機構の隙間から(サンプル) 時刻は深夜二時過ぎ。昼間ならば明るく賑やかな通りも、この時間は月明かりと路上に等間隔に並ぶ街灯のみとなる。人だけでなく、建物も眠ってしまっているかのような静けさだ。この世に自分一人だけなんじゃないか、という孤独感に陥りそうになる。
僕が働かせてもらっているブラックニードルは、刺青スタジオ兼バーだ。そのため営業時間は夕方から朝方まで。僕の勤務時間も夕方から深夜辺りとなっている。店の周辺であれば、ミズキさんのお店同様の深夜営業の店のネオンや人通りもあって、賑やかすぎるほど。けれど、家に近付いていくうちに、その賑やかさは姿を消して行ってしまう。だいぶ慣れてきたと言っても、この置いて行かれるような帰り道は少しだけ寂しかった。
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