秘密の欠片 あれは学園祭の前準備だったと記憶している。
数日後に迫った本番に向けて、男子生徒だけで学校に泊まり込んだことがあった。どうしても模擬店の設営が間に合わず、昼夜を惜しまず作業をするほか手は残っていなかった。
生徒の自主性を尊重して欲しいだとか学生の楽しみを奪うなだとかそれっぽい言い訳を並べれば、校長許可はすんなりと下りた。
「――どうしてこの僕が教室で寝なきゃならんのだ」
「…な~んて文句言いつつもしっかりパジャマを用意しとるじゃないか」
「ふん、うるさい。僕はこのパジャマがないと寝られんのだ」
「へえ、そうなのぉ」
人を小馬鹿にすることにかけては天才的な力を発揮するあたるが、含みのある言い方で笑う。よせば良いのに、面堂くんってガキっぽいのね、などと続けざまにからかうものだから、予想通り面堂が刀を振り回して怒り出した。
3367