高校野球あいかね 甲子園出場がかかった決勝戦。9回裏2アウト、天気はあいにくの雨。
マウンド上にはエースの金城。ここまで投げ抜いてきた疲れか雨の影響か、僅かに手元が狂う。コントロールミスを相手バッターは見逃さず、打ったボールはレフト方向へ。
「愛染!」
ボールの行方を追って振り向いた金城が叫んだ。
ライン際、ファールになるかもしれない。もしフェアでも、2アウトからのシングルヒットだ。金城は次のアウトを確実に取るだろう。怪我だって怖いし、無理する必要もない。そう思うのに、気づいたら、愛染の足は勝手に動き出していて。
「ああもう!」
前髪が濡れるのも、顔やユニホームが汚れるのも、大嫌いだけど。愛染は地面を蹴って、目一杯左腕を伸ばす。
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