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    Siro_umimoto

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    Siro_umimoto

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    #小説
    novel

    墓地の夢商人 秋の薄曇りの午後、大学の裏手に広がる小道を今年一回生の北村涼が歩いていた。
    空は灰色に染まり、風は冷たく、木々のざわめきが耳に触れる。彼は一人だった。いや、未だ大学に友人がいない彼にとって、そうでない日などなかった。

    「別に帰ってもいいんだけどな……」

    自嘲気味に呟きながら、遠回りの道に入っていった。彼はよく遠回りをする。そのことについて、彼自身は特に理由のない行為だと思い込んでいるが、実際は自身を呼び止めてくれる誰かの存在に期待していたということは言うまでもない。
    ただ、自分がどこに向かっているのかは誰にも知られたくなかった。

    いつもの遠回りの道を涼が歩いていると、突き当たりの塀奥から、卒塔婆のようなものが見えていることに気がついた。
    さらに歩き進めていくと、見慣れない鉄柵に囲まれた小さな敷地を見つけた。どこか不釣り合いなほど古びた雰囲気を持ち、周囲の大学の近代的な建物と対照的であった。
    柵には「立ち入り禁止」と書かれたプレートがぶら下がっているが、文字はほとんど剥げ落ちて読めない。

    涼は足を止めた。

    「こんなところに墓地なんてあったか?」

    この辺りは何度か通ったことがある。しかし、この墓地の記憶はなかった。まるで、突然そこに現れたかのようだった。

    柵の隙間から中を覗くと、墓石がいくつか並んでいるのが見えた。その時、その中に一際目立つものがあった。
    黒い石でできた細長い石碑が、墓地の中央に立っている。それは何かを主張するかのように異様な存在感を放っていた。

    涼は無意識に柵を越え、中へと足を踏み入れていった。


    プロローグ1:+☼◎△✗◆
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。七夕を楽しむ二人と、夏の風物詩たちを詰め込んだお話です。神頼みができない人にも人事を超えた願いがあるのは良いですね。
    >前作:昔の話
    https://poipiku.com/271957/11735878.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    星渡 折からの長雨は梅雨を経て、尚も止まぬようであった。蒸し暑さが冷えて一安心、と思ったが、いよいよ寒いと慌てて質屋に冬布団を取り戻そうと人が押しかけたほどである。さては今年は凶作になりはすまいか、と一部が心配したのも無理からぬことだろう。てるてる坊主をいくつも吊るして、さながら大獄後のようだと背筋が凍るような狂歌が高札に掲げられたのは人心の荒廃を憂えずにはいられない。
     しかし夏至を越え、流石に日が伸びた後はいくらか空も笑顔を見せるようになった。夜が必ず明けるように、悩み苦しみというのはいつしか晴れるものだ。人の心はうつろいやすく、お役御免となったてるてる坊主を片付け、軒先に笹飾りを並べるなどする。揺らめく色とりどりの短冊に目を引かれ、福沢諭吉はついこの前までは同じ場所に菖蒲を飾っていたことを思い出した。つくづく時間が経つ早さは増水時の川の流れとは比べるまでもなく早い。寧ろ、歳を重ねるごとに勢いを増しているかのように感じられる。
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