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    jil85045373

    @jil85045373

    軽めのものもポンポンアップできる場所として。
    勢いで上げているので誤字とかあると思いますが、まとめるときに直します。

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    POIPOI 148

    jil85045373

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    高杉がポメ化して、なんやかんやします。

    高杉がポメ化した話(高銀)江戸中の野犬を率いた、黒い片目のポメラニアンがいるらしいーー。
    そんな噂がいま、歌舞伎町にまことしやかに囁かれている。
    ある者が言うには、その軍団は国家転覆を狙っているのだとか。また、ある者が言うには、その軍団は世界を壊そうとしているのだとか。
    一介のポメラニアンとは思えないほどの強力なカリスマ性で、凶暴な野犬たちを従え、人間たちに反旗を翻して江戸を火の海にしようとしているのだとか……。


    「ようやく見つけたぜ……高杉」
    坂田銀時は、廃墟と化したビルの一室へと足を踏み入れた。
    彼の視線の先にいるのは、黒い片目のポメラニアン。
    フワフワだったはずの毛並みに光沢はなく、残された片目には、憎しみと悲しみを必死に堪える色が宿っているようだった。
    「散々手間かけさせやがって……。お前なァ……」
    銀時が、すらりと木刀を引き抜きーーポメラニアンに向ける。
    「俺がちょっと、お前の誘いを断って常連と飲みに行ったり、仕事で家開けてお前の相手できなかったからって、ストレス溜めてポメ化しやがって!!自分最優先甘やかされワガママワンチャンかテメェは!」
    「バウッ!バウバウ!グルルルル!」
    「ポメラニアンがそんな低くて凶悪な声で吠えるな!普通に怖ェから!」
    「ギャウギャウ!グルルルル!」
    「怖い怖い怖い!だ……だいたい、文句や不満あるなら直接言えばいいだろうが!気を使ってんのか知らねェけど……そんな姿になるまでストレス溜めてたなんて……、そんなんで、ポメガバースなんてもんに、かかっちまうなんて……。くそ、この馬鹿野郎が!」
    ポメガバース。それは、疲れやストレス、寂しさなどの強い負の感情によって、ポメラニアン化してしまう現象だ。原因は未だ分かっていないが、天人が持ち込んだ流行り風邪のひとつだとされている。
    「来いよ、高杉。駄犬にはお仕置が必要だろ?」
    ポメ化が解ける条件は、ストレスや寂しさを解消することだ。とくに親しい相手に撫でてもらったり遊んでもらったりすることで、人間に戻るとされる。
    しかし、それは通常の場合だ。
    高杉と呼ばれたポメラニアンは歯をむき出しにして唸る。それは、まるで百獣の王ですら恐れ戦くような激しさだった。
    しかし、その目に浮かんでいるのは明らかな喜びだった。そのしっぽははち切れんばかりに、大きく振られている。
    「甘やかすなんて、俺たちの性似合わねェだろ?」
    「バウッ!」
    「行くぞ、高杉イイイイイ!」
    「ギャウギャウ」
    二匹の獣が咆哮し、激突する。
    片方は鋭い爪と牙を尖らせ、もう片方は木刀を携えてーー。
    互い凶悪な笑みを浮かべながら、獣たちは死闘乳くり合いを演じる。
    「グルルルッ」
    銀時の振るう木刀をひらりと避け、黒いポメラニアンはその顔面に爪を突き立てようと手を振りかざす。しかし、銀時もまた背を反らせてそれを躱す。
    「ギャウッ」
    攻撃が失敗したとみるや、黒いポメラニアンは素早く部屋の中を駆ける。その小さな体躯と機動力を活かした、相手を撹乱するかのような動きだ。
    並のものであれば、容易く狼狽して隙を見せただろう。
    木刀を握りながら、銀時はじっと神経を研ぎ澄ませる。
    どこから飛びかかってくるか分からない緊張感は、こちらに分が悪い。
    「ちっ!チビはちょこまかと動けていいな」
    銀時は足元に転がっていた瓦礫を、ポメラニアンへ蹴り飛ばした。ポメラニアンは素早く飛び退いて躱したが、それこそが銀時の思惑通りだった。
    ポメラニアンの着地点には、既に銀時の木刀が軌道を描いている。
    しかし、ポメラニアンはひるむどころか、正面から迎え撃つように、牙を剥いて跳び込んできた。
    「ギャルルル!キシャアアア!ギャオオオオウ!」
    「くそっ!声帯ジュラシックパークか、テメェは!ちっとはポメラニアンらしく可愛く鳴けねェのか」
    小さな体からは想像できないほどの迫力に、空気そのものが震えるようだった。
    ポメラニアンが銀時の木刀に、その小さな顎とは思えぬ力で食らいつく。銀時が勢いよく振っても振っても離れずに、その体をぶら下げたまま、銀時を睨みつけーー一瞬の隙をついて、その首元に飛びかかる。
    「っあぶねっ!」
    すんでのところでポメラニアンの体を振り払うも、その腕には深い爪痕が刻まれる。
    互いに間合いを詰めては離れ、呼吸を奪うようにせめぎ合い、爪と牙を重ね合う。
    そんな攻防戦を繰り広げながら、どれだけの次官が過ぎただろうか。
    気がつけばすでに日はどっぷりと暮れていた。
    夜の匂いが滲む空気の中で、一人と一匹は、すでに互いに力を使い果たしていた。妙な静けさのなか、汗を拭う衣擦れと、荒い息遣いの音だけが聞こえる。
    「あー、もう夕飯の時間じゃねェか」
    坂田が独りごちると、ポメラニアンはくるりと坂田に背を向ける。
    そして、「……バウッ」と一声鳴いた。
    それを聞いて、銀時は目をぱちくりと見開いた。
    「明日もまた来い……てか?」
    「……キャウン」
    そして去っていこうとする小さな毛玉をーー銀時は後ろから問答無用で抱え上げた。
    「いや、このままにしてたらお前めちゃくちゃ臭くなるぞ。とりあえず帰って風呂だ風呂」
    「ギャッフシュー!グルルルル」
    「お前なんで可愛くワンッて鳴けないわけ?」
    銀時はため駅を吐いてから、その背中をガシガシと撫でる。
    「いいから帰ってこいよ。喧嘩なんて……家でいくらでも付き合ってやるからよ」
    銀時の腕から逃げようともがいていたポメラニアンは、銀時の顔を見上げる。
    そして、その表情を見てーー大人しく「クゥン」と鳴いたのだった。


    「それで連れて帰って一週間!あいつ遊んでやっても遊んでやっても。全然満足してくれないんだけどこのポメ杉強欲過ぎない」
    ダァン!と銀時が机を叩いた。その衝撃にビリビリと手が痺れるが、構っている余裕はなかった。
    その隣では、件の黒いポメラニアンーーポメ杉がガジガジとステファンぬいぐるみを齧っては振り回している。
    「毎朝六時に起きて近所の公園まで散歩して、そこで九時までバトって!家に帰って朝飯食って、グースカ昼寝して!しかも、あいつドックフード食わないから、俺が手作りしてんだぞ!定春にだって作ってやったことないのに!昼飯前に起きてきたと思ったら足元まとわりついてくるから、仕方なく全身モミモミの刑に処してやって、満足したら昼飯食べて、庭を勝手に駆け回って!そのくせ夕方になるとまた散歩に連れて行けってうるさいから、また近所の公園まで行って、そこで六時くらいまでバトって!帰ったら一緒に風呂入ってドライヤーで乾かしてやって、モミモミモフモフの刑にして、夕飯食って、ドラマ観て、眠くなったら寝る生活!おいおい、いい身分だなぁ!お犬様がよぉ、こら!」
    「お前も十分モフモフを楽しんでいるではないか」
    「しかも、なんか知らねぇけどこいつの配下?だったそこら辺の野良犬たちがめちゃくちゃウチに来るんだけど!犬の集会場じゃねぇんだよ!ウチは!」
    「貴様ァァ!定春くんというものがありながら、ほかのモフモフたちともぷにぷに肉球プレイを……!破廉恥たぞ!羨まけしからん!」
    「どこのなににキレてんだテメェは」
    荒れ狂う銀時を前に、桂がさらに荒れ狂う。髪を振り乱し、刀を抜かんばかりの狂乱を前に、流石の銀時の顔も引き攣る。
    「おいおい、落ち着けって。犬なんかいいことねーよ?……ほら、なんだかんだバトルのときは全力だから、もう全身ボロボロだし。全身に噛み跡と引っ掻き傷だらけだし!」
    「それは、人間高杉のときもそうだっただろうが」
    「てか!問題はこいつだよ、コイツ!なんだよコイツ、俺が構ってやったら、すぐ戻るんじゃねェのかよ」
    「ふーむ」
    桂がポメ杉の体を抱き上げる。ふんわりとした毛並みの感覚に、桂の顔が恍惚となる。
    「ストレスの原因が違うのではないのか」
    「キシャアアア」
    「何だこの声は。本当にポメラニアンの喉なのか」
    「ゴロズ……」
    「高杉であることは間違いないな」
    手を噛まれながらも、桂はポメ杉の頭をグリグリと撫で回す。
    「モフモフのムニムニ……しかしその正体は高杉。複雑な気持ちだ。はやくなんとかしないと、俺がどうにかなってしまいそうだ」
    「お前がなるのかよ」
    「事態は深刻だ。このままではコイツに頬ずりをしてしまい、俺の尊厳が破壊される」
    「お前の尊厳なんて、とっくの昔にお前自身の手で壊れてるだろ」
    「欲求を満たさなければ、ポメ化は解けん。人の欲には限りがないが、わかりやすいもので言うと、人間には三大欲求がある。その内の二つーー食欲と睡眠欲は満たされていると見ていいだろう。ならば残るはひとつ」
    「お、おいおい!待てよ、流石にそれはーー」
    いくら正体が高杉とはいえ、犬ーーしかもポメラニアン相手になどーーそんなインモラルワンダフルなことは全年齢のここではできない。
    「そう、攘夷欲だ」
    「ねぇよ、そんなもん!」
    スパァンと桂の頭をはたく。それ以前の問題の頭のようだった。
    「何を言うか!ほら高杉も言っているぞ。黒い獣がのたうち回りながら攘夷したいと囁くポメ!江戸を焼き尽くしたいポメェ」
    「その裏声やめろ、腹立つ!」
    「ガルルルッ」
    ポメ杉に顔面をかじられながらも、どこか嬉しそうな桂に、銀時もポメ杉もドン引きする。
    「はあ」
    と、ため息を吐くと銀時は桂に齧りつくポメ杉の体を抱き上げて、膝の上に載せる。
    「なあ、高杉。もう戻ってくれねェのか?」
    頭を撫でると、耳がそっと伏せられる。それを愛おしく思う一方で、もどかしさが勝る。
    「チビだチビだとは言ってたけど、こんなにチビにならなくたって、いいじゃねぇか」
    「ギャウ」
    「そりゃ……いつも、ちゃんと言葉にはしてねェけど。でも、でもよ……」
    「ギャッ……?」
    「高杉……俺は」
    銀時がそっと、ポメ杉の背中に顔を埋める。
    「はやくテメェに、抱きしてめ貰いてーよ」

    「えー、次のニュースです。最近、江戸でポメ化する現象が流行っていますが、これがポメガバースとは異なる感染症であることがわかりました。イヌノアシオトチャッチャス星という異なる星から持ち込まれたウイルスであり、ストレスや寂しさとさ関係なくポメ化します。ちなみに、病院で注射を打つことで一晩で治ります」

    銀時、桂、ポメ杉が一斉にテレビに視線を向ける。
    次の瞬間には、ポメ杉は銀時の腹を足場代わりに蹴って、弾丸のように飛び出した。
    「ぐふっ!あ、おい!ポメ杉どこ行くつもりだ!」
    「病院だ!病院に行くつもりだぞ!一刻も早く銀時の涙を止めるために!」
    「泣いてねーし!てか、待て待て!お前は凶悪ポメラニアンとして指名手配されてるんだから!散歩するときも俺がどれだけ気を使ってるか……!待て!ハウス!お座り!」
    「ダメだ!今のやつは漆黒の弾丸!一刻も早く銀時の涙を止めるために、触れるものみな貫く凶弾だ!」
    「なんで二回言っただから、待て!高杉!病院連れてってやるから、ケース入れ!待てえええ高杉イイイ!」

    噂によれば、しばらく姿を見かけなかった万事屋の旦那の連れが戻ってきたらしい。どこかで拾ってきたのか、白いポメラニアンを抱いてよく散歩しているという。
    その代わり、今度は万事屋本人の姿を見かけなくなったようだが、それはまた別の話である。
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