銀高ss「あり、どしたのそれ」
「また子がくれた。この前勉強教えたからだと。律儀な奴」
「ふーん」
高杉が見せたのは、片手に収まるサイズの、厚さ二センチくらいの平たい缶。アルミ素材のようで、コンコンと高杉は指でつついて音を楽しんでいる。
「中身なに?メモ帳?」
「飴って言ってた」
心なしか高揚した声音の高杉。
まさか、嬉しいの?
……クソ、プレゼントなら欲しいもの言ってくれればいつだって渡すのに。高杉を一つだって奪われたくないと騒ぐ狭い己の心を、大人の余裕でどうにか押し殺し、どうにか平素を装おうと努める。
「へー。お前アメなんか好きだったっけ。先生いっぱい持ってるよ〜ほらどれがいい?」
「そんな体に悪そうな色の飴いらん。」
「あーそ!ふん!」
「……?」
結局大人気ない声が出た。高杉は可愛く小首をかしげて見せて、再び目線を手元の缶へと移した。
よく見るとただのアルミ缶では無いようだ。
白地をベースに、シルバーで小さな花模様の小綺麗な装飾がされている。
随分洒落たものを貰ってきたなと関心していると、高杉が何やら苦い顔をした。
「……取れない」
「あ、シール?そういうのキレイに取れないよなあ。」
どうやら缶のウラ面に貼られているシールを剥がそうと苦心していたようだ。一気には剥がせなかったようで、幾度と爪を立てた痕跡がベタつきと共に残っている。
「まあいいじゃん。中身食ったら捨てるだろ?」
「捨てない」
「えっ」
「取っとく」
「ええ…?」
珍しい。高杉ってあんまりガチャガチャ物を持つタイプじゃないのに。ボンボンだから、良いものを長く、って感じで。
てか、まさか家に置いとく気?そんな、愛の巣に他人からのプレゼント置くなんて。再び生じた大人気なさに我ながら呆れた。
「なんでまた」
「……別に。帰ったら、キレイにする方法、調べるか」
シール剥がしを渋々諦めた高杉は、缶を開いて中身を眺めた。透明に透き通った小ぶりな飴。その一つを摘んで、口の中へ放り込む。
「美味しいすか……そりゃあよかったです……」
未だ新参のインテリアの存在を受け入れられず、明後日の方向に目をやる。ちえ。嬉しそうにしちゃってさ。
「ぎんぱち」
頬を飴の形に膨らませた高杉が言った。なあに、と口を開けば、なんと珍しく。高杉からの口づけを受ける。
え、と驚いていれば、コロンと何かおちてきて、口内にあまい味が広がる。
ぺろ、と俺の唇をひと舐めして、高杉が離れていった。
「あますぎ。」
べっと高杉が舌を出して、いたずらが成功した子供みたいに笑った。
思わず大して味わいもせず飴を飲み込んで、破裂しそうに喜ぶ単純な胸の内を今度はこちらから目の前のかわいい子にぶつけた。
「概念グッズ、って知ってますか?」
「なんだそれ」
「推しのイメージっぽい物を自分で探して持ち歩くんです。今流行ってて!このキーホルダーとか、そうなんですよ!」
「ふうん」