怪盗ショーの幕間「あははっ。情けないねえ、J。滑稽ですらある」
頭上から降ってきた声に、神辰J威弦Ⅲ世は思わず空を仰ぎ見る。
目線の先、鉄塔の上に降り立った怪盗リコリスは高らかに笑い、怪我を負ったJを見下ろしていた。彼のマントは風に煽られ、モノクルは月光を反射して怪しく光っていた。
Jは血が滲む右腕を押さえながら、苦々しく呟く。
「相変わらず性根捻じ曲がってやがるな、怪盗リコリス」
「どう言ってくれても結構。でも実際、僕が助けてあげたようなものだよね?」
Jは思わず乾いた笑いをこぼした。
「警察連中から視線を逸らすために、盛大に爆竹ぶっ放すことが、か? あの場には子どももいたんだぞ」
「だからなんだというの?」
Jはリコリスの、にこにことしながらこちらへ向ける、その楽しげな表情を見やる。こちらの反応を伺って面白がっているのだ。――ふざけやがって。
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