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    sarasarami10

    類司

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    sarasarami10

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    類司小説、次回作の第一幕です。
    ※ワンダーマジカル ショウタイム後の話
    ※独自設定多め
    ※あえて原作設定と異なる演出があります

    #類司
    Ruikasa
    #小説
    novel

    神代類の反逆譚たとえばの話をしよう。そう、これらはイフ。『もしも』の上で成り立つ話だ。
    もしも、別の世界に住んでいたら。
    生まれたのが、十年も先の未来だったら。
    あの時、ショーを見ていなかったら。
    あの日、君に出会わなかったら。
    それらのイフの先に待つ『僕』は、果たして『僕』と言えるのだろうか?

    もしも僕の人生を紡ぐすべてが運命だというのなら。
    この世界に神様がいて、その神様が敷いたレールが運命だというのなら。
    そのレールを踏み外すことは、罪に値するのだろうか?

    これから話すのは、すべて『もしも』の話。
    たった一人の青年が起こした、ヒーローとはほど遠い、抗いの物語だ。


    * * *


    強い光に視界を遮られ、天馬司は反射的に強くまぶたを閉じた。

    「なっ、なんだ! 眩しい!!」

    思わず口から出た言葉さえも、その光は飲み込んでしまいそうな勢いであった。まぶただけでは強い光を遮ることは出来ず、司は慌てて顔を両手で覆う。
    そうやって遮ってもなお、視界の奥はは痛いほど輝いている。なのに、不思議と痛みは無い。むしろ心地良くすら感じる。どうしてそうなのか、そう思えるのか、理屈は全く分からなかった。
    司がこの摩訶不思議な現象に疑問を抱く最中に、閃光はしだいに弱まり――数秒後には跡形もなく消えた。
    司は顔を覆う両手を下ろし、まぶたを開く。しばらく白ずむ視界についていけず、ぐらりと頭は揺れた。なんとか倒れまいと必死に両脚で踏ん張れただけで良い方である。
    数秒後。ようやく正しく世界を認識できるようになった司は、目の前に広がる光景に一声を放った。

    「なんだ!ここはーっ!?」

    地平線が見える草原。柔らかな雲が漂う青空。見渡す限り、ビルはおろか、建物は一つも見当たらない。あまりにも現実離れした空間に、司は地に足をつけていた。

    「嘘だろう!?さっきまでオレはワンダーランドのセカイにいた筈だ! こんな訳分からん不思議な空間にどうやって……」

    司はそう言いながら、線路のない空を走る列車に人の言葉を話す草木やぬいぐるみ達のことを思い浮かべた。冷静に考えれば、ワンダーランドのセカイも現実離れした、かなり不思議な空間である。そんな脳内のツッコミを振り払いながら、司はあるものを視界に捉えた。

    「あれは……木か?」

    見渡す限り広がる草原の中で、それはぽつりと生えていた。複数の枝がねじを巻き、一つの木を作り上げているようにも見えた。引かれるがまま、司はその木に近づこうと歩を進めた。
    すると、一陣の柔らかな風が、まるで司の背中を押すように通り過ぎていく。澄んだ世界の中で漂う、淡い虹色に輝く小さな欠片たちが司を包み込んだ。

    「なんだこれは!? いや待て、これは見たことがあるぞ! オレがあのセカイに行った時にうっすら見える……もしや、ここはセカイのどこかなのか?」

    司の中で一つの仮説が立ち上がる。ここが本当にどこかのセカイであるならば、自分達が普段から現実世界と行き来しているように、きっと帰る方法はあるのだろうと。

    「ともかく、あの木の側まで行くとするか」

    そう言って、歩を進めた。
    木は司が思っている以上に近場に存在した。頑張って手を伸ばせば鮮やかに彩る緑の葉に触れてしまえるほど、その木は小さかったのだ。そこで、司はあるものを見つけた。

    「あの枝に引っかかっているものは、我がワンダーランズ×ショウタイムの……ツカサリオンの台本か!? どうしてここに?」

    まるで木の葉に寄り添うように、見覚えのある台本が木の上に存在していた。さらによく見れば、台本の他にも誰かの筆跡付きの楽譜や、アイドルの集合写真と思わしき物も確認でき、司の顔は困惑から眉をひそめていた。

    「なんとも不思議な木だな。クリスマスでもあるまいし。思い出の木みたいな何かなのか?」

    「うん。そうだね」

    「!?」

    突然背後から呼び掛けられる声に、司はびくりと肩を揺らした。少し高いトーンの少女の声は、司自身にあてられた声だった。
    ホラーのような展開でないことを祈りながら、司はおそるおそる振り返った。
    司から少し離れた場所に、声の主は存在した。まるで、初めからそこにいたようだった。
    柔らかな風に揺れる青葱色のツインテール。黒のミニスカート、ニーハイソックス。01番と記された肩の模様。司に向けて優しく微笑む少女は、どこから見ても電子の歌姫そのものだった。

    「は、初音ミク……なのか?」

    「うん、そうだよ」

    迷いなく少女は答えた。ワンダーランドのセカイにも初音ミクは存在するが、出で立ちはだいぶ異なる。目の前にいる初音ミクの服は赤くないし、猫耳も生えていないのだ。

    「でも、わたしは司くんがよくお話しているミクじゃないよ。わたしは、みんなの知る『ミク』だから」

    ミクの言葉に間違いは無い。
    司の前にいる初音ミクはよく見る『初音ミク』とは異なる。司の目の前にいるミクは『誰もが知る初音ミク』そのものなのだ。
    それ以上でも、それ以下でもない。紛れもない真実を前にして、司は理解が追いつかないまま、口を開いた。

    「な、なるほどな?それなら、ミクはどうしてここに……、いや、もしかして元々ここにいたのか?」

    「うん」

    ミクは頷く。そうであれば、このミクに脱出方法を聞いてしまえば手っ取り早い。そう思った司は矢継ぎ早に言った。

    「そうか。ならばここから出る方法を教えてくれないか? オレはこれから行かねばならん場所があってな。ミクが元からこの場所にいたのならば、出る方法くらい知っているだろう?」

    司がそう言うと、ミクは大きな瞳をぱちぱちと瞬かせてこう言った。

    「……司くんは、ここから出て行きたいところがあるの?」

    衝撃の一言だった。
    まるで、司にはどこにも行く場所が当たり前のように無いかのような言いぶりに、司は思わず反論した。

    「何を言ってるんだ!? 当然、あるに決まってるだろう!オレはこれから……」

    そこで、司は言葉を詰まらせた。

    「ここ、から……」

    どこに行きたかったのか?
    つい先程まで認識していた『どこかに行きたい』という意識が、司の中で消えていた。何度思い出そうとしても、答えは出てこない。言葉は尻すぼみになっていき、何も答えを出せない自分に司は酷く動揺した。

    「どうして、オレは……」

    「司くんは――。ううん、この呼び方も……もう間違いなのかも」

    ミクの含みを持たせた言い方に司は目を白黒させた。たまらず、狼狽えた声を上げる。

    「な、何を言っているんだミク! オレはオレだろう!」

    そして天高く左手を上げ、自分の名を高らかに告げる。
    ――筈だったのだが。

    「天翔るペガサスと書いて天馬!そして……。つ、つ、か……」

    そこで、再び司の言葉は止まった。
    常套句として言っていた名乗り言葉の、次の台詞が言えない。否、正しく言えば、分からないのだ。
    つい先程まで覚えていた台詞だ。そんなはずが無い。嘘だ、と。混乱と否定を脳内で繰り返す司にミクは言った。

    「……天馬、ツカサくん。ツカサくんは、このセカイに選ばれちゃったんだ」


    * * *


    『ありがとうございました!』

    湧き上がる喝采の言葉。観客の期待の眼差し。笑顔。自分を照らすスポットライト。仲間に握られた両手。瞼を閉じれば、あの光景は直ぐに思い出せる。
    今まで公演してきたショーの中でも、特段に輝いていた。ワンダーランズ×ショウタイムの演出家、神代類の心は確かに満たされていた。数日たった今でも、僕はそう思う。

    「――神代さん。こちらが注文していた鉢植えになります」

    そう言う女性の店員の声でハッと現実に引き戻された僕は、暇つぶしに眺めていたスマートフォンから視線を上げた。
    辺り一体あらゆる花が生き生きとしながら飾られているここは、シブヤにある小さな花屋だ。

    「ありがとうございます」

    簡単な礼を述べると、僕は机に置かれた鉢植えを見た。
    六枚の白い花弁が、鉢植えの中でいくつも咲き誇っている。小ぶりで美しいその花は、まるで夜空に輝く星のように見えた。

    「――オオアマナ。やはり、この花を選んで良かったです」

    思わず口元が綻んでしまう。
    普段はこの店で扱わないタイプの花らしく、わざわざ取り寄せて貰った品だ。大切に扱わないと。

    「この花はちょうど今がシーズンなので、とても良いと思いますよ!もしかして、お庭に植えたりするんですか?」

    店員の質問に僕はにこりと微笑んで言葉を返した。

    「ええ。とても大事な場所に」

    その答えを聞いた店員もまた微笑んだ。
    綺麗に包んで貰ったオオアマナの鉢植えを受け取ると、僕は花屋を後にした。
    涼しくて静かな花屋を出ればすぐに活気のある街並みが広がっている。昼も夜もここはいつも賑やかだけれども、今日は特別明るく見えた。
    想定よりも時間がかかってしまったけれども、やはり妥協しないで選んだ甲斐があったなあ。そう思いながら歩を進める。はやる気持ちとは裏腹に、大きな交差点の信号は赤色を示しており、仕方なく僕は立ち止まって待つことにした。
    すると、

    「――ねえ、あの人もしかして……」

    そんな小さな声が背後から聞こえた。
    いつも通りの格好でシブヤに来たけど、ニュース見た人で勘がいい人は気付いてしまうみたいだ。もう少し用心しないといけないな。
    そう思いつつ、ちらりと後ろを確認すれば女子高校生と思わしき人たちと目が合った。身につけている制服からして、シブヤにある高校では無い。とはいえ、元々シブヤは若者が多く集まる街だから、神高や宮女以外の生徒がいてもおかしくはなかった。
    女子高校生は「あっ……」と目を丸くしてこちらを見ている。それに対して僕は、そっと口元に人差し指を置いて微笑んでみせた。
    ここで騒がれてしまうと、予定通りあのセカイに行く時間が確保できなくなってしまうからね。
    彼女たちが慌てた様子で会釈をして離れていくのを見届けると、早足で僕は青になった交差点を渡ることにした。
    土曜日のスクランブル交差点はいつも以上に多くの人でごった返しており、少しでも歩く歩幅を間違えればぶつかってしまいそうだ。
    そんな人々をまるで見下ろすかのように設置された巨大な電光掲示板には『プロジェクションマッピングが魅せる新たなワンダーランド! 今、フェニックスワンダーランドのナイトショーが大注目!』とそれはそれは、立派な見出しのついたニュースが大きく映し出されていた。
    実際、SNSでは『フェニックスワンダーランド』がトレンドに連日ランクイン。観客が録画したであろうショーの動画は、投稿サイトでとてつもない再生数を稼いでいる。
    僕らのショーは、目に見えてわかる大盛況だ。
    一時はどうなる事かと思っていた時期もあったけれど、ショーが大成功した今となっては、ワンダーランズ×ショウタイムの一員としていれることがとても誇らしい。

    「……まぁ、それもこれもツカサくんの功績があってこそだけれども」

    あの時、ツカサくんからのアドバイス通りにみんなを説得出来なければ、フェニックスワンダーランドのスタッフが一丸となってショーを作り上げることは出来なかっただろう。

    彼は――天馬ツカサは、バーチャルシンガーだ。
    電子の歌姫として有名な初音ミクと同じく、歌って踊って話す存在。ネットを通して彼の存在を知る者は日々増えている。
    そんな彼が、突然遊園地のショーで他のバーチャルシンガーの仲間たちと一緒にサプライズとして登場したのだから、ここまで注目を浴びるのも当然と言うべきかもしれない。
    バーチャルと現実の融合。それを彼は難なくやってのけたのだ。
    そんなツカサくんに、僕は今から会いに行く。手に持ったオオアマナの鉢植えと一緒に。
    何故ならば僕は、彼と会える手段を獲得しているからだ。

    シブヤの交差点をやっとのことで抜けると、人気のない裏路地へ僕は足を踏み入れた。薄暗く狭いそこで、僕はすかさずスマートフォンを取り出すと、音楽再生アプリを開いて曲目を選ぶ。
    『セカイはまだ始まってすらいない』
    この曲が僕らのいる現実世界と、ツカサくん達のいるセカイを繋ぐ鍵だ。
    僕は迷うことなく再生ボタンを押す。すると、白い閃光とセカイに浮かぶ虹色の欠片達が僕の身体を包み込む。その白い光が収まれば、たちまち握やかな音楽と共に、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのような楽しいセカイに僕は行ける。
    そう思って身を任せていた。

    ――しかし。

    全てが終わった後、目の前に広がる光景はいつものセカイとは全く違う風景だった。
    時が止まった。まるで、何もかもが停止していると錯覚してしまうような、真っ白の世界。それだけが僕の視界に映っていた。

    「ッ!?」

    この状況はおかしい、と気付くのに時間はかからなかった。幸いにも身体は動くし、何ともなさそうだ。とはいえ、どうすればいいのだろうと、僕は頭を回し始めようとした。
    ――その時、僕の思考を遮るかのように、カツンと靴のヒールが地を蹴る音がした。

    「イッツ!ショウタ〜イム!!」

    高らかな女の子の声が辺り一面に響き渡った。その声はどこか聞き覚えがあるように感じる。
    一体女の子の声は誰だろうと考えた、次の瞬間。
    何も無かった空間に、真っ赤な絨毯が広がった。
    それに合わせて、スネアドラムの細やかな音が空間に響いたかと思うと、続くように鮮やかで壮大な弦楽器の音色が辺りを一掃した。
    この曲はどこかで聞いたことがある。タイトルは確か……ラデツキー行進曲だった筈だ。
    さらに無限に広がる絨毯。下からせせり出る重厚な柱。どこからともなく聞こえる手拍子と共に、大劇場と思わしき空間があっという間に作り上げられていく。
    柱と柱を繋ぐ壁はまるで巨大なスピーカーの如く、壮大なオーケストラの演奏を全身に浴びせてきた。
    僕がいるのは観客席側だろう。
    前方、少し高い位置にある舞台はますます盛り上がる演奏に合わせて非常に長く、大きな白い大理石の階段を出現させた。
    某歌劇団の大階段の倍近くはあるように見える、その巨大な階段の頂上から投げ出されるように、赤いベルベットの絨毯が階段を覆い――気付けば、映画でしか見たことの無いような絢爛華麗で大きな舞台が完成していた。
    そして、煌びやかな舞台にせり立つ階段の頂上には、一人の少女が両方の腰に手を当て、堂々とした振る舞いでこちらを見ていた。

    「やっと来たね!類くん!!」

    その少女は僕の名前を呼ぶ。
    空色のツインテールに真っ赤なステージ衣装が特徴的な、僕らのセカイにいる初音ミク――ミクくんがいた。

    「ミ、ミクくん……ッ!?」

    呆気にとられていて気付かなかった。僕が大切に抱えていたはずの鉢植えが何処にもない。跡形もなく消えていたのだ。
    それどころか、両手は丸いリングのような何かにつなぎ止められ、まるで手錠をかけられた罪人のような有様だ。

    「こ、これはどういうことなんだい!?」

    思わず僕は、柄にもなく声を荒らげてしまう。実際、僕はさっぱりこの現状を理解出来ていなかった。むしろ、こんな事が突然起こって冷静でいられる人なんて何処にもいないだろう。
    いったいこれから何が始まると言うのだろう。ミクくんに限って命の危険に晒されるような状況を作り出すとは思えないけれども……。そう思いつつも、一抹の不安を拭いきれない僕は、訝しげにミクくんを見上げた。
    すると、

    「――たいへん!たいへんたいへんたいへーん!!」

    ミクくんは階段の上から慌ただしく叫んだ。

    「類くん!たいへんなんだよ! すっごく、すっごぉ~くたいへんな事が起こっちゃっているんだよー!?」

    まるで返答とも言えない言葉が返ってくる。
    強く拳を握りしめたミクくんはさらに言葉を続けた。

    「このままだと! セカイも!類くんの世界も!!すっごぉ〜く大きくて、大変なことが起こっちゃうんだよー!!」

    「…………」

    ……何が何だか分からない。それだけが今の僕に唯一分かったことだった。


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    類のガレージにてショーの打合せをしていた2人。
    打合せ後休憩しようとしたところに、自身で発明した🌟の中を再現したというお○ほを見つけてしまった🌟。
    自分がいるのに玩具などを使おうとしていた🎈にふつふつと嫉妬した🌟は検証と称して………

    毎度の事ながら本編8割えろいことしてます。
    サンプル内含め🎈🌟共に汚喘ぎや🎈が🌟にお○ほで攻められるといった表現なども含まれますので、いつもより🌟優位🎈よわよわ要素が強めになっております。
    苦手な方はご注意を。

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