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    pri_rin9886

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    pri_rin9886

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    スピフリの一応続きでどこかの幕間。推しのオニプちゃんとフリをキャッキャさせたかっただけ。

    #スピフリ

    オニプリンと!「なっんでサンゴがスピネルの言うことなんか聞かなきゃいけねぇんだよっ!」
     
     オニゴーリの上で頬杖をつきながらサンゴが眉を吊り上げている。
     スピネルからとりあえずの待機を命じられたサンゴとオニキスの2人は退屈な時間を過ごしていた。
     穏やかな風と朝の光が降り注ぎなんとも長閑な雰囲気だ。ただ一つ、サンゴがうるさい事を除いて。
    「仕方がないだろう」といつものように嗜めようとしたが、オニキスは黙ってただ眉根を寄せた。更にうるさくなる事がわかっているからである。オニキスとてスピネルに思うところはあるが今はまだ様子を見るべきだろうと口を閉ざしているのだ。
     
    「あっ」
     
     不意にサンゴが声を上げたのでそちらを見るとポーチからポロリとモンスターボールが飛び出してきた。まったく、きちんとチャックをしないからだ。ちゃんと閉めておけといつも言っているのに。
     
    「ぷりぃぃぃぃ!!」
    「うるさっ!こら!勝手に出てくんなよ!!」
     
     飛び出してきたのはサンゴがオニプリンと呼ぶポケモンである。出てきた途端にうるさい。うるささが倍増してしまった。
     そのオニプリンはサンゴに反論するかのように何かピーピー言っている。
     
    「はぁ?何言ってるか全然わかんねぇって!」
    「プリー!ピィーーーーーーー!!!!」
    「うーるーさーいー!!!」
     
     相変わらず意思の疎通はできないようで、わかってもらえない事に苛立ったのかオニプリンがとうとう癇癪を起こし出した。
     あまりにもうるさい。先程までの長閑な雰囲気はどこへやら、軽く地獄のような有様である。
     
     
     
     
     
    「なぁ、ちょっといいか?」
     ひょこっと建物の影から男が顔を出した。スピネルと同じような色合いで、しかしデザインが少し違うものを制服としている男だ。
     
    「あぁん?スピネルの愛人が何の用だよっ!!」
    「スピネル社長の側近の『シトリン』だよ。よろしくな」
     
    『シトリン』と名乗ったこの男の本当の名前が『フリード』である事をオニキス達は知っている。元々敵対関係にあった男だ。今はスピネルの手によって記憶が書き換えられ、スピネルのそば近くに仕えている。スピネルが何故そんな事をしているのかは謎だった。サンゴの言う通り愛人だとも噂されているがそれが本当かどうかなどオニキスには興味のない事だ。
     サンゴも彼が『シトリン』と名乗った事に対して何か言いたげではあったが、ただ胡乱げな視線を向けただけで黙っている。
     
    「って、やっぱり!聞き慣れない声が聞こえてくると思ったらサケブシッポじゃないか!なんでここに?パルデアの大穴の中でしか確認されてないはずなのに!」
    「ぷり?」
    「んだよサケブシッポって!こいつはオニプリン!サンゴちゃんがパルデアの大穴の中でゲットしてやったんだぜ!」
    「そうなのか。オニ…プリン、確かにピッタリの名前だな」
    「ぷりぃ!」
     
     フリードはサンゴの視線など気にせず目の前のポケモンに夢中になっているようだった。フリードに見つめられているオニプリンも見知らぬ人間に興味津々なのか、喚くのをやめてじっとフリードを見ている。
    『オニプリン』という名前は気に入っているのか、どこか誇らしげだ。
     
     
    「ぷり~」
    「ッンっだテメェ!サンゴの時とずいぶん態度が違うじゃねェか!」
     
     フリードが笑いかけるとオニプリンもまたキャッキャと笑っている。
     
    「わっ…と、と。ははっ、可愛いんだな」
    「ぷり~」
     
     オニプリンが人間風に言えばフリードに抱きついた。どうやら甘えているらしい。しかし、丸い形状と質量からどちらかと言えば体当たりである。ドスっと鈍い音も聞こえていた。
     その衝撃によろめきつつもフリードは幼い子供にするようにオニプリンをよしよしと撫でている。どこか懐かしそうな目をしながら。
     
    「わぁっ…!ちょ…ちょっと待てって!あ、だあぁっ…!!」
     
     ドシーンと派手な音が響いた。オニプリンにぐりぐりと押され続けたフリードがバランスを崩して派手に尻餅をついたのだ。
     
    「ピャーーーーーー!!!」
     
     オニプリンはオニプリンで倒れ込んだ勢いに流されてコロコロと転がっていく。丸いからな。そして木にぶつかってようやく止まった。
     
    「ぶっは!またこけてやんの!!」
    「ぷりぃぃぃぃ!!!」
     
     サンゴがバカにした事によってまた喧嘩が始まった。うるさい。とても。
     
     
    「おやおや、何をこけているんですか?」
     
     そこに更に面倒になりそうな男が姿を現した。スピネルだ。口調こそ違えど言っていることはサンゴと同じである。
     
    「うるせっ…!あ、いや、ダイジョウブ…デス」
     
     差し出されたスピネルの手を振り払ったフリードが、チラリとオニキスの方を見た。気にしてもらわなくて結構だ。
     
    「普段通りで構いませんよ」
    「いや、でも…」
    「彼らなら大丈夫ですから」
     
     フリードがもう一度オニキスを見た。本当に気にしてもらわなくて結構である。
     しかし、なるほど。思わず出てしまったらしいフリードの気安い態度といい、妙な距離の近さといい愛人だという話はどうやら本当のようだ。まったく知りたくなかったが。
     スピネルの方は手を振り払われたのに妙に上機嫌だ。しおらしくされるのはつまらないとでも言ったところだろうか。
     
    「怪我は?」
    「ねぇよ」
     
     スピネルはパタパタと服についた砂を払っているフリードの手を取って目の高さまで持ち上げた。
     
    「それは良かった。私以外に傷をつけられるのは許せませんからね」
    「気持ち悪りぃこと言ってんなよ」
     
     傷がないかを確かめるようにフリードの手をじっとりと見つめるスピネルにオニキスは少し背筋をヒヤリとさせた。
     フリードは冗談を言われたように適当にあしらっているが、おそらく本心だろう。
     
     
     
     
    「アッハハハ!気持ち悪すぎてオニウケる~!」
     
     いつの間にやらサンゴが隣にきていた。どうやらいつも通りうるささに耐えかねてオニプリンはモンスターボールにしまったらしい。
     
     なるほど確かに、とオニキスはスピネルを見た。
     わざわざ記憶を書き換えて、その瞳に見立てた名前をつけ、そして自分の色に染めたような服を着せてその男を側に置いている。
     
     フリードを見つめるスピネルの瞳に宿っているのは気持ち悪いほどの執着心だ。
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