そんなことを言われたら 広く長い黒色の廊下を渡る。角を曲がると室内がひときわ明るくなって無名は目を細めた。右手には窓が連なって、そこから朝陽が白く差し込んでいる。
窓辺に寄ると薄い水色の空が映り、鳥たちがじゃれ合うように飛び交う。足を止めて外を眺めていた。
「おい」
ぼんやり漏れる陽の光を浴びていると背後から声をかけられた。振り返ると見慣れた男がひとり。
夏侯惇だ。
「孟徳が呼んでいる。部屋に来いと」
……曹操が?
思い当たることなど無い。首をかしげると、夏侯惇は「ふっ」と笑う夏侯惇と目が合った。
「先日任された反乱軍の鎮圧の件かもな。急な任務だったが難なくこなしたと聞いた。褒美でも貰えるんじゃないか?」
ああ、そういえば確かにいきなりの任務だったな、と口元に指を当てて思い返す。
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