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    mizuo_315

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    【BwM0226】
    Twitter再録のバレンタインあいかね小話。
    全年齢向け。

    V.D 風呂から出てリビングに戻ってみると、ソファには水色頭。そしてテーブルの上には水色の袋が乗っていた。
    「ただいま」
    「おう」
    冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、愛染の反対側に座る。風呂上がりの身体は水分を欲していて、一気に半分ほどを飲み干してしまった。
     ふーっ、と息を吐いたオレに、愛染は「オジサンみたいだよ」なんて言いやがった。うるせぇ、お前の方がオレより一つオジサンだろうが。そう思って軽く睨んでやったけれど、愛染は妙に機嫌が良さそうにニコニコしている。気持ち悪いヤツだなおい。
    「はいこれ、剛士の分」
    怪訝な顔のオレにはお構いなしに、愛染はテーブル上の袋をこっちへと押しやってくる。誕生日でもないのに、一体何だというのか。さっぱり意図が分からない。
    「……何だ、コレ」
    「え、剛士まさか、バレンタイン知らないの?」
    「うるせぇ!知らないわけねえだろ!」
    馬鹿にしたような言い方に、つい声を荒げて言い返す。……あ?ちょっと待て、今バレンタインって言ったか?
    「バレンタインって、女が男にチョコ渡す日じゃなかったか?」
    いくら興味が無いといっても、オレだってそれくらいの常識はある。男のコイツが男のオレに渡すのはおかしいのではないだろうか。
    「今時、男とか女とか関係ないでしょ」
    そう言われればそうかもしれないが、呆れたような顔をするので、そういう態度はやっぱりちょっと腹立たしい。
    「まあとにかく、剛士でも嫌いじゃなさそうなヤツだから」
    オレの目の前に移動してきた紙袋をあらためて眺める。小さいけれどもしっかりとした作りと光沢感。書かれているブランド名は知らないけれど、きっと高級なものなのだろう。
     袋から小箱を取り出すと、微かにチョコレートの香りがした。箱の表面にも、凝った飾りが施されている。
    「コーヒー、淹れてくる」
    愛染がじっと見ていることに居心地の悪さを感じて、オレは席を立った。



     コーヒーメーカーの音だけが響く空間は、沈黙を際立たせる。
    「お前も何か飲むか?」
    「ううん、いらない」
    たった一往復で、会話も途切れてしまう。それ以上話すことなんて思いつかないまま、熱いコーヒーの入ったマグカップを持ってソファへと戻った。
     いつもならあれこれ鬱陶しく話しかけてくる愛染は、スマホをいじっているけれど、ちらちらと視線をオレに向けているのがわかる。チョコレートの感想を聞きたいのだろうということは、想像がついた。
     繊細な作りの箱を乱暴に開けるのは躊躇われて、丁寧にシールを剥がす。蓋を開けてみると、甘みの少なそうな色のチョコレートが入っていた。一つつまんで、口に運ぶ。思った通りの、ビターチョコレート。そのまま齧ったら、カリ、と固い食感。これはアーモンドだろうか。
    「……うまい」
    小さく呟くと、スマホから顔を上げた愛染は、嬉しそうに笑った。
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