夕焼けの様な紅が辺りの境界線を染め上げていく。
逆光に照らされて、今自分がどんな顔をしているのかも分からない。
でも、
「君の事が好きなんだ」
やけに騒がしい音だけは理解出来た。
重たい瞼を上げると、そこには恨めしい程見た白い天井。
よく嗅ぎ慣れた消毒液の香りに悲しくも安堵を覚えつつ、周りを見渡す。
『…ぁ、』
側に居た彼の名を呼ぼうとするがどれだけ眠っていたのか、掠れた音が出る。
『!悠真、目が覚めたかい?何処か痛む所は?』
音にもなりきっていなかった言葉だが、彼には気付いて貰えたらしく、心配そうな碧の双眸が此方を見つめてくる。
質問に答えようと口を開くが先程の掠れた声を思い出す。
そうだ、何か水分を貰おう。そう要望を伝えるべく口をはくはくと開き、右手で喉を指差そうとする…が、右手が上がらない。
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