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    jil85045373

    @jil85045373

    軽めのものもポンポンアップできる場所として。
    使い勝手がよさそうならベッターのもこっちに移行するかも……?

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    jil85045373

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    みずきゅヤクザのフォロワーに、スケブのお礼に書いたものです。
    今更冬眠ネタ……です。

    なんか、
    春は「山笑う」
    夏は「山滴る」
    秋は「山装う」
    冬は「山眠る」
    と言うらしくて、綺麗だなと思って使いました。

    山眠り、笑うまで(蛟九)九尾は霜を踏み鳴らしながら、眠りはじめた山の頂に向かっていた。
    少し早い粉雪が肩にかかるのを払い、白い息を吐きながら、九尾はひたすらに足を進める。
    ザクリザクリと地面を踏みしめながら、人の手が入っていない木立の間を縫って行けば、やがて冷たく翠色に澄んだ、山頂の火口湖が見えた。
    その湖の中央に、美しい男が浮いていた。
    その光景はまるでひとつの切り取られた芸術品のようでもあった。
    男は目を閉じ、眠っているようでも死んでいるようでもあった。
    否、腰から下に伸びる鱗なければ、死人にしか見えなかったであろう。
    「蛟」
    そう呼びかけると、男はゆっくりと瞼を開き、顔を倒してその翡翠の目に九尾を映した。
    その口元が綻んだかと思うと、湖が小波を起こし、男の体がふわりと宙に舞う。
    瞬きの間に、男の体は九尾の目の前にあった。
    九尾の冷えた手を包み込み、はぁと息を吹きかけた。
    「冷てェ。寒さに弱いくせに、手袋はどうしあ?」
    「慌てて忘れちまったんだよ。……でも、間に合ってよかった」
    「俺ァ……今年はもう、来ねェのかと思ったぜ」
    「悪かったよ。お登勢のババアがちょっと腰をやっまってさ。ギリギリまで手伝ってたんだ」
    しおらしく耳を垂れさせる九尾に、男ーー蛟は仕方なさがないという様子で眉を開き、その白い頭を抱きしめた。
    「ん……。そのしょぼくれた顔に免じて許してやるよ」
    「偉そうに」
    どちらかともなく、唇を触れ合わせるだけ口付けをする。
    触れ合ったところが熱く溶け、二人の境界線を曖昧にさせていくようだった。
    唇を重ね合いながら、蛟の瞼が再びゆっくりと降りていく。
    「眠い?」
    そう問いかければ、蛟はむずがる幼子のように頭を九尾の胸に擦り付けた。
    「まだ、眠くねェ」
    「そうだな。あと、もう少しだけ……」
    九尾もまた、名残惜しそうに蛟の額に頬を寄せる。
    九つの尾をそっと蛟の体に絡ませて、包み込むように体を寄せて息を深く吸うと、濃い水の香りがした。
    「浮気すんじゃねェぞ」
    「するかよ、バカ」
    「テメェは変なのに好かれやすいからな。俺ァ心配だよ」
    蛟がもう一度、九尾に唇を合わせる。今度は長い舌が九尾の口の中に忍び混んだ。
    「ん……」
    九尾は目を細めて微笑みながら、その舌を受け入れる。
    いやらしく、しかし優しく口内の粘膜を這う感覚に、もどかしそうに声を漏らす。
    浅く息継ぎをしながら、口の中を愛し合う。
    蛟の背に回された手が、切なそうにシワを深く刻んだ。
    「もう、そろそろ……」
    「うん」
    唇を離し、その白い顎を伝う唾液を舐めとると、蛟は笑ってから九尾の耳を愛おしそうに撫でた。
    「少しだけ……待って、ろ」
    そう言う蛟の声は掠れ、すでに意識は朦朧としていた。それでも九尾を離すまいと、もうほのんど力の残っていない手で、その体を抱きしめる。
    「愛してる」
    「うん」
    蛟が完全に目を閉じ、その体から力が抜ける。それを慌てて抱きとめると、九尾はその額に今年最後の口付けをする。
    「おやすみ。よい夢を」
    九尾はそっと蛟の体を抱き上げ、湖の中に戻す。
    その体は静かに水面に受け入れられ、ゆっくりとその体が湖の底に沈んでいく。
    その姿が完全に見えなくなると、湖が中央からと薄氷を張りはじめる。
    やがて湖が氷によって完全に閉ざされたのを見届けると、九尾は湖に背を向けた。
    「この山は俺には少し静かすぎる」
    冬がますます深まっていく気配に、九尾はハァと白い息を吐く。
    そして一度だけ振り返り、
    「山笑う頃に、また来るよ」
    と言って、九尾は寂しそうに耳を垂れさせながら、そっと山を後にした。
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