銀高ss運命を見つけた。
それは街中でヒートを起こしていて、たまたま居合わせた俺はその匂いに引き寄せられた。
突然ヒートのフェロモンをばら撒くオメガが現れて騒然とする人々。それをうるさいと思うくらいには頭は冷静で、狂っていた。うんめいのひと!はやくきて!と誘われるがままそのオメガに食らいついた。
「ただいま」
玄関を開けても返事はない。まあいつも通り。一つ違うのは、濃厚に自分を誘う甘いにおいが充満しているということ。
そういえばそろそろだったっけと他人事の様に思って、乱雑に靴を脱いだ。
わざとらしく音を立てて廊下を歩いてやる。お前を支配するものはここにいるぞ、と。さてどんな顔をしているか。内心わくわくした。
「ありゃ」
廊下とを繋ぐ扉を開ければ、そりゃあもう惨状が広がっていた。ハンガーに掛けたはずの洋服は床に落ちているし、しまったはずの冬物も引っ張り出されている。それらが乱雑に床に散らばっていて足の踏み場もない。
「巣作り失敗?」
ため息を大袈裟について、ベッドの端で蹲る存在に声を投げかける。
あの日うなじを噛んだ、番。まだ高校生だと知ったのは後からだっだ。でも別に問題はない。だってオメガはアルファの庇護下に置かれるのが望ましいから。年齢なんて関係ない。運命であるなら尚更。この世界のバース性の、特にオメガの扱いなんてそんなもんだ。
「ねえ」
返事はない。ただ己を抱きしめる様に蹲るその子は返事もしないし顔を上げもしない。
一向に進まない状況にいい加減焦れて、手を伸ばした。
「ねえってば」
「さわんな、っ!」
ばし、と手に衝撃が走る。イテテと手をさすって、フーッと威嚇する存在を見る。額に汗は滲んでるし、唇なんて噛みすぎて血が出ている。
「は、あっ」
体力を使い果たしてしまったのだろう、蹲っていたがベッドへ倒れ込んだ。
こうやって強情なのは別にいつもの事だ。まだまだ自分のオメガ性を受け入れられていない。だからヒートも、番なのに俺のことも拒絶する。こんな本能的なこと頭で考えても仕方ないのにね。さっさといい子になって身を委ねればいいのにと思いつつ、一応見守る姿勢を保っている。そんな、どうしようもない関係。
「つらくない?抱いたげようか」
「ぃ、やだっ、触るなっ、やめろっ」
「はぁ」
とは言っても、目の前で苦しそうにしている存在を放って置けるほど俺は非情ではないのだ。
仕方ない。少しフェロモンを食わせてやるかと、内側に意識を集中させた。ほら、いっしょにきもちよくなろう?
「ぁ、っ…」
「大丈夫、怖くないよ。」
やさしく、だいじに、してあげる。
ゆっくりとベッドに手をついて、震える体に触れていく。
「おれに、ぜんぶあずけて」
耳元に吹き込んでやる。狡いだろうか。でも、仕方ない。だって、この子おれのだから。
「は、いっ……」
とろん、と溶けた瞳がうまそうに見えた。