高杉と想いを伝えあった夜の坂田深夜二時、坂田銀時は応接間の机の上で突っ伏していた。その頬はほんのりと赤く、目はどこか遠くを見つめながらも潤んでいた。
それは三十路成人男性には似つかわしくないーーまるで恋をする思春期の少年少女のようなーー表情だった。
「……」
けれども、それを咎める者もからかう者もいない。
銀時はうっとりとした表情のまま壁を見つめていたかと思うとーー突然、バッと腕のなかに顔を埋めた。
「うう〜〜」
唸りながら、悶えるように足をばたつかせる。
脳裏に思い浮かぶのは、ある一人の男の顔だ。
高杉晋助。松下村塾に通っていた頃からの竹馬の友ーーというには、いささか因縁のある男だ。
「あいつ……俺のこと……好きって、言った」
もう何度も何度も、銀時は数時間前の出来事を反芻している。
ーー銀時。
ーー好きだ。
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、自分を見つめる熱い目がーーそれが男の本心であることを切に訴えていた。
ーー銀時。
ーー俺と、一緒に生きちゃくれねェか?
「ううう〜〜」
頭を抱えてガシガシと掻き回しながら、銀時は耳まで真っ赤に染め上げる。
「あいつが、あいつが俺のこと……、好きって言った」
もしここに第三者がいたならば、「この男はさっきから何度同じことを言えば、気が済むんだ?」と呆れたことだろう。
それほど、何度も何度も銀時は繰り返している。
何度も何度も思い返しては、顔がにやけるのを止められないでいる。
「ふふふ、あいつ……俺のこと好きなんだ」
机に顔を押しつけながら、嬉しそうに口元を緩め、銀時は
「ったく、あんな情けない顔しやがって。仕方のねぇ男……」
そう言って、また足をバタバタと振る。
「仕方がないのはお前だろ」と、ツッコミを入れる相手もいないまま、時計の秒針は深夜三時を指した。