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静まり返った美術室、それを壊すように鳴り響く雷雨。僕は少しおびえていた。僕にとって、雷には悪い記憶しかない。少し昔話をしようかな。
たしか小学校から帰ってるとき、あの日もこんな大雨に雷鳴が鳴り響いていた。僕はめんちゃんの手を握りながら他愛もない話をしていた。クラスのお調子者が〜とか、給食のあれおいしかったな〜とか、たぶんそんな話。
「ねェ、そコの兄妹。」
不意に声をかけられた。振り返れば、身長が同じくらいの赤いゲソが特徴的な“タコ”がいた。
「道を聞イテもいいかナ?」
「いいですけど…」
タコとめんちゃんが話してる。今思えば誘拐犯だった可能性があるが…その当時は何事もなく話は終わり、そのタコは
「助かっタ、ありがとう。」
と言い手を振りながら姿を消した。
へんなひとだったなぁ、なんて思いながらがちゃり、とめんちゃんが玄関を開ける。次の瞬間、視界がお母さんの胸の中を支配した。お母さんが泣きながら僕らを抱きかかえてきたのだ。僕らは顔を合わせることしかできなかった。ただ僕たちは学校から、おうちに着いただけなのに。リビンクから青い服を着た知らない人が2人こっちを覗いて頷いていた。
この日から、めんにいの目がまるくなくなった。
俺はおでこにへんな違和感が残ってるんだ。
そして、みんながみんな、ぼくたちの敵になったんだ。