高杉がちゅーで誤魔化す話(督白)高杉の嫌いなところは星の数ほどあるけれど、最近とくにムカつくところがひとつある。
なにかあったら、すぐにキスして黙らせようとしてくるところだ。
喧嘩しそうになったときとか、自分の都合が悪くなったときとか、とにかくそういうときにキスしてくる。キスをすれば俺が大人しくなると思ってるところが、なにより腹が立つ。
呆れちまうだろ?あのスカした顔の鬼兵隊総督高杉晋助が、こんな小狡い手を使わないと俺を黙らせられないだなんて、とんだお笑い草だ。
少しだけ困ったように眉を下げて、さっきまで釣り上げていた目尻を情けなく下ろして。俺の腰を抱いて、キスしてくるんだ。
ムカつく。腹立つ。
そんなんなら、まだ手やら足やら出たほうがいい。罵倒して、殴りあっていたほうがずっとマシだ。
だいたい、なんだよキスって。
お、俺たちが最近……つ、付き合いはじめたからって!
調子乗り過ぎだろうが!
調子乗り杉か
俺はキスひとつで絆されるような、そんな安い男じゃない。残念だったな、高杉。バーカチービアーホ。
「……て感じなんだけど?」
一通りそうまくし立ててから、隣に座る銀時はちらりと俺を横目で睨んだ。
俺はため息をひとつついて、その肩を掴んで体を正面に向けさせる。
ピクリと銀時の肩が小さく跳ねた。その表情を見て、俺はもうひとつつきそうになったため息を飲み込む。
確かに、キスで誤魔化していると言われればその通りだ。
だが、そもそもの話としてーー。
キスしてほしいとーーそう、顔に書いてある男がなにを言っているのか。
ムカつく、腹立つ。
俺は怒った。
キスでもして、俺のご機嫌をとれ。
そう言外に「今すぐキスをしろ」とねだっているのは、どこのどいつだ。
だいたい、そういうときの喧嘩は本当にくだらないことだ。
たとえば、おやつ取り合ったときとか、どっちが多くの敵を倒したか勝負で揉めたときとか。朝ごはんの卵焼きがどっちが大きかったかとか。
そういうことで喧嘩して、仲直りはしたいが収まりがつかない銀時が、わざと怒ってるという顔を作って擦り寄ってくるのだ。
だから、キスしてやればたちまち機嫌を直しつつも、あくまで仕方ないというていで、にやけた口元をへの字に曲げる。
めんどくさい男だ。
タチが悪い。
だが、可愛いところでもある。
「そいつは悪かったな、銀時」
そうして、俺はまた銀時の唇にキスをした。