いただきます 夕暮れ染まるフレイムチャーチ。任務を終えて到着したテメノスの自宅を前に、クリックは息を弾ませる。
「テメノスさん!僕です、クリックです!」
ノックと共に声高らかにクリックは声をかける。
「クリックくん!……さあ、どうぞ」
鍵を開けて、テメノスが笑顔で扉を開ける。おそらく任務帰りで腹の減ったクリックのためだろう、ふわりと漂う美味しそうないい匂いとともにエプロン姿のテメノスがクリックを出迎えた。
「お帰りなさい、クリックくん」
朗らかに笑うテメノスにクリックの心が満たされていく。
「ただいま、テメノスさん」
労いの口付けを軽く交わし、テメノスが躊躇いがちに口を開いた。
「あの、ですね、クリックくん。ご飯にしますか?それともお風呂にしますか?それとも…………えーと、その……わ、わたしに………っ」
モジモジと顔を真っ赤にしながらテメノスはクリックに問う。
(…っ、もう誰にそんなやり方聞いたんですか)
たどたどしく慣れない誘い文句を口にするテメノスにクリックはクラクラとする。クリックの想い人は自身の魅力を理解しているのだろうか?羞恥心に耐えるようにエプロンを強く引っ張りながら上目遣いでこちらを見つめてくるテメノスの破壊力たるや、今この場で掻き抱いてしまいたくなるではないか。
「あ、あのっその…………や、やっぱりなんでもないです!任務帰りなんですから当然お腹すいてるに決まってますよね!ご飯にしましょう‼」
そういって足早に台所に向かおうとするテメノスの背をクリックはそっと後ろから抱きしめる。
「テメノスさん。僕、確かにお腹空いてます。貴方とご飯が食べたいです」
そう告げるとテメノスはホッと息を吐くと同時に残念そうに肩を落とすのをクリックは見逃さない。
「それから……それから、テメノスさんと一緒にお風呂にも入りたいです」
「えっ…………はいっ???」
クリックからの懇願にテメノスは戸惑いを露わにする。
「お風呂に入ってそれから……それから、一晩中テメノスさんを独り占めしたいです」
クリックがテメノスの腹を円を描くように優しく撫でるとテメノスの息遣いに熱が籠もっていく。腹を満たした後は、今度はそこへ。クリックのもので満たしたいのだとテメノスへ言葉無く伝える。
クリックはテメノスの項へと軽くキスをした後、テメノスの耳元で懇願の息を吐いた。
「ダメ、ですか?」
子羊からのお願いにテメノスは籠絡されていく。
「し、仕方ありませんね……子羊くん…」
苦し紛れにクリックを子羊と呼ぶテメノスに、クリックは愛おしさが満ちていく。
「子羊じゃ、ありませんよ」
羊たちの晩餐が始まる。