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    ritsuka_nora

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    ritsuka_nora

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    書き殴り。誤字があったらごめんなさい。

    スーパーマンって訳じゃ無いけど、空却は色々できる。家事全般、力仕事、音楽、子供の世話、お年寄りの話し相手。親父さんも、寺の人たちも、沢山経験させてはあいつに合うもの気に入るものをと見守ったんだろう。生きてくのに知恵は財産で、場所を取らないからと。
    「いち兄、波羅夷はイラスト要員になるのでしょうか?」
    「こいつパソコンとかタブレットとかも扱い上手いから!多分大丈夫!」
    「……???」
    「左馬刻はコーヒーでも飲んでろよ、死にそうなツラしてんぞ」
    別にコーヒーくらいいいだろ、一郎。巻き込み事故で拉致してしまった左馬刻は、巻き込んだだけだ。問題ないので頷くと空却が左馬刻をキッチンへ逃した。
    「話的に、依頼とかだよな?絵を描くの手伝えば良いのかァ?」
    「話が早くて助かる!タブレットに絵描くアプリ入ってるから頼む!」
    小学校の社会科見学のしおりを作成するのに、イラストを依頼されていた。ネットにあるライセンスフリーを使わないのは、教師陣がどうにかこうにか自力の絵や写真で子供たちを楽しませたいと奮闘したからだという。
    とは言え、自力作成するにも通常業務にイラストの仕事。描くのに慣れている人間ならまだしも。とキャパオーバーしそうな教師たちを見かねて、教頭先生が萬屋山田へ依頼をくれた。
    「風景とか、動物とか?得意な感じので進めてくれるか」
    「ちなみに一郎はどんなの描いてんだ?」
    俺はアニメもラノベも好き、手先も動く方だからがっつり人間描いている。空却は手元とパソコンの画面とを見ると複雑そうな、なんとも言い難い表情になった。
    「人間ってか、幼女か」
    小学校通うチビ達にはちょうどいいのか。悩み悩みしながら空却がタブレットを手にイラスト作成を始めた。オタクにもインドア趣味にも一定の理解がある空却は、クライアントの求めるクオリティを見極めるのも早い。
    「一郎、左馬刻もかなり絵上手いぜ?描かせねぇのか?」
    「左馬刻は」
    「…?」
    「俺の推し描いて欲しいから、依頼片付くまで待たせるんだよ」
    キッチンの方でコーヒーを飲む左馬刻が、それはそれはいやそうな顔をする。文句を言うと口喧嘩が始まって、依頼が終わらず、空却も帰れなくなると計算するからこそ無言なんだろう。疲れていて妙なこと言ってる自覚はあるけども。
    デートの邪魔して空却を掻っ攫おうとしたし。それに関しては悪かったが時間もない。
    「紙に描く以外も面白いもんだな!できた分保存すりゃ良いんだろ?」
    「空却、もしかしてできたのか?」
    「二、三枚描いたぜー。ヒャハハ、タブレットって便利だわ!」
    共有フォルダに入ったイラストを見ると、デフォルメされた可愛い猫、風景、とレベルが高い。迷いない線と、空却が描いたんだなとよくわかる個性のある絵だった。なんと言うか、こう、……あたたかみがある。
    「プロの方ですかね」
    「オタク語になってんぞ?」
    飽きた!と空却はタブレットを離してキッチンに行ってしまった。コーヒーも飲み終わった左馬刻の膝に乗ろうとして、左馬刻に止められている。自由だな。
    「手伝ってくれた礼に、イケブクロ商店街の肉屋でも使える商品券。すっげぇいっぱいもらったから空却にも」
    「学校からの依頼なんだよな?」
    「先生の中に、肉屋の娘さんいたんだよ」
    ご実家が店って教師は特に、こういったのくれたりした。依頼料もらってるから断ろうとしたけど、店の前通ったらポケットにねじ込まれたりもする。
    「ふーん…んじゃありがたく!左馬刻!肉屋!」
    「俺様は肉屋じゃねェんだわ…寄ってからヨコハマに帰るか」
    きっと空却のために左馬刻が良い肉を買ってやるんだろうな。文句を沢山言いたかっただろうに黙っていたし、タバコも我慢していたし。空却とのデートに早いとこ戻りたかったのかと、ちょっと感心すらする。
    「こっちでデータまとめるぜ。気をつけて帰れよー」
    帰っていく二人を見送り、自分の作業に戻る。あとは確認して教頭先生へ連絡だ。
    「いち兄…あの」
    出来上がったイラストを確認していた三郎が、なんだか歯切れ悪く話しかけてきた。
    どうかしたかと聞くと、フォルダを見てください、と。
    「……これ碧棺左馬刻ですよね」
    あの短時間で、こんなクオリティ高いイラスト描くお坊さんってなんなんですか。
    コーヒーカップを片手にぼんやりする左馬刻。ただそれだけの構図の、クソほどレベルの高いイラストが一番最後に描いてあった。色が綺麗塗り方が上手いとかそういうのもあるが、
    「誰も盗らないってのになぁ」
    イラストの横には、拙僧の!と殴り書きがあった。俺の親友は、今頃左馬刻に甘やかされてんのかな。
    「三郎、一番最後のは左馬刻の携帯に転送しといてな」
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