満点の星が散らばった夜空が蓋をした、閑散とした市街地。
寝静まった街に月明かりが降り注いでいる。
暗闇がわだかまるアパートの一室。
カーテンの僅かな隙間から差し込んだ灯りによって、暗い室内の輪郭が薄っすらと浮かび上がっている。
押しやったように傾いた家具、床に転がった雑貨、砕けて散らばった小物。
そこには争った形跡が見て取れた。
部屋の奥へと細く伸びる青白い月光の先で、黒々とした塊が横たわっている。
それは仰向けに四肢を投げ出した、ヒトの形をした肉の塊。
ぱっくりと割られた頭部は柘榴を思わせる。
頭蓋は砕かれ中身を晒し、開かれた箇所から血液が垂れ流れ、赤黒い水溜まりが床を汚していく。
狭い室内には鉄錆の臭いが充満していた。
その傍らに座り込み、完全に沈黙した肉塊を虚ろな瞳で見下ろしている姿がある。
赤く濡れた小さな手。
その手に握られた金槌も、赤く濡れ汚れている。
冷えた暗闇の中、静かに顔を上げる。
返り血を浴びたその顔には、笑顔が浮かんでいた。