銀高ss③ふわ、と自分にしては大きな欠伸が出た。
「あらら高杉くん。今何の時間か分かってる?補習中だから。欠伸堂々としすぎだから。」
気が緩んだ姿を目撃した銀八はしっかりと絡んできた。今は絶賛足りない出席日数を補う為に放課後定期開催されている補習の時間だ。二人っきり、銀八に見つめられながらひたすらプリントに取り組んでいる。今日は体育があったせいか、いつもは感じない眠気に襲われてしまっていた。
「…ねむい。」
「なあに、そんなに今日ハードだったっけ?体育のせい?今バスケやってんだっけ。高杉くん高さが足りなくて大変だったでしょ。」
「帰る。」
「アーー!待って!!冗談冗談!」
腹立たしいので鞄を持って立ち上がると、焦った銀八に進路を阻まれる。じろりと睨みつけて仕方なく再度着席すれば、つかこれ、君の為の特別授業なんだけど……と銀八がぼやいた。ふん。
「じゃあ、眠い高杉くんにこれをあげよう。」
ころりと手に出されたのは、黄色の丸い粒。飴にしては小さい。タブレットか?
「それ食べて目ェ覚ましな。」
しげしげと見つめて一応変な所がないか確認してから口の中に放り込む。途端に、舌がぴりぴりして、唾液が口内に溢れ出した。
「……っ!」
すっぱい。かなり。
「ど?眠気飛んだでしょ。」
「…っ、てめ、」
口を押さえて酸味に悶える俺を見て、イタズラが成功した子供のような笑みで言った。
悔しい。むかつく。あと、すっぱい。
こぼれそうになる唾液を飲み込んで銀八を睨む。肩をすくめて、満足そうに笑われた。
「大成功!激すっぱレモンタブレットでした〜!」
「……けほ、」
未だ口の中に残る溶けきらないタブレットに、味覚を蝕まれる。にやにや笑う銀八に頭の回線が切れる音がした。我慢という名の線。
ぐい、と力任せに銀八の胸元を掴む。あっと驚いた顔が見えて、そのまま勢いで銀八に口付けてやる。
阿呆な男は滅多にしない此方からのキスに気をよくしたのか、直ぐに口を開く。
そして、小さくなったタブレットのカケラを送り込んでやった。
「!……っ!」
「ちゅ、ん、ふっ」
銀八も同様に酸味に襲われたようで、咄嗟に口を離そうとする動きをより舌を深くねじ込んで抑え込む。甘党にはなかなかの刺激の様で、ぎゅっと歪んだ顔にザマァ見ろと心の中で笑ってやった。
それから、酸味がしなくなるまで舌を絡め合って、不覚にも最後は腰が抜けてしまった。
あう、と力のない声をあげて、倒れ込みそうなところを銀八に抱き止められる。
全く、とんでもない子だなと笑う銀八は、どこか嬉しそうだった。