「会宮さん」
「ん? ああ、名取か」
いつも通りに妖と人が入り混じり賑やかな会合の場で、ふいに声をかけられて振り返った先にいたのは名取であった。彼と会うのは先日の箱崎邸以来となる。
「この間は残念だったな」
せっかく良いものが手に入りそうだと名取も誘ったのだが、結局秘密の部屋の入り口は見つけられず、噂によれば式の手で全てが燃やされてしまって、あの的場一門ですら何も得られなかったのだという。強引に裏口を開いたとも聞いたので、それが式の不興を買ったのかもしれない。力のある一門とはいえ、そのやり方にはいつも冷や汗をかいてしまう。
「いえ。誘っていただいてありがとうございました。こちらはお礼です」
そう言いながら名取は菓子折りと符を一揃い渡してきた。
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