片割れ.
歓声とスポットライトを浴びて、綿に包まれた石を投げつけられる。膝をついてしまいそうになっても、下を向きそうになっても、それでも笑っていられたのは隣にあなたがいたから。
ガウルオンニが話しかけるとユジナは少し屈んで目を合わせる、小さな声が聞こえるように顔を寄せては嬉しそうに笑う。鏡でビジュアルを確認するふりをして、ふたりの様子を伺った。
お互いに好意を抱いてる、そういう意味での両思いなのにどっちも鈍感だから進展なんてするわけない。
スマホを取り出して指を滑らせてメッセージを送る、誰かが行動しないと。
『話したいことがあるので夜来てくれますか?』
控えめなノック音がし出迎えた。ドアを開けると花柄のトレイを待ったガウルオンニの姿、マグカップがふたつ乗ったそれは重そうにみえる。はやいところ室内へと招き入れた。
「ルイボスティー、少し熱いかも」
時間も時間だし、ノンカフェインを淹れてくれたことに感謝しつつシリコンのカップカバーを外すと湯気が立つ。マグカップとシリコンカバーは6個お揃いのもので、ガウルオンニがみんなにくれたものだ。カラーバリエーションが豊富なものを探すのに苦労したと言っていたっけ。
ベッドと鏡台しかない部屋で横並びにベッドに腰掛ける。ふーふーと小さな口で息を吹きかける様に愛らしいとユジナは思うのだろう。胸が軋む、どうしてわたしは年下なんだろう。
「オンニは恋したことありますか?」
「へっ、ぁっ!」
熱そうに舌を出して眉をさげている、質問のタイミング間違えたかも。カップは口元から離れてるのを確認してもう一度言葉にする。
「いま、恋してますか?」
「してると思う……」
自覚はあるんだ、良かった無かったらどうしてやろうかと思ってた。わたしの相談を受けにきたつもりだろうに、質問をされて素直に答えるなんてオンニってば本当にイイヒト。
「ユジンオンニ?」
自分でもびっくりするぐらいの乾いた声が出た。愛しいひとの名前を呼んでるとは思えないほどに。短い髪から覗く耳までが紅く染まる。頷いたあとに俯いたまま固まった手から、マグカップを奪う。鏡台に置かれたトレイの上にわたしのと一緒に置いた。
「ウォニョ、ん!?」
肩を掴んでベッドへと押し倒した、予想してなかった展開にオンニの戸惑いの声。普段よりも大きい。
「あんまり大きな声出したらユジナに聞こえちゃう」
隣の部屋の主、わたしたちの好きなひと。
「やめて」
「やめません」
オンニの腰に跨ったまま自分のパジャマのボタンを外して前をはだけさせる。
「ねぇお願い」
涙を浮かべて嫌がる表情に溜飲が下がっていく。ユジナが触れる前にわたしが触れて壊せばいい。
「鍵かけてないから、助け求めたらどうです」
この状況がみられても平気なら。
わたしにはあなたしかいないのに、あなたがわたし以外を愛する、そんな世界いらないよね?