Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    はじめ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐈 🐾 💍 💐
    POIPOI 95

    はじめ

    ☆quiet follow

    面あた&コ
    ※コ視点
    ※BDとは別軸

    コは視野が広いイメージがあるので、二人の関係に気付いてそう。なんだかんだと良き理解者になって欲しい。

    同窓会でしっぽりする大人面あたとリンクしてます。
    https://twitter.com/ysursay/status/1558990701211238401?t=J8xScArFYVF2cuufMzfhDQ&s=19

    #面あた
    face

    秘密の欠片 あれは学園祭の前準備だったと記憶している。
     数日後に迫った本番に向けて、男子生徒だけで学校に泊まり込んだことがあった。どうしても模擬店の設営が間に合わず、昼夜を惜しまず作業をするほか手は残っていなかった。
     生徒の自主性を尊重して欲しいだとか学生の楽しみを奪うなだとかそれっぽい言い訳を並べれば、校長許可はすんなりと下りた。

    「――どうしてこの僕が教室で寝なきゃならんのだ」
    「…な~んて文句言いつつもしっかりパジャマを用意しとるじゃないか」
    「ふん、うるさい。僕はこのパジャマがないと寝られんのだ」
    「へえ、そうなのぉ」
     人を小馬鹿にすることにかけては天才的な力を発揮するあたるが、含みのある言い方で笑う。よせば良いのに、面堂くんってガキっぽいのね、などと続けざまにからかうものだから、予想通り面堂が刀を振り回して怒り出した。
    「そこに直れ諸星! 今日こそ成敗してやる!」
    「望むところだ」
    「…お前らなあ、夜更けに喧嘩し出すんじゃねえよ」
     相変わらずうるさいやつらだ。教室の中央を陣取って刀を振りかざしたり白刃取りをするもんだから、すでに布団で丸まっているクラスメイトたちが辟易とした表情を浮かべていた。
    「おい、あたる。あんま騒ぐと温泉マークのやつが飛んでくるぞ」
     校長から条件として出された消灯時間はもうとっくに過ぎていた。あの教師のことだから、深夜に何度か見回りに来るだろうと予想はしている。起きているところを目撃されて、補習だのなんだのと言いつけられるのだけはなんとしてでも回避したい。
    「俺だって寝たいわい! お前からも面堂に言ってやってくれよ」
    「はあ、たく、世話の焼けるやつらだぜ。なあ面堂もう良いだろぉ。あたるのやつをぶっ飛ばすのは明日でさぁ」
     早く寝ようぜ、明日も朝から準備だぞ。あたると面堂の肩を交互にぽんぽんと叩き、二人の顔の目の前でパンと両手を叩く。一時休戦の合図だ。喧嘩を終えるタイミングを探していたのだろう、二人の肩から力が抜けたのを確認してから、教室をぐるりと見回した。電気をすべて消すと面堂が煩くて寝られたもんじゃないので、教室の四隅には簡易式のライトが置かれていた。
    「…あっれぇ、布団がねえじゃねえか」
     教室の後ろにはクラスメイト分の机と椅子がまとめられていた。床には雑魚寝をするように布団が敷き詰められている。薄いカーテンからは月明かりが零れ、オレンジ色に輝く満月が空の高い位置に浮かんでいた。
    「は? 布団がない?」
    「ああ、お前らが喧嘩おっぱじめるからよ、その間にぜ~んぶ取られちゃった。…あ、あそこに残ってるわ」
     布団と布団の隙間をケンケンをするようにすり抜け―まあ、二年四組の連中は逞しいやつらしかいないので、少々踏ん付けても問題はないだろう―、教壇の奥に乱雑に置かれた布団を抱え上げた。
    「なんじゃ、ちゃ~んとあるじゃないか」
    「かろうじてって感じだな。さあて、俺らもとっとと寝ちまおうぜ。――って、あれ? 二組しかない………」
     ただでさえ薄っぺらい布団だというのに、人数分にも満たないとは。あたると面堂がまったく同じタイミングで顔を顰めるので、場違いにも笑ってしまった。こいつらは、へんなところで息が合う。
    「は? ちゃんと数えたか?」
    「ああ、もう一度いくぞ? …一組、二組…だろぉ、やっぱ二人分しかない」
    「ということは、三人のうち誰かが布団なしということか?」
    「馬鹿言え、普通に考えれば二人で寝るやつがいるってことだろぉ。はあ、最悪だぜ」
     貧乏くじ引いちまったな、と軽口を叩きつつも、さすがに笑えない。案の定面堂が「男と寝るなんて絶対に嫌だ」とそれはそれは駄々を捏ねるので、宥めるのに躍起になった。
    「面堂静かにしろよ。いつ温泉マークがやってくるのか分からない状況なんだぞ」
    「うるさい、うるさい。とにかく僕は、絶対に一人で寝る」
    「…ああ、もう埒があかん…」
     一方のあたるは「じゃあこの布団、面堂に売ってやる」などとふてぶてしくも商売をし始める始末。貧乏くじ引いたのは俺だけかよ。
    「はあ? なんで僕が貴様に金を払わなならんのじゃ」
    「だって、一人で寝たいんだろ? 良いぞ、売ってやる」
    「あほ言え。この布団は学校の備品だろ? 貴様に金を払う筋合いはない」
     そもそもお前は二人で寝ても良いと言うのか。もっともなことを面堂が聞けば、あたるが「男と寝るのは嫌だが、まあコースケとなら良いぞ」と平然と言ってのけた。
    「へ?」
    「ああ、俺も、男と寝る趣味はないが、まあ、あたるとだったら良いかな」
    「は? え? お、おまえら…な、なにを」
     男と寝る、なんて言い方をしたが、これは言葉の綾というやつで。あたるだったら気心は知れているし、大柄でないこともポイントが高かった。相手が温泉マークや藤波の父だったら、問答無用で拒否一択だ。
     そうと決まれば話は早い。睡眠時間を削られるよりは、とっとと寝てしまった方が得策だった。まるで手品のようにものの数秒で布団を二組敷いたあたるが、あくびをしながらそのうちの端っこに横たわる。
    「…はよ寝るぞ」
     すでにあたるは眠そうだった。舌足らずな声で呼ばれたので、背中を合わせるようにして寝転ぶ。ちょうど面堂を見上げるかっこうになった。
    「面堂も早く寝たらどうだ?」
    「そうだそうだ、はよ寝ろ。あ、面堂、明日昼飯奢れよ」
    「は? なんで、僕が………」
     面堂がぐっと拳を握る。視界の端に認めた面堂の白い手首に血管が浮かんだ。大きな瞳が一瞬だけ獰猛に震える。
    「…おい」
     貴様ら正気か、と唸るように面堂が呟いた。相手が僕だったらどうしたのだ、とも、消え入る声で。それはそれはさびしそうな顔に、コースケは気付くのだった。
     あ、こいつ、あたるのことが好きなのか、と。

     二年四組の同窓会は、面堂グループが経営するホテルのレストランで開かれた。
     高校時代から何かと人をもてなすこと―財力をひけらかすと言い変えても良い―が好きだった面堂のおかげで、新年会やら忘年会やら別荘でのパーティーやら、年相応に見合わない豪勢な楽しみを享受することが出来た。この点では面堂に感謝もしている。
     あの頃よりも成長した体と心。すべてが成熟したなどと殊勝なことは思わないが、いくぶん大人になった。黒塗りのトレーにいくつかのシャンパンを乗せたボーイが前を近くを通りかかったときに、ひとつくれよと声を掛けた。
    「かしこまりました」
     柔和に笑ったボーイが軽くお辞儀をした際に、隣のテーブルで肩を並べるあたると面堂の姿を捉えた。笑えるほど広い会場というのに、そんな近くにいなくたって良いのに。相変わらず、よく分からん距離感で一緒にいる。
    「――なあ、面堂」
    「――ん?」
     盗み聞きするつもりは更々なかったが、高校時代からの友人として、彼らの行く末は知りたいと思った。これは興味か、はたまた親心か。シャンパンを飲むふりをして耳を澄ませれば、部屋は取ってないのか、などと咄嗟に耳を疑うような会話が漏れ聞こえてきたので、予想以上の発展具合にさすがに面食らった。耳打ちしたりされたり、シャツの裾をひっぱたり肩に顎を乗せたり、案外甘めのスキンシップにシャンパンがいくつあっても足りない。ほんのりとピンクに染まるあたるの耳先を穴が空くほど見つめる。
    「………あいつら、なんだかんだうまくやってたんだな」
     ほどなくして席を立った二人が、こっそりと会場から消えていく。音もなく閉じられた重厚な扉を眺めつつ、人知れずため息をつく。
    「あ~んなに、一緒の布団に寝るのを嫌がっとったくせに」
     呆れとほんの少しの祝福を綯い交ぜにしたようなため息が漏れた。ボーイにお代わりを頼んでから、どの席にちょっかいを掛けにいこうかしばし迷う。
     そういえば、あの年の学園祭は成功に終わった。学園祭そのものも、そのあとの打ち上げも馬鹿みたいに大笑いしたし、しんそこ楽しかったと記憶している。ただひとつ、心残りがあるとそれば、学校に泊まったあの日の夜だ。
    ――相手が僕だったらどうしたのだ。
     あの日、あの夜、あたるはすでに寝ていたのだろうか。数年経ったいまでも、聞けずにいる。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖👏❤☺😭😍🙏💴💞💘💖💖💖💖💖🍷🍷🍷☺☺😭👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    はじめ

    DOODLE面あた
    名前を呼べばすっ飛んで来る関係。

    あたるくんの「面堂のばっきゃろーっ」を受けて0.1秒ですっ飛んでくる面堂くんも、呼べばすぐに来るって分かってる確信犯なあたるくんも大好きです。
    恋より淡い 校庭の木々の葉はすっかり落ちて、いかにも「冬が来ました」という様相をしていた。重く沈んだ厚ぼったい雲は今にも雪が降り出しそうで、頬を撫でる空気はひどく冷たい。
     期末テストを終えたあとの終業式までを待つ期間というのは、すぐそこまでやってきている冬休みに気を取られ、心がそわそわして落ち着かなかった。
    「――なに見てるんだ?」
     教室の窓から校庭を見下ろしていると、後ろから声を掛けられた。振り向かなくても声で誰か分かった。べつに、と一言短く言ってあしらうも、あたるにのしかかるコースケは意に介さない。
    「…あ、面堂のやつじゃねえか」
     校庭の中央には見える面堂の姿を目敏く捉え、やたらと姿勢の良いぴんと伸びた清潔な背中を顎でしゃくる。誰と話してるんだ、などと独り言を呟きつつ、あたるの肩にのしかかるようにして窓の桟に手を掛けている。そのまま窓の外の方へと身を乗り出すので危なっかしいたらありゃしなかったが、落ちたら落ちたときだ。
    1680

    recommended works