大学生高銀で高校時代の制服コスプレエッチ(前半)「あんまりジロジロ見るなよ。なんか恥ずかしいじゃん」
ベッドの上で、銀時が恥ずかしそうに身じろいだ。
上品なキャメルのブレザージャケットにチェックのズボン。首元は無地のネイビーのネクタイがきっちりと締められている。
所在なげにジャケットの裾を弄る姿を食い入るように見ている高杉は、色つきのシャツに学ランを羽織っている。
「とりあえず、写真撮らせろ」
「……俺も撮る」
そう言って互いにスマホでパシャパシャと撮る。
ちなみに二人は今年で二十一歳。大学三年生である。
事の発端は、三日前に遡る。
銀時と高杉は幼なじみの恋人同士であり、実家暮らしだった銀時が、一人暮らし中の高杉の家に転がり込んだことで、目下プチ同棲を謳歌している最中であった。
幼なじみといっても、高杉は小学校卒業と同時に高杉が引越してしまい、まだ幼いふたりが連絡を取り合う手段もなく、ただ「今思えば、あいつが初恋の相手だったのかもなぁ」とお互いに切なく思いを馳せていた相手と、大学で再会したのは、偶然だったのか運命だったのか。
それから紆余曲折を経て、交際をはじめたのが一年ほど前になる。
銀時の養父はそれはもう過保護な男で、すでに成人男性であるはずの銀時を目に入れても痛くないというほど可愛がり、女子中学生のごとく厳しい門限に無駄外泊禁止の命を下していた。
それについにキレて反旗を翻した銀時との一悶着、高杉に酔わされてラブホテルに連れ込まれて一晩無断外泊したことでの二悶着から、それはもう壮絶な色々があったのだが、本筋から離れるため割愛する。
ともかく、高杉が銀時の養父が営んでいた学習塾の元教え子だったこともあり、彼の熱心な口説きが実を結び、養父こと松陽は泣きながらお赤飯を炊き、愛息子を見送ったのであった。
こうして、なんとかプチ同棲を許された銀時であったが、定期的に養父から来る
「銀時がいなくて寂しくて死んでしまいます。晋助だけ独り占めしてずるい。兎は寂しいと死んでしまうんです。このままでは君たちの寝床に突撃してしまうかもしれません。いえ、いやらしい意図はありません。いや、私とて婚前交渉という考えが昨今では時代遅れであることは重々承知しています。しかしですね、可愛い可愛い我が子がですね、こう責任を取る気もない輩に遊ばれてしまうというのは親としては、地球を破壊してでも……。いえ、晋助がしっかりとした真面目ないい子であることは知っていますよ。彼だからこそ、私も許したんですから。ところで銀時、晋助はちゃんとゴムはつけてくれていますか?まさか、親の目がないからって、無闇にみだらな生活を送ったりしたりしていませんよね?」
という養父からの寂しい兎コールを受け、銀時は一ヶ月に一回の頻度で実家に帰る生活を送っていたのだった。
長くなったが、銀時がこうした理由で電車で三駅のところにある実家に帰る前日のことである。
二人で夕飯をとりながら、なんとなくテレビをつけ、アイドル主演の学園モノのドラマを流し見しているときだった。
「そういえば、俺。高校の時ブレザーだったんだよね」
もうとっくに高校を卒業しているはずのアイドルが、制服を来て熱演する姿を見ながら、銀時がぽろりと呟く。
そう呟いたことに深い意味はなかった。しかし、自分を見詰める高杉のぽかんとした顔に、銀時はむっと眉をひそめる。
「あー、似合わねぇって思ってんだろ。これでも三年間これ着て過ごしてたんだぞ」
そう言って銀時が机の上に置いていたスマホを弄ると、一枚の写真を見せた。
そこには今より幼い銀時が、やけに品の良さそうなキャメル色のブレザーを来て、卒業式と書かれた看板の前で養父に熱い抱擁を受けている写真だった。
「おい、聞いてねぇぞ」
「いや、そりゃ初めて言ったけど」
「……今度、着て見せろよ」
「え?」
「先生のことだ。どうせ制服取って置いてるだろ。明日取ってこい」
「え、なに?なんなの急に」
銀時は戸惑いを浮かべる。
なんの因果の星の元に生まれたのか、銀時の養父も大概であるが、恋人も負けていない。
高杉は単純に嫉妬していた。自分が知らない銀時の姿があることに。自分が知らない姿を、ほかの誰かが見たことがあるということに。
狭量ではあるものの、ただそれだけで、高杉に深い意図があるわけではなかった。
しかし、銀時はなぜかもじもじと顔を赤らめている。
「……それって」
「銀時?」
「それって……制服着てコスプレえっちしたいってこと……?」
「……!」
そういうつもりで言ったわけではなかった。
しかし、脳内には瞬時にさきほど見せられた制服を着た銀時のあられもないが映し出される。
無言を肯定と受け取った銀時は「このムッツリ野郎。だったらテメェも着てこいよ」と、言うとぷいっと顔を背けた。
真っ赤に染った耳を見つめながら、ムッツリはお前だろ。という言葉は当然飲み込み、高杉は年末にもろくに帰らない実家に電話して、学生時代の制服を送ってもらったのである。