あの日の経緯その日はたまたまフェデリコのやつが派遣でラテラーノを出ていたこともあり、たまたま俺に上からの任務が回ってきた。
なんでも役場から少し離れた場所にある教会の跡地に行って現地調査してほしいとのことで、教皇庁からの任務であれば断ることも難しく手もわりかし空いていたため仕方なく言われた場所へと向かった。
あまり人も来ることのない場所で草木が生え手入れされていない柱を見るに最近まで誰かが来た形跡はなさそうだろうと思ったものの、一応任務なので全体を見て回ってから帰ろうと足を踏み入れた。
そして、目を疑った。
無機質なコンクリートの床に、淡い陽の光に照らされて人が倒れている。
…いや、正確には寝ているように見えるが女性がこんなところで寝ることなんてあるだろうか?
そもそも彼女は光輪も翼も確認することが出来ず、リーベリの羽も見えない。
自分が知る中でどの種族にも当てはまらない、不思議な人間。すやすやと規則正しい寝息を立てて眠っている。
生きてはいる様だが、これはどうするべきかと考えていると端末に連絡が入った。
調査結果の報告をすると対象を保護し教皇の前に連れて来るように言い渡された。
彼女は一体何者なのか?理解出来るはずもなくとりあえず声をかけてみることにした。
「おーい、大丈夫か?生きてるか〜…ってうおっ!?」
「…────天使…?」
彼女は目が覚めるなり俺を見て天使だと言った。
間違ってはいないが自分がそれと同等に扱われたことはなかったので少し驚いた。
天使…か。
こんな俺でも天使に見えるんだな。
どうやら別のところから来たらしい彼女はまだ混乱しているようで、事態が飲み込めていなかった。
そのまま何も知らない彼女を教皇の前に連れていくのも酷だと思ったので少しこの国の案内をすることにした。
お気に入りのドーナツをご馳走してやると彼女は喜んで俺に礼を言った。
自分がこれからどうなるかも分からないのに言われるままに着いてきて、疑うこともしない。
純粋に喜んでいる。
俺がどんな奴かも知らないで、場合によっては執行されるかもしれないのに。
そんな相手に簡単に心を許すなよ。