【鍾タル】いとしい香りとおもいの箱 今年の誕生日は、鍾離先生に会えそうにもない。ふと、カレンダーの日付を見てそう思った。
あちこち飛び回っていると日付の感覚も曖昧になり、もうあと数日もすれば自分の誕生日だと気付いたのは偶然だ。せっかくの休暇はフォンテーヌでの騒動で帰還を命じられ、かの最高審判官との再戦も叶わずにしぶしぶ故郷へ帰国しては療養しろと言い渡されてしまい、随分と暇を持て余した。
その後は雑務に追われながら退屈な日々を過ごして、やっと任務に復帰できるようになり、少しばかり忙しくなってきたところだ。休暇は取ったばかりだし、当面は璃月に向かう任務もないだろう。そちらに訪問することは難しいと事前に手紙で伝えてあるものの、俺の誕生日やそのほか記念日を祝いたがる節のある恋人に対してやはり申し訳なく感じる。今度何か埋め合わせでもできればいいが、と考えて寝室に入ると、いつの間にかナイトテーブルに見知らぬ小包が置かれていた。
1563