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    haruka

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    お読みいただきありがとうございます
    hq&沢のみなさん大好きです
    30代の彼らが楽しみすぎます

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    haruka

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    前にアップした五白R18話のつづきで
    夜中に目が覚めた五白のいちゃいちゃ話
    うっすらとですがベッドの中の出来事なので気持ちR15

    #五白
    fiveWhite

    夢でもうつつでもあなたが 何年かぶりに電話を掛けてきた先輩は、やっぱり、あのころのように、さりげなく親切だった。

     ――あいつが電話口でキレても気にすんなよ。単に甘え慣れてねーだけだから。

     会いに行きたい。でも、そんなことをしたら、あのひとは怒るかもしれない。
     俺の弱気と躊躇いを、打ち明ける前に掻き消してくれるところは、あのころから変わっていなかった。
     少し前に、俺の好きなチョコレートを山ほど送ってくれた先輩もそうだった。
     離れた地から、いつも、この道の先を見せてくれる先輩も。
     連絡をくれたり応援してくれるみんな。
     いつも会えるわけではないけれど。

     遠いと言えば、遠い日。
     でもすぐそばにあるような。

     俺はひとりではないんだと、教えてもらえたあの日々を、思い出した。


    「……ありがとう、ございます」


     ゆったりとした声音が、髪を伝って肌に振動として伝わってきたのを、――白布は浅い眠りのふちで感じて目ざめた。
     目蓋はひらかれても、同じように暗い。
     そして、少し暑かった。
     この身にぴたりと添うように、あたたかな体温が白布の後ろに横たわっている。その片腕は白布の腕の下を通り、胸から腹にかけて伸びていて、ベルトのようにからだをベッドに固定していた。
     解こうなどと思いはしないが、――このとき白布は、寝起きの頭で反射的に、振り返った。
     五色に、ありがとう、などと言われる覚えは無かったから。
     礼を言うのは、こっちのほうなのに。
     ひとが寝てるあいだに、そんなことを言うな。
    「……なにがだよ、」
     ほんとうは、こんな、腹を立てられる筋合いは無いとわかっていても、五色には言ってしまう。腕の中、からだごと振り返ると、宵闇の中でもうっすらと五色の顔が見えた。
     その目は閉ざされていた。
     白布は反対に、目を見開いた。

    (……いまの、寝言かよ)

     早合点に小さく息をついたら、五色の腕の重みがなんら変わっていないことを、ようやく実感した。気持ちが先だって、相手が寝ているかどうか気づけていなかった。
     途端に、白布の中でさっきまでの焦りのような感情がしぼんでいく。
     眠っている五色の、その輪郭を見つめていたら、自分へのため息が出た。
     そして気づけば、白布はそろりと傍らの男の頭に手を伸ばしていた。どこか慎重に、てのひらいっぱいで五色の髪に触れて、静かに撫でた。
     頭から爪先まで溺れていたあいだも、ひっきりなしに触れていたけれど。
     足りない。

    「……ふぁ、」
     
     熟睡していたと思っていた相手が小さく声を発し、白布は咄嗟に手を止めた。
     暗闇の中、凝視していると、やがて五色が目を開けた。
     起こしてしまった。
     五色の髪から手を離すと、不意に、白布の背中に回っていた手が腰に回った。それは無意識の動きだったようだ。けれど、触れられただけで、そこに響いた快感の記憶が呼び起され、白布は思わず肩を竦めた。
     額のあたりに、呑気な声が届いた。
    「……あ、…しら……」
     寝ぼけた声は、そこで途切れた。
     鼻先から息を飲む気配がした。どうやら、こちらが起きていることに気づいたらしい。
     やがて、五色はこほ、と小さく咳払いをした。
    「……賢、二郎さん、」
    「なに照れてんだよ」
    「……え、それは、」
     その、とつづけた声は寝起きだからかまだ、少し鼻にかかったような響きだった。
     五色はまだ暗闇に目が慣れていないだろう。だから白布は、思い切り顔を顰めた。抱きながら何度も名前を呼んでいたくせに、いまさらなにを照れることがあるのか。しかもがっちりと腰まで掴んでおいて。だが、口には出さないことにした。
     こんな時間も、どうしようもなく、大切だから。
     揺らめく薄暗さの中、白布は彷徨わせていた手をもう一度、五色の頭に置いて撫でた。
    「………起こして悪かったな」
    「え……」
     起こすつもりは無かった。無理に予定を変更して来てくれたのだから、可能な限り、朝までゆっくり休んで欲しかった。それは、白布の本音のひとつでしかなかったが。
     夜の色が薄まった視界の中で、五色の瞳がいくらか瞬いたのが判った。
     さっきまでの気の抜けた表情が急に消えた。
     腰に回る手に意思が加わり、からだとからだの隙間を埋めるように五色が身を寄せた。乱れた前髪越しに口づけられるあいだ、下で腿をすり寄せ、脚を絡めた。
     吐息を頼りに白布が顔を上げると、静かな息遣いとともに口唇を塞がれた。薄く開けていたその隙間から舌を受け入れ、好きなようにしていいのだと、促すように白布は五色の髪を撫で、うなじに手を這わせた。
     目が覚めたとき、夢だったんじゃないかと、一瞬、心細くなる。
     そのどうしようもない戸惑いと小さな痛みを、互いの温度が癒していく。
     やわらかな愛撫にたゆたう時間。
     眠る前は、残った理性を追い詰めるようにひとの口の中を侵していた舌は、やわらかく絡められただけで、やがて出て行った。最後に、口唇に浅く歯を立てて。
     顔を離したころには、白布の目はだいぶはっきりと夜に慣れていた。
     さらさらと、髪の音が鳴る。
     五色は、目を細めたまま嬉しそうに微笑んでいた。
     そのまま、緩んでいる口唇がそっと開いた。
    「……さっき、夢で、……少し前の、ことを思い出してたみたいで」
     それはやわらかくて、少し楽しそうな声音だったから。
     だから、準備が出来ていなかった。
    「…選考のあと、……俺、落ち込んでました。…選ばれなくてくやしいって思いましたけど、でも、選ばれたみんなのプレーを見たいとも思って、……そしたら、ワクワクしてきて」
     息が、思わず止まる。
     溶けてしまいそうな空気も、一瞬で流れて。
     
    「……いつか俺も、誰かの心を奮い立たせるようなひとになりたいって、思ったら、練習したくなりました」

     こんな、明け透けに、自分の大事な部分を見せる。
     触れるのがこわくなりそうなところを。
     むかし、迷わず『選ぶ側』だった自分に。

     いまは違うから、――だから、言えるんだろう。

     距離ではなく、離れているから。

    「……俺の夢なんか見なくても、立ち直ってんじゃねーか」

     また、揺れる。
     胸が締め付けられる。
     にがくなる。
     勝手に狭まる視界の中で、――けれど、五色は笑っていた。

    「ひとりじゃないって、ずっと前に、教えてもらえたからですよ。……それに、」

     からだを抱いていた手が布団からそろりと出てきて、今度は白布の髪をやさしく撫でていった。

    「いま、こうして話せるのが、嬉しいです。……賢二郎さんに聞いてもらえて、嬉しい」
     
     ささやくような声なのに、それは、からだの深くまで、貫いていくようで。
     湧き上がった弱さと情けなさをまた、簡単に溶かしていく。

     ――俺にはお前がなりたいものも、強さも伝わってる。
     ――だから胸張ってりゃいいんだよ。

    (あれは、むかしの俺だけが、言えるものじゃねぇ)

     コートの外側で、観ることしか出来なくても。
     なりたいものも、その強さも、知っている。
     だから。

    「お前なら、なれるよ」

     少なくともここに、勇気をもらった奴が居る。
     目に映るやわらかな笑顔には遠いだろうが、心の動くままに、頬は緩む。

    「待ってっからな」

     目の前で、五色の瞳が大きく見開かれていくのを見て。大げさ、と白布は心の裡で笑った。
     絶対、なにがなんでも、休みを取るからな。
     そう心に決めていたら、髪を撫でた手が、背中にぐっと伸びていった。

    「……はい…っ」

     語尾が揺れていた。
     そんなにチョロくて大丈夫なのかよ。ぬくもりの中、思いながら白布は眉尻を下げた。
     その素直さにいちばん救われているのは誰だ。
     抱き合う互いのからだは、気づけばうっすらと汗ばんでいた。
     五色の手が、肌の感触を確かめるように、ねっとりと、背中を這う。
     やらしい手つきしやがって。言うよりも前に、白布は小さく声を漏らした。
     別の本音、――欲求が白布のもう一方の手に乗り、その指先でつうと五色の胸を撫でた。
    「ふぁあ…っ」
     鼻の先でガタイのいい肩が震える。白布はそのまま指先で胸から腹の筋を撫で、熱を持ちつつあるそれに触れた。
    「……お前、このまま眠れんの?」
    「判ってて訊かないでください。賢二郎さんこそ」
     ひと撫でして、興奮したのは五色のほうだけではない。
     悩ましげに、でもそれ以上は眉を顰めない相手に、白布はひと呼吸置いて、目を細めた。
    「…居るあいだは、お前に触れてぇよ」
     言ったら、心臓が跳ねた。
     どちらのものか判らないくらいに抱き合う身が震えて。
     俺もです、とささやいたその口唇が白布の口を塞ぎ、熱いからだが身を覆う。
     
     動物のよう。
     そう思えた時間はすぐに流れ、また眠りに落ちるまで、激しくまっすぐな熱の中に浸った。



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