大きなマロニエの樹冠から、やわらかな光がきらきらと揺れて差し込んでくる。エグザベは眩しさに目を細めながら、自分の手を引く彼女の後ろ姿を見つめていた。
昼下がりの風に揺れる、透明感のある濃いグレーの髪。その上で跳ねるように戯れる木漏れ日の粒。彼女の髪を飾る光と影のコントラストに目を奪われて――気づけば、足が止まっていた。
「……エグザベくん?」
立ち止まったエグザベに気づき、コモリはくるりと振り返った。彼女の動きに合わせて、ゆったりした白いカーディガンの裾がふわりと風に舞う。
見慣れた制服姿とは一線を画する、甘く柔和な姿。脳裏に浮かんだのは――童話の挿絵から抜け出した、光の中の姫君。
降り注ぐ光をまとう姿は、目がくらむほどまばゆい。小首を傾げる仕草も、彼女の可憐さを際立たせている。短く刈られた足元の芝生すら、彼女のために用意された舞台のように思えてくる。
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