八本と二本腕の恋「まさかこんなに反響があるとは、タコでも人魚は人魚ということですかね」
忙しさに目を回し、這々の体でなんとか本日の業務をこなした新入社員のマリガンは、ほとほと恨めしそうにぼやいた。ここ数日はこの市営水族館はじまって以来の大盛況で、カンコー鳥と親友だった当館の職員はこの凄まじいほどの来客の数に誰もが慄き、困惑した。シャア館長の指示のもとどうにか業務を回しているが、キャパオーバーしている事実は覆らず、心無い客からのクレームに心労を重ねる職員も増えてきた。マリガンもその一人で、良かれと思った行動が客の顰蹙を買ってしまい、酷いクレームを受けてしまっていた。そのせいだろう、声色はトゲが生え揃い、イガグリの如く触れがたい感情を帯びている。
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