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    kuriteme_tobe

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    kuriteme_tobe

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    ワードパレット『恋のはじまり』より【気まぐれ/おあいこ/二人きりがいい】をお借りしました。ふんわり時間軸のクリテメ。旅の途中ですとーむへいるを訪れた👁️。両片想いな二人と、彼らの食事に巻き込まれることになったおるとです。

    #クリテメ
    critémé

    子羊君は何も知らない「とても美味しいですね! テメノスさん」
    「気に入ってくれてよかったです。お陰様で、私も久々にこの店に来られました」
    「…………」
     骨付き肉を頬張るクリックに、テメノスはにっこりと微笑み返す。よほど腹が減っていたらしい。体が資本の聖堂騎士だ。不穏分子への対応や、魔物の討伐。荒事に関わることが多いだけに、栄養補給も大切だろう。彼は本当に美味しそうに物を食べるので、見ているだけで気分が良くなる。
     テーブルに並ぶ、スパイスを利かせた獣肉に、この辺りでは珍しい魚のグリル。野菜と果物を煮て作ったパイに夢中になる横顔を、甘ったるく見ていたテメノスだったが、隣から聞こえてくる咳払いに真顔に戻る。気まずそうに黙々と食べ続けるオルトと目配せをし、互いに曖昧な表情を浮かべた。
    『どうして、俺が同席せねばならない』
     無言でも伝わってくる訴えに、テメノスは力なく首を振った。そんなもの、私だって知りたい。本当に、どうしてこんなことになったのか。途中までの流れは完璧であったはず。原因を作った子羊君は、二人の複雑な感情も知らずに大きな口でパイを齧った。

              *

     所用で仲間との旅を一時離脱し、ストームヘイルまでやって来たテメノスは、聖堂機関の前で任務帰りらしいクリックとオルトに偶然会った。報告に行ってくるとその場を離れた、気を利かせてくれた様子のクリックの友人。好機を逃すまいと、テメノスは誘いをかけてみる。これから食事にするつもりだが、よかったら一緒に行かないかと。突然の誘いに青の瞳は驚いたように瞬くが、すぐに喜色一杯にして「テメノスさんから誘っていただけるなんて、珍しいですね」と、言葉を返した。気まぐれで声を掛けたと思われているのなら、非常に心外である。これまでも、それとなく二人の時間を作るべく頑張ってきたというのに。
     テメノスが聖堂騎士であるクリックと出会ったのは、彼がフレイムチャーチに赴任した時のこと。異端が狼藉を働こうとする場に、偶然居合わせたのが切っ掛けだった。以来、旅の先々で再会する縁から、供に調査へ乗り出すことも少なくない。一緒にいる時間が増える中、彼の真っ直ぐさや情熱を好ましく思うようになり。クリックからも、教会に属する同士以上の気持ちを感じるようになっていた。言葉で伝え合ってこそいないが、言動がとても分かりやすい彼のこと。傍で滲み出てくる気持ちを感じ取るのが、ひそかな喜びとなっていた。今は、二人の間の距離を少しずつ縮めている最中。惚れた弱味なのだろう、アプローチにも中々気付かないところすら、可愛らしく思えてしまう。こ直後に彼が口にした、無邪気とも言える提案を聞く前までは。
    「オルトと腹減ったなって話していたんですよ。戻って来たら三人で行きましょうか!」
     にこやかな表情での言葉に、一瞬だけテメノスの頬が引き攣った。君の友人が、何のために一人で報告に行ったのか? 残念なことに、鈍感な仔羊君は少しも気が付いていないようである。
    「楽しそうですね」
     クリック君は。続けそうになるのをどうにか堪え、落胆は笑顔で覆い隠した。


    「テメノスさん、あまり進んでいませんね。空きっ腹で飲むと悪酔いしちゃいませんか」
    「お気遣いどうも。今日は食べるより飲みたい気分なもんで」
    「はあ……。お忙しいんですね。ですが、お体のことも気遣われた方が」
    「ありがとう。ですが、ペースは自分が一番分かっていますよ」
     見当違いの心配をする想い人に、複雑な気持ちを抱きつつ、テメノスは開いたグラスに赤ワインを注ぐ。正直、飲まなくてはやっていられない。馴染みの店であるような口調で誘いはしたが、実は来るのは二回目だった。旅仲間たちとたまたま寄って、気に入ったからクリックを誘うことに決めた。雰囲気のいい店であるから、周囲は恋人と同士や、目前であるだろう親しげな二人連ればかりだ。三人であるのは、不運にもこのテーブルだけ。一番居心地が悪いのはオルトであるはずだから、文句は言うつもりはないけれども。
     食事に夢中になっていたクリックは、黙ったままである友人に漸く気付いたらしい。何度も首を傾げた後、無垢な瞳で問い掛ける。
    「どうしたんだ、オルト。今日は随分静かじゃないか」
    「……いや。俺はもう腹も一杯だし、そろそろ帰らせてもらう」
    「ええ⁉ だって、いつもの半分くらいしか食べてないぞ」
    「お前たちを見ていたら、嫌でも満腹になる」
    「……食べていないのに?」
     ――やれやれ、仕方ないですね。
    「ちょっと失礼」
     そう断って席を立つと、テメノスは足に入っていた力を一気に抜く。ふらり、と体をよろめかせれば慌てたクリックが立ち上がり、日頃の鍛錬が窺える太い腕で確りと支えられた。
    「テメノスさん! だからあれほどっ……」
    「君の忠告を聞くべきでしたね。宿舎まで帰れるかな」
    「オルト、すまない。俺はテメノスさんを送るから」
    「……‼ ああ、ここは任せておけ! 金はあとでいい」
    「すみませんね、オルト君。……ご迷惑を」
    「構わん。積もる話は、またの機会に」
     解散の流れになった途端、晴れやかな表情を見せる男に笑いそうになるが、無理矢理腹の奥へ押し込んだ。肩に腕を回され、厚い胸板へ身を任せる。クリックは体重をかけてもよろめくことなく、テメノスを店の外へと連れて行った。
     ……これでおあいこだろうか? 向こうもホッとしただろうし、此方としても二人きりになれるのだから万々歳だ。
    「大丈夫ですか?」
    「ありがとうございます。……頼りにしていますよ?」
    「……‼ は、はい! 任せてくださいっ」
     素直な言葉を届けたら、クリックは暗がりに明かりを灯すような笑みを見せた。背中を支える腕に力が入る。テメノスはバランスを崩した振りをして、更に隣へ身を寄せた。

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    kuriteme_tobe

    DONE折角だからイベント的な話をと思い、「お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃう」を言わせたくて書いたはずなのに、🐏が👁️を大好きな話になってしまいました……。ふんわりED後みたいな世界ですが、息をするようにifです。ハロウィンは噛み砕いて違和感ないくらいに落とし込んだ(多分)他、細かいことを好き勝手に設定しています。付き合っている二人。
    Happy Halloween 年に何回か行われる、ストームヘイル周辺の魔物狩り。去年はあたたかい時期が長く、木の実や小動物の生育が例年より活発だった。お陰でそれを餌にする魔物たちが爆発的に増え、二週間強で終わるはずが二月近くかかる事態になっている。生態系のバランスが崩れれば、この地の種の存族も危ぶまれるし、旅人の命も脅かされかねない。夏の終わりより始まった討伐が完了した頃には、頬を撫でる風に冬の気配を感じるようになっていた。
     順調に事が進んだのなら、山の裾野まで広がる赤、黄、橙といった色が鮮やかに交じり合う様を、恋人と一緒に楽しみたかった。弁当を用意して山道を歩くのもいいだろう。忙しい人だ。料理をする姿はあまり想像つかないから、僕が準備したっていい。獣肉にスパイスと小麦粉をまぶして揚げ、溶いた鶏卵には調理料を混ぜて焼く。頑張って作った料理に、すらりとした指が絡んだフォークを彼が突き立て、僕の口へ運んでくれるのだ。想像すれば幸せなぬくもりで胸が満ちるが、今年は叶うことのない願望である。この地の冬は早い。風が冷たさを孕み始めれば、あっという間に凍える季節が到来する。二人の予定を合わせて自然を満喫するなど不可能に近い。下手をすれば、真っ白な世界に囚われて遭難しかねなかった。
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