甘い香りが漂う街角、楽しげに目当ての物を吟味する声、そして少し浮ついた空気。
少し前からその片鱗は感じていたが、街の雰囲気は完全にバレンタイン色に染まっていた。
バレンタインに対して、特に好き嫌いがある訳ではない。しかし甘い物に慣れていない自分からすると、これ迄の人生で興味を持った事は少なかった。
否、訂正しよう。殆ど無かった。
確かに学生時代チョコを贈られる事も有ったが、申し訳ない事にあまり記憶にも残っていない。
そのまま流れる様に就職した現職場でも、ファンからチョコを贈られない訳ではないが衛生面の心配から断りを入れるよう今年は通達された。
よって、バレンタインに接点を持つ事さえもこの人生で無かった訳で。
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