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    tenni_idol

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    tenni_idol

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    社会見学にされてた雑利
    なんかもう色々ガバガバですが書けたので上げちゃいます🥲

    ある日、学園長先生に呼ばれ忍術学園を訪れた利吉。
    学園長先生の部屋には茶飲み友達である雑渡昆奈門も。
    学園長先生は挨拶もそこそこに、頼まれごとがあると利吉に迫る。
    その鬼気迫る様に二つ返事で了承をしてしまった。
    学園長先生からはペアで臨む必要があると言われ、隣で茶を啜る雑渡を見てぽんと握り拳で手のひらを叩く。

    「雑渡さんがこの場にいらっしゃるのは雑渡さんと組むということでしょうか?」

    軍師騒動では三人がかりでかかっても手も足も出なかった。
    この人と組んで仕事ができたならどれだけの学びを得られるだろうか。

    「いや?雑渡殿とは茶を飲んでいただけじゃよ」

    ずるっと大きく体勢を崩す利吉。
    雑渡は茶を一口啜ると口を開いた。

    「ペアで臨む必要があるのであれば手伝おう。君とは一度組んでみたいと思っていたところだ」
    「雑渡さんにそう言っていただけるなんて光栄です。ぜひお願いしたいのですが…学園長先生、頼み事はなんですか?」

    「ラブラブカップルとして茶屋に潜入し正直レビューとリサーチをしてほしい!」
    「「…は?」」

    ガールフレンドの楓ちゃんと新しくできた茶屋に行こうと思っているが、その茶屋はカップル特別サービスを行なっているそうで甘味は美味しいかも含め事前リサーチをしてほしいとのことだった。

    雑渡とラブラブカップル…?と一瞬気が遠くなったが学園長先生の頼みとあらば引き受けよう。
    だが、雑渡をこんなことに付き合わせていいのだろうか。
    あまりにあんまりな依頼に渋い顔をした雑渡が口を開いた。

    「利吉くん、いつ動ける?」
    「はぇ?」

    依頼を断らない雑渡に思わず気の抜けた声が出る。

    「君に女装してもらう必要がある。準備期間はあった方がいいよね」
    「…いいんですか?こんなことに付き合わせてしまって」

    雑渡はチラッと学園長先生の方を見る。

    「些細なことでも恩は売っておこうと思ってね」
    「なるほど。一日いただければ問題ありません」
    「決まりじゃな!では頼んだぞ!」

    ───というわけで、雑渡と利吉はラブラブカップルに扮して件の茶屋へ向かうことになった。
    茶屋のある町の路地裏で落ち合ってから向かう手筈になっているのだが…。

    「あ、利吉さんが路地裏に入って行ったよ」
    「あの路地裏暗くてジメジメしていてナメクジさんたちが喜びそうっ」

    町に来てから聞き覚えのある声が度々聞こえてくる。
    ひとまず聞かなかったことにして、待ち合わせ場所の路地裏で女装へと早着替え。
    鏡で細かい箇所をチェックしていると雑渡も到着した。

    「待たせてしまってすまないね」
    「先ほど来たばかりなので大丈夫ですよ、貴方」

    袖で口元を隠し可愛らしくくすっと笑ってみせる。

    「綺麗だね」
    「!…ありがとうございます」

    こと女装に関しては父親である伝蔵にいつも貶されるため、手練れの同業者から褒められるのは素直に嬉しい。

    「それじゃあ行こうか」

    路地裏は狭く並んで出ることはできないためまず利吉から先に出る。

    「あれ?利吉さんじゃなくて綺麗なお姉さんが出てきたよ」
    「いや、あれは利吉さんの女装姿だ」
    「利吉さんの後ろに誰かいるよっ。あれはもしかして…明後日はさっと粉もんさん!?」
    「雑渡昆奈門さんだ!流石に無理があるだろう!」

    思わず振り返ってつっこんでしまい、目に手を当てて天を仰ぐ。
    そう、利吉が町に入ってからというもの忍術学園一年は組のよい子たちが町の子どもたちを装って散らばっておりずっと利吉の動向を追っていたのだ。

    「わ、利吉さんにばれちゃった!」
    「どうしよう〜」
    「利吉さん、見なかったことにしてもらえませんかあ?」

    慌てふためくよい子たちに呆れる利吉。
    そもそも何をしていたのかと問いただそうとしたところ、父である伝蔵と同僚の半助が降り立った。

    「お前たち…ちゃんと隠密に動く実践も兼ねた社会見学だと言っただろう」
    「利吉くんと雑渡さんの邪魔にならないようにと言ったのに大きな声で話していたらだめだろう?」
    「は?社会見学?」

    利吉の口元がひくりと歪む。
    雑渡の方を見たが首を横に振っているので彼も何も知らないようだ。

    「学園長先生から聞いてないのか?」
    「「なにも」」

    伝蔵と半助は顔を見合わせてため息を吐いた。

    「利吉と雑渡殿が組むなんて滅多にないから勉強になるんじゃないかと学園長先生から提案されましてな。まあ女装で言えば儂の方がずっと勉強になるが」

    余計な一言を言う父をギロっと睨み、続いて雑渡の方を困ったように見上げる。

    「私は構わないよ」
    「はあ、雑渡さんが良いのであれば…そもそも私たちが頼まれたのは学園長先生がデートで使いたい茶屋の事前リサーチですよ?」
    「え、そうなの」
    「茶屋!?」

    再び伝蔵と半助が顔を見合わせると先ほどよりも深いため息を吐いた。
    しんベヱは茶屋という言葉に反応し、口からよだれを垂らしている。

    「カップル特別サービスがある茶屋に利吉くんとラブラブカップルに扮して潜入です」
    「「………」」

    淡々と答える雑渡になんとも言えない表情をする伝蔵。

    「…プロの変装と芝居を身近で見るという経験だということで」
    「忍者の仕事も多種多様ですからね…」
    「山田先生、土井先生〜僕たちも茶屋に入りましょうよ〜」

    というわけで雑渡・利吉扮する夫婦よい子たちはその様を見学することに。

    「気を取り直して行きましょうか」
    「ああ」

    雑渡がぐいと利吉の腰を引き寄せる。

    「夫婦だとわかりやすく見せた方がいいだろう」
    「そうですね。やりすぎなぐらいでいきましょう」

    引き寄せられたことにより、自然と雑渡の方に体が寄りかかり普段より身長が低く見えていることだろう。
    加えて雑渡が大きいおかげで身長を誤魔化すために屈んだり膝を折る必要もない。
    側から見ればぴったりと寄り添う仲睦まじい夫婦だ。
    親子にも見られる年齢差があるので大袈裟なほどラブラブカップルとして振る舞うことにした。

    「利吉さんと雑渡さん本当の夫婦みたいだね」
    「ね、お似合いかも」

    近くで遊ぶ子どもの振りをしていた三治郎と兵太夫のくすくす笑う声が聞こえ、利吉はなんだか恥ずかしくなってしまった。

    (調子狂うなあ…)

    目的の茶屋に到着すると、男女ペアの客が二組ほど。
    見ていると恥ずかしくなるほど仲睦まじい様子た。
    伝蔵が学園長先生に請求することにしたようで、一年は組の面々もお団子を買ってもらえるようだ。

    「いらっしゃい。ご注文はどうされます?」
    「饅頭を二つと団子一本」
    「かしこまりました」

    メニューは至ってシンプル、饅頭と団子の二種。
    雑渡が注文を伝えると店員がこちらをじっと見てきた。

    「私たちカップルですっ♡ねっ、鈍奈門さんっ♡」

    利吉が雑渡の胸に手を添えて食い気味に答え、雑渡が利吉の肩を抱く。

    「ああ、そうなんですね!うちではカップルやご夫婦でお越しいただいたお客さんには特別なサービスを提供していましてね。店内で一番お熱いカップルは飲食代タダにしております!」
    「タダァ!?」

    きり丸がタダの言葉に大きく反応する。

    「他にもプレゼントを用意してますので存分に見せつけてくださいね!」

    店員はにこやかに告げて去っていった。

    「タダなら俺も女装して入ればよかったぁ」
    「きりちゃんたら…」

    そんなきり丸の嘆きはさておき、学園長先生の命を遂行するならばこの中で一番お熱いカップルに見られる必要がある。
    身内がいる利吉は大変やりづらいが妥協はできない。
    そう思っているとふわっと体が浮き、目線が高くなる。
    なんと雑渡が自身の膝の上に利吉を座らせたのだ。

    「やるなら徹底的に」

    驚いた利吉の耳元で囁く雑渡。
    利吉はニヤッと笑い負けじと雑渡の首に手を回した。

    「利子は羽のように軽いね。できるとこならいつもこうしてお前を抱いていられたら良いのだが」
    「鈍奈門さんたら…ふふいつも家ではこうだものね」

    首に回していた手を雑渡の両頬に添えうっとりと見つめ、頬に口付けを落とす振りをした。
    は組のよい子たちはきゃーっと顔を赤くして沸いている。

    「はい、おまちどうさん。お二人さん熱いですねえ」

    甘味を持ってきた店員が冷やかしてきたのをにこっと二人で笑って応える。

    「おや、お嬢さんの方のお茶がもう空だ。おかわりを持ってきますね」
    「あらありがとうございます」
    「利子、饅頭からいただこうか」

    そう饅頭に手を伸ばした雑渡の手を利吉が制した。
    利吉は饅頭を手に取ると雑渡に食べさせてやる。

    「鈍奈門さん、私が食べさせてあげるから私から手を離しちゃいや ♡」
    「すまないね。ほら、利子も食べなさい」

    雑渡は利吉の腰に手を戻した。
    利吉も饅頭を食べてみるが味は至って普通。
    団子も食べてみるかと更に手を伸ばしたところで、今度は雑渡に止められた。

    「利子」

    雑渡は口元の布を手で少し避けるとおもむろに顔を近付けてきた。

    (そこまでやるのか!?)

    口吸いをされるのかと思いきゅっと目を瞑る。
    すると、口の端に触れるか触れないかくらいの距離に雑渡の唇が来たかと思えばそのまま離れていった。

    「饅頭の食べこぼしがついていたから取ったよ。それにこうしていると口吸いしているようにも見えるんじゃないかと思ってね」

    は組のよい子たちが再びきゃーっと沸く。
    雑渡の口元の布で互いの口元が隠れるためたしかにそう見えそうだ。

    (食べこぼし…童か私は)

    かあっと顔が赤くなる。
    誤魔化すように話題を無理矢理切り替えた。

    「…店内でここまでやってるのは私たちぐらいですしさっさとラブラブカップルに認定されたいですね」
    「か〜っ!こりゃもう文句のつけようもないくらいにラブラブカップルだ!」

    お茶のおかわりを持ってきた店員が二人の様子を見て大仰に照れて見せる。

    「あんたたちが1番のラブラブカップル!お代金はタダです!お食事後にプレゼントもお渡しするので声を掛けてくださいねっ」

    店員は利吉の分のみならず雑渡の分も新しい茶を置いて去って行った。
    よかった、ここまでやって駄目だったらどうしようかと思った。
    あまりの恥ずかしさに喉がカラカラだ。
    持ってきてもらった茶に口をつける。

    「!」

    味に僅かな違和感がありすぐ口を離した。
    利吉は茶を置いて雑渡の耳元に口を寄せる。

    「雑渡さん、この茶おそらく毒が入っています」
    「何?念のため団子は食べるのをよそう。利吉くん平気か」
    「毒には強いので大丈夫です」

    店員個人なのか店ごとなのか分からないがよからぬことを企んでいるに違いない。
    店員の目を盗んで茶と団子を捨て、利吉は矢羽音で伝蔵と半助にも茶の毒のことを伝える。

    「そういえばプレゼントがあると言っていましたね。声を掛けてきます」

    利吉は雑渡の膝から降りて店員の元へ向かう。

    「おや、お食事はお済みですか?」
    「ええ。それでプレゼントっていうのは…」
    「ご案内しますのでこちらに」

    店員はぐいと利吉の腕を引っ張り店裏まで連れて行ってしまう。

    「え、ちょっと!」

    伝蔵と半助が連れて行かれる利吉を目にし飛びかかろうと足を踏み込んだところで雑渡が制する。
    店の中には他の客もおり、子どもたちもいるため伝蔵と半助にはそちらを見ていてほしいと伝え利吉の元へ向かった。
    一方店裏に連れて行かれた利吉は両手を取られガッと壁に押し付けられる。

    「離して…」

    怯えて震える振りをする利吉に店員はニヤニヤと下卑た笑いを向けてくる。

    「本当に綺麗な面してるねえ。あんたを連れていけば依頼人も大層喜ぶだろう。タダにした饅頭が何倍にもなって返ってくるから俺もハッピーだ」

    「何を……っ」

    突如、利吉は大きくぐらつき、がくっと首が下を向く。

    「う…」
    「たかが饅頭をタダにしてもらうためだけにあんな阿呆なことして本当に愉快だったよ。あんたはな、これから助平なお偉いさんの元に売り飛ばされるんだよ。男の方は体力がありそうだし奴隷にでもしよう」
    「へえ、全部喋ってくれてどうも助かるよ」

    店員の背後からぬっと腕が伸びてきたかと思えば、その腕が首を締め上げる。
    利吉を捕らえていた腕の力が弱まりするりと抜け出す。
    声を上げる間もなく雑渡に締め上げられ意識を失った店員はどさりと地面に伏し、利吉は懐から取り出した縄で縛り上げた。

    「あんな三文芝居に騙されてくれるとは」

    毒の摂取はほとんどしていないので適当な芝居を打っただけで利吉自身はなんともなかった。
    と、店の中からドスンバタンと物音が聞こえる。
    雑渡と二人、表に戻ると伝蔵と半助が店主と店内にいた男女の客たちを締めていた。
    逃げようとしていた店主もは組のよい子たちで取り囲み見事捕縛。

    「中の客も仲間だ。人攫いのためのハリボテの店だったようだな」
    「阿呆薬がありました。おそらくこれを茶に混ぜて客を方々に飛ばしていたんでしょう」
    「学園長先生に報告せねばな」

    半刻後、茶屋から戻った利吉と雑渡、伝蔵、半助は学園長先生に事の顛末を報告した。
    学園長先生は顎に手をやり渋い顔をしている。

    「学園長先生はもしやこのことをご存知だったのでは?だから私と雑渡さんを向かわせたんですよね」

    利吉はずいと学園長先生に迫る。

    「お、おおそうじゃよ!利吉くんにはわかってしまったか」
    「そうですよね!でなければあんな頼み事をわざわざ私と雑渡さんにしませんよね」

    ほっほっほっと誤魔化すように笑う学園長先生に、絶対違う…と眉を顰める伝蔵と半助であった。

    学園長先生の部屋を後にし、職員室で一息つく
    「雑渡殿、利吉が世話になりました。あの子たちの良い勉強にもなりましたし」
    「雑渡さんと利吉くんの姿から学んでくれたと思います」

    伝蔵と半助は雑渡へ頭を下げた。

    「お力になれたならなにより」
    「ところで…ちいとばかし利吉に触りすぎだったんじゃないですかね」
    「え」
    「そうですね、雑渡さんほどの人ならあんなにがっしり抱き込んだり膝に乗せなくてもラブラブカップルを演じられますよね。振りとはいえ利吉くんも口吸いまでしちゃって…」
    「雑渡殿からもされていましたな、口吸いの振り」
    「あそこまで接近しなくてもいいんじゃないですかね」

    「「くどくど…くどくど…」」

    利吉は気恥ずかしくて伝蔵や半助の様子を見ることはなかったが、利吉の食べこぼしを取ったとき雑渡はこの二人が一瞬凄まじい表情をして殺気立ったのを見ていた。
    気のせいということにしていたが気のせいでは
    この保護者たちの前で利吉と仲の良い様子を見せるのは絶対にやめよう。
    小言が止まらない二人を前にうんざりと目を閉じた。
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