにハリボテならそうかもしれないな。でも……」
     ひととおり見せてもらった商品は、どれもとんでもない値段に見合う高品質だった。エアガンなんて、元警察官の僕ですらびっくりするくらい本物そっくりだし。
     自信満々なだけあって、かなりの商品開発力を持ってるのは間違いない。それを可能にしているのが、民間企業にはあり得ないレベルの情報収集力だとしたら――

     どうやらアーロンも、同じ結論にたどり着いたらしい。
    「だが、もし本当に軍事技術が転用されてるってんなら……テメエの扱ってる商品のヤバさも知らねえ間抜けか、本物の機密を手に入れて私利私欲のために使える人間のどっちかだ」
    「そうだな。眉唾のほうがよかった、なんて言いたくはないけど」
     犯罪組織とは一番縁のなさそうなお店で、こんな手がかりが見つかることもあるんだな。


    ※両手を広げたモブのイメージは「すしざんまい ポーズ」で画像検索すると出てきます
    ※チェズレイやモクマさんがいると(意地悪or金欠で)絶対買ってくれないと判断するけどルークになら何か売りつけられそうな気がして店長みずから出てくるモブです
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