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    kuriteme_tobe

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    kuriteme_tobe

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    ワードパレット『恋のはじまり』より【予感/うまく言えない/これから】をお借りしました。以前Xに上げた、初書きのクリテメです。ふんわり時間軸。

    #クリテメ
    critémé

    ふたりのはじまり グラスへ伸ばした手が、向かいに座る彼の指に触れる。瞬きの間ほどのぬくもりに、びくり、と大きく揺れて慌てたように離れていった。
    「す、すみませんっ」
    「いいえ、此方こそ。危うく間違えるところでした」
     隣り合って並ぶグラスを、取り違えそうになったのは本当だ。ただ、偶然の触れ合いが生み出した彼の反応は、随分と予想外のものだった。直前まであった些細な沈黙。それは、捲し立てる彼の喋りに打ち消されてしまっている。
     -――本当に、見ていて飽きないな。
     それでは、胸の内に秘める何かがあると言っているのと同意だ。経験値が足りないのは明らか。だが、そんな打算のない青い純粋を、テメノスは好ましく思っている。
    「――で、その時にオルトが……?」
     場に紛れ込んだ甘さ。追い出そうと必死だった彼が、言葉を切る。手招きをするテメノスの仕草に、気付いたのだろう。青をパチパチと瞬かせる、あどけない仕草に笑みを零し、テメノスは自分の隣をポンポンと軽く叩いた。
    「テメノスさん……?」
    「クリック君、こっち来ます?」
    「…………。ええ‼ ど、どうしてです?」
    「近くで君を見てみたいから」
     テーブルを挟んだ正面。それと、隔てるもののない距離で見せる違いを確かめたかった。一瞬の内に隠した想いの切れ端を、暴けてしまうのではという期待もある。とはいえ、この店はそれほど広くはない。三十人も入れば一杯となる場所なのだ。そこの四人掛けで男二人が隣り合っていては、悪目立ちしかねなかった。
    『からかわないでください‼』
     だから、そんな言葉で一蹴されると思っていた。ところが予想は見事に外れたらしく、クリックは無言で席より立ち上がり、隣に移動してくる。
    「し、失礼します……」
     断りを入れる顔は、林檎顔負けの色である。ひしひしと伝わってくる燃える想いに、心より溢れ出してくるのはとろけるような気持ち。
     熱っぽい眼差しに胸が高鳴る。それは、今はまだ上手くかたちにできそうもない感情の発露。しかし、それを飛び越えた時、自分たちはどうなっていくのか? 少しだけ緩んでしまった頬を、テメノスは手の平で覆い隠す。指を少し動かして自分でない指の先と絡めたら、大きな肩に力が入った。
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    kuriteme_tobe

    DONE折角だからイベント的な話をと思い、「お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃう」を言わせたくて書いたはずなのに、🐏が👁️を大好きな話になってしまいました……。ふんわりED後みたいな世界ですが、息をするようにifです。ハロウィンは噛み砕いて違和感ないくらいに落とし込んだ(多分)他、細かいことを好き勝手に設定しています。付き合っている二人。
    Happy Halloween 年に何回か行われる、ストームヘイル周辺の魔物狩り。去年はあたたかい時期が長く、木の実や小動物の生育が例年より活発だった。お陰でそれを餌にする魔物たちが爆発的に増え、二週間強で終わるはずが二月近くかかる事態になっている。生態系のバランスが崩れれば、この地の種の存族も危ぶまれるし、旅人の命も脅かされかねない。夏の終わりより始まった討伐が完了した頃には、頬を撫でる風に冬の気配を感じるようになっていた。
     順調に事が進んだのなら、山の裾野まで広がる赤、黄、橙といった色が鮮やかに交じり合う様を、恋人と一緒に楽しみたかった。弁当を用意して山道を歩くのもいいだろう。忙しい人だ。料理をする姿はあまり想像つかないから、僕が準備したっていい。獣肉にスパイスと小麦粉をまぶして揚げ、溶いた鶏卵には調理料を混ぜて焼く。頑張って作った料理に、すらりとした指が絡んだフォークを彼が突き立て、僕の口へ運んでくれるのだ。想像すれば幸せなぬくもりで胸が満ちるが、今年は叶うことのない願望である。この地の冬は早い。風が冷たさを孕み始めれば、あっという間に凍える季節が到来する。二人の予定を合わせて自然を満喫するなど不可能に近い。下手をすれば、真っ白な世界に囚われて遭難しかねなかった。
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