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    マーテルさん視点

    ##ユアマー

    パウンドケーキこういう時はお菓子を焼くといい。と、聞いたことがある。

    でも、お菓子作りなんて、したことがなかった。毎日なんとか食べていくことで精一杯で、お菓子とか、ちょっと背伸びしたごはんとか、そういったものとは無縁だったから。でも、こういう時はお菓子を焼くといい、と聞いたから。

    小麦粉、卵、お砂糖、バターを同じ量。
    それと、彼の好きな紅茶をすこし。

    混ぜて焼くだけだから初心者でも大丈夫、と聞いたけれど、本当だろうか。私は分量に間違いがないか心配しながら材料をボールに入れて、どこまで混ぜたらいいのか心配しながら混ぜて、本当にこれだけで大丈夫なのかと心配しながら型に流して、十分あたたまったはずだけどと心配しながらオーブンに型を入れた。あとは、待つだけ。焼き具合が気になってしまうので、オーブンに背中を向けて椅子に座った。
    大丈夫かしら。きちんと焼けるかももちろん気になるけれど、それより、彼のこと。元々感情表現が豊かなひとだけど、ここしばらくぴりぴりしている。機嫌が悪い、というより、彼もまた心配なんだと思う。だから、すこし心をほぐしてあげたくて。でも、大丈夫かしら。

    そうして悩んでいる間に、時間になった。そうっとオーブンを開けると、ケーキはちゃんとふくらんでいた。ちょっとよく焼けすぎてしまったのか、お店で見かけるものより濃い焼き色だったけど。
    少し冷ましてから、端っこを切って食べてみた。うん、よかった。ちゃんと焼けてるし、甘くて、紅茶の風味がふんわりと口の中に広がった。これなら大丈夫かな。ケーキを四つに切って、フォークを添えて。あと、淹れたての紅茶を忘れずに。

    今日も彼は、やっぱりまだ起きていた。気に入ってくれるかしら。また心配になってきてしまったけれど、もうケーキは焼けたのだし、持っていくしかない。私は深呼吸をして、彼に声をかけた。
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