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    sleepA_pple

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    sleepA_pple

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    趣味モリモリに詰め込んだ意味なしオチなし知力なしの七猪
    五出てくるけどからかってるだけでなんも関係ない
    ごめんね五

    #七猪

    「いってきまーす!」
     
    「はい。行ってらっしゃい」
     
     任務に行く猪野を、七海は玄関まで見送る。
     猪野の笑顔が扉の外に消えると、踵を返しベッドルームから昨夜の残骸……もとい衣類を拾う。そしてそれを洗濯機に入れるとスイッチを押した。
     全自動洗濯機は、洗濯物の量に合わせ洗剤の量を自動で入れると汚れを取るために動き出す。
     洗濯機を回している間に、部屋の掃除を始める。とはいうものの、そもそも七海と猪野はそこまで部屋を散らかさない。なので、軽く掃除機をかけるくらいにした。
     一通りかけ終わってもまだ回っている洗濯機を見て、七海はエプロンを付け朝使った食器を洗うためにキッチンへ行く。これもそこまで量は多くないので、直ぐに洗い終わった。
     さて、次は……と考えていると、脱衣場から洗濯機が終わった合図を送る。
     七海はランドリーバスケットに洗濯物を詰め込み、ベランダへ向かう。
     いつもは家に付いている乾燥機で洗濯物を干すが、丁寧な暮らしが好きな七海はオフの日は外で干すようにしていた。
     ベランダへ続く窓を開けると、気持ち良い風が頬を撫でる。ほぅ……と息を吐き、物干し竿に洗濯物を掛けていく。
     洗濯物は風にそよそよと揺られ、心做しか気持ちよさそうに見えた。
     ベランダから部屋に入ると、見計らったかのようにインターホンが鳴る。
     誰だろうと思いカメラに向かうと、そこにはサングラスをかけラフな格好の上司、五条悟がいた。
     
    『なーなみ!遊びに来たよ〜』
     
     ブツッ、と音声を切る。出なければよかったと後悔した。
     だが、それで諦める五条ではなく……
     
     ——ピンポーン
     
     今度は下のオートロックの自動ドアのインターホンではなく、部屋のインターホンが鳴らされた。
     眉を顰め、はぁ、とため息を吐くと渋々玄関を開ける。
     
    「何しに来たんですか」
     
    「えっ、人妻……?」
     
    「は?」
     
    「いやいや冗談だって。僕もオフで暇だったから遊びに来ちゃった」
     
    「はぁ〜〜……。特級呪術師のあなたが暇なわけないでしょう。また任務を人に任せたんですか?」
     
    「いやほんとに!ほんとになんもないんだって!繁忙期も過ぎたし、今は呪霊らしい呪霊の目撃情報もないし」
     
     だからといってなぜここに来るのか。どうせ何を言っても聞かないだろうと察した七海は黙ってリビングに向かう。
     
    「いや〜相変わらず綺麗な部屋ね。あれ?琢真は?」
     
    「任務です。二級呪詛師の捕縛。……あなたの元にも情報が入っているはずでは?」
     
    「あーあったねそんな感じの」
     
     特に気に留めるでもない反応に、本日何度目かのため息を吐いた。
     七海は今日のオフがオフにならない気配を察知し、諦めた。
     
    「てか七海、家だとエプロン付けんだね。地味に似合ってるし」
     
    「褒めてるんですかそれ」
     
    「褒めてる褒めてる。思わず人妻が出てきたかと」
     
    「褒めてませんよねそれ」
     
     七海は、一応というようにコーヒーと砂糖を出す。さすがに長年付き合っていると好みも分かるものだ。認めたくはないが。
     五条はそのコーヒーにたっぷりと砂糖を入れ、美味しそうに飲む。
     一口飲んだあとで、閉じることを知らないその口はまた開かれる。
     
    「まさか七海が恋人を作って、さらに同棲までするなんてね〜。後輩の成長に僕も誇らしいよ」
     
    「誇れるほど何もしてないでしょう。せいぜい高専時代に私と灰原を振り回したくらいですよ」
     
     一年の時、那覇空港の警護を任され、その上沖縄滞在の延長を聞かされた日を思い出す。
     七海の記憶に、今は亡き同級生の姿もあった。
     
    「あん時は仕方なかったんだって〜。ほら、僕あの頃から最強だったでしょ?やんないといけないことが山ほどあって」
     
     昔から変わらない横暴さに、高専時代の苦労の連続が過ぎる。
     同時に、『最強』と名乗るならなぜあの場に五条はいなかったのかと。灰原と七海が向かった、あの任務に……——。
     
    「……前から気になってたんだけどさ」
     
    「……なんですか」
     
    「お前、灰原のこと好きだったの?」
     
     ダイニングテーブルの斜め向かい。コーヒーを飲んで休憩をしていた七海の手が止まる。
     
    「……えぇ、好きでしたよ」
     
     その返事に、五条はサングラスからちらりと見える目を細めた。
     
    「じゃあ、灰原と重なった琢真をそばに置こうと?」
     
    「いえ、それは違います」
     
     今度は即答。七海は翠色の瞳を空のように青い瞳と合わせる。
     
    「灰原は友愛。猪野君は恋愛。まずその時点で違います。それに、猪野君は確かに灰原と同様明るく元気でうるさいですが、個々人は全然違うものです。重ねるというのは、灰原にとっても、猪野君にとっても失礼です」
     
     はっきりと返ってきた答えに、五条はククッと笑った。
     それに対し七海が眉間に皺を寄せると、五条は手を目の前に出す。
     
    「分かった。分かったよ。僕が悪かった。可愛い後輩に意地悪したくなっただけだよ」
     
    「……は?」
     
    「お前が灰原と琢真を重ねてないことなんてとっくに知ってるよ。ただ、この前僕に相談してきたからカマかけただけ」
     
     珍しく謝罪してきたかと思えば、意地悪をしただけ、カマをかけただけと。
     七海はとうとう頭が痛くなり、こめかみを指で押えた。
     
    「……猪野君はなんと?」
     
    「んー?あー、七海覚えてっかな。冥さんに写真を売りつけられそうになったの」
     
    「あぁ……はい」
     
    「あん時に琢真もいたじゃん?そんでさ、七海が灰原とのツーショットの写真を見てた時に、琢真曰くめちゃくちゃ愛おしそうな目をしてたんだって。で、本当は灰原が好きなんだけどこの世にはいないから似通った雰囲気の自分を傍に置いてるんじゃないかって。そんなことないんじゃない?って言ったんだけど全然聞いてくんなくてさ」
     
     絶対違う。と思った。
     五条の事だ。絶対さらに不安にさせるような事を言ったに違いない。
     でなければ、昨夜あんなに求めてきたりは、普段の猪野なら絶対にしない。
     
    「……なるほど。昨日の猪野君の涙はあなたが原因でしたか」
     
    「えっ」
     
    「あなた、猪野君に不安を煽るようなことを言ったでしょう。その後で、聞こえていないのを知っていながら『そんなことは無いんじゃない?』と言ったのでしょう?」
     
     まるで一部始終を見ていたかのように的確に状況を当てる七海に、五条は引きつった笑顔を向ける。
     七海は五条に苛立ちを覚えながら、猪野のメンタルケアをどうしようか思案していた。
     
     ——ピンポーン
     
     まだ話の途中だというのに、またインターホンが鳴る。
     この話はもう終わりで。あと猪野君に謝ってくださいね、と言い席を立つ。
     カメラを見ると、見るからに配達員の姿。
     
    「宅配便でーす」
     
    「はい。今開けます」
     
     七海はカメラ下のボタンを押す。しばらくすると、玄関の前に着いたのか再度インターホンが鳴った。
     
    「○○です。お荷物をお届け、に……」
     
     ダンボールを持った配達員が、言葉の途中で固まる。配達員は七海をまじまじと見ていた。
     
    (えっ……めっちゃ美人……ハーフ?ハーフか?てか見るからに人妻だよな?うわいいなぁこんな綺麗な人と暮らせるとか……あれ?後ろに誰か……)
     
     七海の整った容姿に見惚れていると、後ろから白髪の男が覗いているのが見えた。こちらも同様綺麗な容姿をしていて、配達員の中ではこの二人の結婚説が浮上した。
     何よりそれが濃厚になったのは……
     
     俺のになにか?
     
     と、五条が言った気がしたからだ——実際言っても思ってもいないが——。
     
    「あの……?」
     
    「あぁ、すみません!こ、こちら猪野琢真様のお荷物ですね!?サインお願いします!」
     
    「はぁ……。……はい。お疲れ様です」
     
    「あ、ありがとうございましたー!!」

     そそくさと去っていく配達員に、七海はなにかに気づき後ろを振り向く。
     
    「あなた、あの配達員のこと睨んだでしょう」
     
    「一応だよ、一応。琢真のためにね」
     
    「なぜここで猪野君が出てくるんです」
     
     五条は一瞬キョトンとしたあと、わざとらしくため息を吐き七海を指さす。
     
    「お前ね、自覚ないかも知んないけど、結構顔整ってんのよ。僕ほどじゃないけど。それに加えそのエプロン。男なら誰だって見るに決まってんじゃん」
     
     七海は怪訝な顔をし、ダンボールに目を移す。そこには、匿名ではあったが「ニット帽」と書かれた紙。恐らく猪野の実家だろう。身元が割れると色々まずい、と聞いた事がある。
     
    「……そうだとしても、それはとんだ物好きですね。どこからどう見てもいかつい男でしょうに」
     
    「いやー、今は多様性の時代だからね。男を綺麗と思うのも自由。好きと思うのも自由なんだよ」
     
    「はぁ……」
     
     七海は荷物を置きに、玄関を閉め室内に戻る。五条は相変わらず帰らないままだ。
     
    「ところで、あなたはいつ帰るんです?ここにいても何も出ませんよ」
     
    「いやぁ、もうちょっとで面白いことが起きるからさ」
     
     何をしようとしているのか。訝しげな視線を向ける七海を愉快そうに笑う。
     五条が壁にかかっている時計を指さす。それにならい七海も見ると、いつの間にか猪野が帰ってくる時間になっていた。
     
    「あなたが何をしようとしているかは分かりませんが、私は夕食の支度をするので邪魔しないで……っ!?」
     
     ドンッ、と腕を掴まれ壁に押し付けられる。壁に背を付いた七海の顔の横に、五条の手が付けられ、いわゆる壁ドン状態になっていた。
     流石の七海も、五条の力を振りほどくことは出来ず、少し上にある五条の顔を睨む。
     
    「……何のつもりです」
     
    「くくっ……いいねぇその顔。まぁまぁ、まだそのままで」
     
    「は?本当に……」
     
     ガチャ……と、タイミング悪く嫌な音が聞こえる。
     玄関を見ると、わなわなと震えて固まる猪野の姿。
     
    「なっ、なっ……!?」
     
    「あっ、琢真おかえりぃ〜」
     
    「猪野君、誤解しないでください。この人が勝手に始めたことです」
     
     二人の声が聞こえているのかいないのか、猪野の目にはうっすら涙の膜が張っている。
     
    「ひ……」
     
    「ひ?」
     
    「人妻を襲うなんて最低っすよ五条サン!!七海サンも!!浮気するならもっとバレないようにしてくださいよお!!!」
     
    「猪野君、何を言っているんですか」
     
    「ぶっ!あっはははは!!」
     
     猪野の取り乱し具合に、五条は壁ドン状態から解放し腹を抱えて笑う。
     七海はそんな五条に青筋を立てる。一体この状況のどこが面白いのか。
     肺の中の空気を一気に出すようにため息を落とすと、グズグズと玄関で泣いている猪野に近づく。
     
    「やっぱり歳下より歳上がいいんだぁ……」
     
    「年齢は関係ありません。私は猪野君だけが好きですよ」
     
    「でもそんな人妻みたいなカッコして……そうやって色んな人誘惑
    してたんでしょ!?」
     
    「本当に何を言っているんですか」
     
     先程から言われ続けているワードにいよいよ呆れすら出てくる。
     笑いから復活した五条は笑いすぎて出たであろう涙を拭いながら七海の後ろから口を挟む。
     
    「ひぃ〜笑った笑った。やっぱり琢真から見ても人妻じゃんその格好!こりゃ宅急便来た時に僕がいて良かったわ〜」
     
    「宅急便?」
     
     七海に涙を拭われながら、五条の発言に返す。
     
    「そうそう。今日お前宛に荷物来てさ、その配達員が七海見て固まってたのよ。しかも頬染めてさ。めっちゃウケるっしょ」
     
    「う……けないですよ!危なく寝取られるとこだったじゃん!」
     
    「だから僕が後ろから牽制したんでしょ〜?まぁ、七海ならあんな
    の一撃だろうけど」
     
    「なぜ私が襲われる前提なんです。はぁ……猪野君、とりあえずこの人は無視して着替えてきてください。その間に夕食の準備をしますので」
     
    「ん……あ、七海サン、ただいまっす!」
     
    「はい、おかえりなさい」
     
     まるで自然の流れのようにキスをする二人に、五条は肩を竦める。
     
    「お熱いねぇ二人とも。どうやら邪魔みたいだし僕は帰るね〜」
     
    「やっと気づいたんですか。帰るならさっさと帰ってください」
     
    「はいはい。じゃぁね〜。琢真、くれぐれも七海のことは気をつけなよ〜」
     
    「うす。お疲れ様でした」
     
     ようやく帰った五条に、七海は心底疲れたような顔をする。
     靴を脱いだ猪野は、そんな七海に正面から抱きつく。
     
    「……猪野君、着替えないと」
     
    「うん……そうなんすけど、もうちょっとこうしてたい……」
     
     甘えるような声に、堪らず抱きしめ返す。
     しばらくくっついていると、満足したのかいつもの笑顔で七海を見上げる。
     
    「七海サンになんともなくて良かったっす」
     
    「なんともありませんよ。君が心配するようなこともありません」
     
    「へへ、じゃあ、俺着替えてきまーす!」
     
    「はい。今日は君の好きなアジフライですから、楽しみにしていてくださいね」
     
    「えっ、マジすか!?やったー!」
     
     喜びながら自室に入っていく猪野に、軽く笑みがこぼれる。
     さて、とキッチンに向かい、予め捌かれている鯵をトレイに乗せる。
     表と裏に塩を振り、十分ほど置いている間にタルタルソースを作る。
     卵を茹で、その間に付け合せのキャベツを千切り、タルタルソースの玉ねぎをみじん切りにする。刻んだ玉ねぎを電子レンジに入れ一分ほど温め辛味を飛ばす。
     茹で上がった卵を潰し、温めた玉ねぎを加え、そこにマヨネーズ、酢、塩コショウ、砂糖、パセリを入れ混ぜ合わせる。これでタルタルソースは完成だ。
     味見をしていると、着替えを終えた猪野が出てくる。
     
    「今日は七海サン特製のタルタルソース?俺それ好きなんすよね」
     
    「そう言っていただけて光栄です。味見してみてください。君の口に合えばいいのですが」
     
     スプーンで掬ったタルタルソースを猪野の口に近づける。
     猪野は僅かに頬を染め、控えめに口を開く。口に広がるタルタルソースの味に、猪野は目を輝かせた。
     
    「うまっ!美味いっす!流石七海サン!」
     
    「大袈裟ですよ。材料と調味料を混ぜただけなのに」
     
    「そんなことないっす!あーお腹すいてきた。俺もなにか手伝います?」
     
    「いえ、疲れてるでしょうから座っていてください」
     
    「んー……じゃあお言葉に甘えて」
     
     ソファーに座ったのを確認すると、七海はアジフライの調理に取り掛かる。
     置いていた鯵の水分をキッチンペーパーで吸い取り、両面に薄力粉をまぶす。ボウルにバッター液の材料を入れ、別のトレイにパン粉を入れる。
     バッター液に鯵を浸し、パン粉を付ける。
     油を注いで熱していた鍋に、鯵を入れる。心地よい音が食欲をさらにそそる。
     中に火が通ったのを確認すると、キャベツとアジフライを盛り付け上にタルタルソースを乗っける。
     予約していたご飯も炊け、軽く味噌汁を作りダイニングテーブルへ持っていく。
     
    「猪野君、お待たせしました。ご飯出来ましたよ」
     
    「はーい!今日もありがとうございます!」
     
    「いえ、好きでやっているので」
     
    「へへ……愛されてるなぁ」
     
    「当たり前です。ほら、冷めますよ」
     
    「はーい!いただきまーす!」
     
    「いただきます」
     
     椅子に座り、七海もエプロンを外し二人で手を合わせる。照れたように笑う猪野に、思わず微笑む。
     猪野は早速アジフライを一口食べる。衣はサクッと、中はふんわり仕上がっているそれに、目を輝かせた。
     
    「ん〜〜っ!うんま〜〜!」
     
    「お気に召したなら良かったです」
     
     パクパクと休むことなく口を動かす猪野と、ゆっくりと食べ進める七海。二人の間には、幸せな時間が流れていた。
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