ミカンとコタツと浮かれ方「ひまだねえ……」
ミカンの白いすじを取りながら伊月がふと呟いた。一房ずつ丁寧にすじを取り切っては口へ運び、そうしてまた口へ運ぶ。いつの間にかミカンが一つなくなる。そうして彼はまたコタツの上に積まれた山から一つミカンを取る。それを彼は今朝起きてコタツに入ってからずっと繰り返している。
「あ、〇〇大学が一位になりそう」
「おー、ホントだ」
よく食う奴だなあと思って眺めてると、今度はテレビで流れている駅伝中継について話題を振られた。
「こんな寒いなかよくやるよねえ。僕は絶対無理だよ」
伊月はそう言うとコタツ布団に顔を埋める。部屋の中は充分暖かいが、布団の柔らかさが心地いいのだろう。子供のようなその姿が可愛らしく思えて、オレはコタツを設置して正解だったと心のなかで頷いた。
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