ピクニック・水筒「こういうの久々ですね」
青空の下、レジャーシートの上には手作りのお弁当がこれでもかと言うほど並んでいる。
「本当に全部食えるのか?」
「これくらいは余裕ですよ」
隣に座るピッコロさんは僕のために料理を学び、僕が食べたいものを一生懸命作ってくれた。
――そう、僕の……僕だけのために。
「何をニヤついている?」
「あは……ピッコロさんが僕のために作ってくれたのが嬉しくて」
「お前が俺の手料理を食べたいとうるさいから仕方なく……」
「その割には楽しそうに作ってましたよね!」
「うるさい!」
「あっ、そう言えばこれ持ってきたんです」
相変わらず素直になれないピッコロさんにあるものを手渡した。
「これは?」
「中に冷たい雪解け水が入ってますよ、きっと気にいると思います」
「いいのか?」
「ええ、もちろん」
大きな掌で水筒を手にしたピッコロさんは開け方がわからない様子で、じっとそれを見つめていた。その姿は少しあどけなくて僕の心臓はギュッと掴まれたような感覚に陥る。
もう少しだけその顔を眺めていたかったけど、僕は水筒の開け方を教えてあげた。そしてすぐさまゴクゴクと喉を潤すピッコロさんにまた釘付けになる。
「……ほう、悪く無い」
「美味しいですか?」
僕が食い気味で問いかけると少し驚いたような表情を見せた後すぐに答えてくれた。
「……あぁ、美味しい……ありがとう……悟飯」
「それは良かったです……」
僕は素直なピッコロさんが大好きだ。もちろん素直になれないピッコロさんだって大好き。水筒の開け方がわからないピッコロさんも、僕の為にお弁当を作ってくれるピッコロさんも、全部、全部、全部――……
「……だいすき」
「?」
「大好きなんです、ピッコロさんのこと」
「……何度も聞いた」
溢れ出る思いを口にしてしまったことに気がつき、何度も言った愛の言葉をまた口にする。
「何度でも言いますよ……ピッコロさん……大好き……愛してます……」
――好きだと、愛してると伝えることは出来るのに、恋人になろうとは一度も言えたことがない。ピッコロさんには恋愛はわからないし僕の好きとピッコロさんの好きが違う事だってわかってる。だから恋人になる事はとっくに諦めてしまった…………。
……諦めてしまったのに……。
「わ、わかったから……やめんか……」
「だーめ、僕がどれだけあなたのことが好きか理解するまでやめません」
「なっ……もう、十分すぎるほど理解してる……」
「本当に理解してますか?」
「……だから理解しているとっ……いっ……て……っ!? ……はっ……はぁ……んっ……」
「ピッコロさん……?」
突如体制を崩すピッコロさんは僕の胸の中にすっかり収まってしまった。身体は火照り呼吸も荒くなる。
「あ、あつ……い……」
「ふふっ……愛の告白が嬉しすぎて照れてるの?」
「……っ! ち、ちが……ちがう……はぁ……はぁ……」
「苦しそうですね」
「……はぁ……っん……ふっ……くる、しい……ごはん……たすけ、て……くれ……」
――僕のこと信用して手渡された水筒なんて飲むから……。
本当にピッコロさんは純粋で、無知で、健気で可愛いなあ。
「どうして欲しい?」
「……っ! お前……雪解け水なんて言って……本当は」
「どうして欲しいの?」
「……っ!」
ピッコロさんの頬を掴み言葉を遮るようにそう言い放つ。
「…………い、いつ……も……みたいに……して……くれ……」
下品に涎を垂らし頬を真っ赤にして息も絶え絶えでそんなことを言う。
「いつもみたいに? それじゃわからないですよ」
「……なっ……」
「ほら、ちゃんと言って?」
もう一度圧をかけ問いかけると、流石のピッコロさんも折れたのか素直に口を開いた。
「…………お……俺の……からだ……い、……いっぱ、い……ごはんに……さわっ、て……ほしい……」
「……ふふ、ちゃんと言えて偉いですね」
軽く頭を撫でると、それすらも快感だったのか卑猥な声をあげる。
「……にしてもピッコロさんお家まで我慢出来なさそうだし……今日はここでいいよね?」
いくら人通りが無いと言ってもここは野外だ。こんなこといけないとわかっているのに、所謂青姦というシチュエーションを楽しめることに僕の胸は高まってしまった。
「……こ、こんな……外で……誰かきた、ら……」
「見せつけてやりますか? 僕たちのラブラブセックス」
「……らぶ…………せ…………なっ、何を言って……んんっ!」
僕の卑猥な言葉を聞き、顔を真っ赤にするピッコロさんが可愛すぎて咄嗟に口を塞いでしまった。
「んっ……外でするの、きっと興奮しますよ?」
「……こ、うふん……」
「そう、いつもより気持ちいいかも……」
「きもち……い……?」
思考回路が停止しだしたピッコロさんは虚な目で僕の言葉を復唱しだす。
「……っ……もう、思考が……うまく……でき、な、い……」
「大丈夫……ピッコロさんは気持ちいいことだけを考えればいいんですよ」
「……はぁ……んぅ……きもち、よく……なりたい……ごはん……はや、く」
「……はい♡ 一緒に気持ちよくなりましょうね?♡」
――好きも愛してるも伝えた、その上で恋人になるのは諦めてしまったのに……僕は……せめてその美しい身体だけは自分だけのものにしたかった。
――こんな僕を、ピッコロさんは何て言うだろう。
end