海、夕日、涙、笑み。 月島は、何十回目かの捜索に繰り出しながら、波の音を聞いていた。
五稜郭、機関車の中での戦闘から治療に数ヶ月、病床から起き出して、海に出るようになってから更に数ヶ月が経つ。鶴見中尉が海に沈んだと聞かされてからの時間間隔は酷く曖昧で、海に出るようになってからの日々の感覚はいっそう不透明だ。
治療の間は、痛みに耐えて過ごせば一日が終わっていったが、日常に放り出されてからはそれが酷く長い。どうやって一日を終えていたのだろうか。何かをしなければいけないという切迫感と、何をすれば良いのかわからない不安感で押し潰されそうになる。世界が変わると思っていた戦場は、いったいどこにいってしまったのだろう? 月島は無力感と焦燥感を抱えながら、今日も海へと出ていく。
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